外伝 最終章 皇位奪還 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】 立ち上がる民衆編Ⅳ
皇都北部で民衆と軍部が激突したとい情報を知ったヴィルヘルムは急ぎその現場へと向かう
ヴィルヘルムのいる地点からは皇宮の北部地域の住人と皇軍の衝突現場まで時間はかからない距離にいた。
しかし予断は許さない。
フランシスは軍を連れてい来るだろうが、それもそれなりに時間がかかるだろう。
それにすでに収拾がついているかもしれないし、暴徒化したとしたら、参加している市民の死者数はとんでもないだろう。
不安ばかりが頭をよぎるが、何とか混乱する頭を整理して冷静に対処するしかないと腹を括る。
最悪なケースとなんとか小競り合いですむケースそれにより、どれだけの犠牲で最小限に抑えるか?
脳内の電流は激しく行き交い、それを瞬時に解析と分析する。
そしてその中で最も最適な対処方法を行わないといけない。
緊張と不安はあるものの、こういう時にヴィルヘルムの思考は頂点に達っし高揚感に包まれて気持ちがいいのを自分でも不思議に思っている。
風を切り、土埃を巻き上げさせながらひたすらに馬を走らせる。
まるで疲れをしらない軍神の様に。
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いくつもの丘を越えると平原に出てくる。
そして丁度最後の丘の上に達した時にその光景は眼下に広がった。
「ハアァ~」
ヴィルヘルムが目にしたものは丁度数キロの感覚で相対する市民の群れと皇軍の集団だ。
しっかり皇軍の様子を観察するとある事に気が付く。
そうどう見ても正規軍ではなさそうなのだ。
正規軍は必ず御旗フェレ皇室の紋を掲げている。
しかし旗はない。
しかもじっくりとその集団の軍服は正規軍の者ではなかったからだ。
「あれは?
下級予備部隊?」
そう軍服とその装備が極めて貧祖であり、どう見ても下級軍人の集団だとしか見えなかったのだ。
「これだとなんとかなるかもしれない………。
それに大鷲を派遣したという事は近くにこの状況を伝えたそれなりの人物がいるはずだ」
ヴィルヘルムが再び馬を走らせ、その現場の近くへと移動する。
ドンドン近づくと次第にその光景が鮮明になっていく。
丘を下ると枯れはしているが林が現れ、それなりに身を隠せる木々がある。
もし伝達者が潜んでいたらここしか考えられなかった。
馬を降りてヴィルヘルムは足音を立てないように注意深く辺りを見渡す。
と木陰に隠れた迷彩服の男が、その現場を静かに観察していた。
ゆっくり気配を殺しその男に近づいて声をかけた。
「あの…クリスティア商団のヴィルヘルムです。
状況を知りたい」
男は一瞬ビクッとなったもののヴィルヘルムの顔を覗き込む。
男の目には見覚えのある人物が映し出し、しばし目を丸くしたがすぐにほっとした様子で軽く息を吐く。
「お待ちしておりました。
殿下。
私はかの監獄で助けられた革命軍北部地域のリー
ダーです。
大鷲の伝達に来ていただいて感謝しています」
「挨拶はいいから。
状況を説明して」
「現在デモの市民が皇宮傍の貴族特別地区に移動していた所、皇宮の指示で配置された皇宮警察第十連隊の第十五部隊とにらみ合いが起きています」
「は?
一番下級のどう見ても訓練や軍備のほとんどない
部隊じゃないか?」
「ええ。
なのでどうやら軍事行為はするつもりはないとい
う意思表示ではないでしょうか?
フェレ皇国はすでにかなり脆弱な状態のようで
す。
例の貴族襲撃事件が効いている
ようで。
特に軍事大臣以下の軍部が動揺しているです。
ただし武器を全く持たないというわけではありま
せんから。
このままだといつ衝突があってもおかしくありま
せん」
「今クリスティア商団から傭兵部隊をこちらに派遣している。
いつでも出発出来るように手配しているが如何せん距離がある。
時間稼ぎが必要だな」
「どうしたら」
ヴィルヘルムは馬上で練っていた案のいくつかをシュミレーションしてみる。
そしてその最善の方法は………。
部隊と市民を挑発しない。それでいて皇軍を刺激しない程度の圧力をかけられ、退却させる方法は?
今回の事態で僕達が行動を起こす時期にきている。民意は今確実にリライディナを支持している。
今この市民は武器を持っていない。
小競り合いさせる事なく皇軍を撤退させる方法。
「まずは皇軍の視覚に市民を守る軍の存在を示そう。
彼らは今の所市民を武力で制するつもりはないようだ。でないと早々に鎮圧してるだろう」
「そうですね」
「反乱軍の軍備は?」
「今は100名ほど近くに待機させています」
「人数と旗を沢山用意して、そして彼らに見えるように掲げて」
「あっ。なるほど」
「頼んだよ」
「では殿下。
部隊へ伝達します」
打てる手は全て打つ!
後はフェレ人の特徴を生かす衝突をどう回避したらいいか?
この状況下で……。
その時だった。
後ろから動く影を感じたヴィルヘルムはさっ!と振り向いた。
目に入ったのは簡易な服装の神官だ。
まだ若い人物で明らかに狼狽している。
「あの~~…。
私はこの地区の神官です。
あの光景に騒然として様子をここで覗っていました」
「神官様!
そうだ祈りの歌を。
祈りを女神ディアに捧げる祈りの歌を。
ここで歌ってください。
必ず信仰心の強いフェレ人達を鎮静化出来ます。
少しの間でいいです。
お願いします」
ここで神官はハッとしたそうだ何とかしたいからここにいたんだ。
「わかりました」
「僕が僕が貴方を守ります」
「はい!」
ヴィルヘルムは神官を騒然とする現場に近い一つの大木に目をやると人が登れるくらいの高さがあった。
ロープで足場を作り、神官をゆっくり登らせて丁度群衆の位置よりもやや高い位置に立った。
その傍でヴィルヘルムは護衛に徹する。
「Oo~~~OOOOOOOO~~~WA WWWaaa女神ディア……………捧げ……我らが………Ooooooooo
WAWA~~~~~我らが……………清らかなる……………女神………永遠に…LaLaaa……………」
幾重にも幾重にも美しい歌声はその騒然とする現場に捧げられた。
人々はその音を聞くやいなや。騒めいたがすぐに静まり、皆片膝をついて祈りの姿勢をとっていく。
さっきまでの殺気が嘘のようだった。
兵士もその様子に戸惑いはしたが、お互いの顔を見合わせ困惑しながらも決して悪くない状況に殺気はひとまず落ち着いた。
「神官様しばらくお願いします」
元々祈りの歌は女神ディアまつりの夜一晩をかけて歌われるので長い歌詞だ。
「いい感じだ!」
よし!!
これで援軍がくればいい!
「じゃあ僕は現場に行くから神官様はさらに歌を続けて!!」
ヴィルヘルムは颯爽と幾分和らいだかと思われた群衆めがけ走った。
「ぁぁ……。女神……LaaaLaaa………っディア女神……wAAaa.a........................〜〜〜〜」
何とか暴動を抑えれそうなヴィルヘルムに。
この動乱を鎮める事は出来るのか?
次回この編を終了し、次回新しい回に突入します。




