表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/117

外伝 最終章 皇位奪還 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】 立ち上がる民衆編Ⅴ

フェレの皇都で起こったデモ騒ぎを終息すべきヴィルヘルムのとった行動は?

皇軍と市民の一戦を封じる事は出来るのでしょうか?


ヴィルヘルムが祈りを捧げている市民達の傍に駆けつける。

皆懸命に祈りを捧げていたから人の気配にまったく気がつかないでいる。


リーダーは誰だ?


キョロキョロと祈る市民を様子を見渡す。

汚れた衣服の市民の中に明らかに上質の身なりで容貌もただならない中産階級の男が数名いた。

ほとんどの市民が貧困層だとわかる身なりだったので彼らは取り分け異質に見えた。


その中の一人がヴィルヘルムの気配に気がついてすっと頭をあげた。


ヴィルヘルムを 見上げる。


はっと驚いた様な顔をしてすぐさま膝を折り頭を下げた。


「少し話がしたい」


ヴィルヘルムは意を決して耳元に囁く。

その男は軽く頷いて立ち上がり列から離れ二人は近くの大樹に場所を移す。



「オルファン帝国第2皇子ヴィルヘルム殿下。

 お初にお目にかかります。

 我らの主君リライディナ皇女殿下の王配に。

 初めてご挨拶申し上げます。

 私はアウグスト・フェルナンデス・デイア・ガシュトンと申します」


「ガシュトン?

 フェレの大神殿の大神官の確か令息」


「はい。

 おっしゃる通り私は大神殿大神官の唯一の子息」


静かに語るその様子に何かしらの事情と問題を抱えているのがわかる。


「確か大神殿は皇宮を強く擁護しているはず。

 君が何故?」


「まぁ家庭の事情でのちほどお話します。 

 で今回はやはり軍隊との交戦をご心配に?」


「…私も今回のデモを心配で同行しました。

 今はある程度の緊張感で均等がとれていますが。

 何かあればあちらは引き金を引く事も厭わないでしょう」


「今革命軍の少数部隊を読んでいる。

 その後にはクリスティア商団の私兵がくるから威嚇になるだろう。

 それまではなんとしてもこの状態を保たないと」


「それは助かります。

 殿下」


「ところでどうして僕を知ってるの?」


「私は親に隠れて各国を身分を偽ってオルファン帝国で生活した時がありまして。

 その際に神殿でお見かけしました。 

 リライディナ皇女殿下の王配となられたと聞き胸が高鳴った思いでございます」


「えっ!

 あぁ~~そう…。

 入国の詳しくは聞かない事にするよ。

 まあ……。

 一般人は行き来できないはずだし…。

 あっ!!やっと革命軍の部隊が来たようだ」


「凄く多勢ですね」


「あっちはざわついています」


苦笑いをしながらアウグストが皇軍の方向を指指す。


「ああ。

 さて見てくれたまえ。あの旗を…」


得意げにヴィルヘルムが顔を上げて叫ぶ。


「クリスティア商団の旗!?」  


アウグストは叫ぶ。

まさに一筋の希望だ。

ここで革命軍が来たとなると交戦するしかない。


市民は祈りに夢中で皇軍のざわつきにはまったく気がつかない。

思い通りの展開でヴィルヘルムは作戦の成功を確信した。


案の定皇軍の一部は狼狽し、司令官らしき人物も副官らしき人物達と円陣を組んで協議しているようだ。


革命軍だけならなんとか交戦しただろう。

しかし相手が外国の商団の兵となると話は複雑だ。

一旦交戦してしまいその先の停戦となった場合経済と外交両方の交渉が必要になる。

かなり難航するだろうと想像がつく。


つまり逆にその事が彼らの叱責の的になる可能性が極めて高い。 


軍人ならば戦場で死ぬのは当然と言えば当然で、それなりに覚悟は出来ている。


しかし軍事裁判にかけられ処罰されるのは彼らにとっては屈辱で死ぬより不名誉だ。


当然二の足を踏む事態になる。



どのくらい時が経ったのか。


太陽は徐々に最後の力を振り絞り、茜色に空を染める頃皇軍の司令官がその空にまるで刃で切るように叫んだ。


「皇軍!

 撤収!!

 軍事作戦終了!!」


よし!!

彼らは群衆が祈りを捧げる姿にこれ以上の行進はしないと踏み、かつ商団の兵と一戦する事態を避けたのだ。


ヴィルヘルムはようやく胸を撫でおろした。

なんとかなった。


そう思った矢先だった。


シュ~~!


一つの甲高い音が茜の空をハヤブサの様に飛びそれは放物線の弧を描く。


ヴィルヘルムの嫌な悪寒がしてその弧の行先を懸命に目で追う。


ブスッ!!


「わぁアア~~~~!!」


祈りを捧げていた人々がざわつきそして腰をぬかしバタバタと倒れていく。


祈りの場は一瞬のうちに騒然としたざわつきの現場になってしまう。


ヴィルヘルムとアウグストは駆け足で現場へ向かう。


そこには胸に矢が刺さり、瀕死の男の姿があった。


「ちょっとのいて応急処置をしないと…」


ヴィルヘルムが男を抱きかかえて、胸のポケットからハンカチを取り出した。


「矢は抜かない方がいい。

 このままで。

 皆あの旗の元に彼を」


その瞬間騒然となっていた現場はたちまち野戦病院の様相になったように。

誰にも支指示されずに太い枝を見つける者、布を探す者、布を繋げる者が現れて簡易の担架が出来た。


「さあこれに乗せて」


誰かが叫ぶと皆で男を担架に移し、誰もが重い担架を下げ急ぎ足で商団のいる方角を目指す。


ヴィルヘルムはフェレ人のおそるべき行動力に驚嘆した。

この最低限の生活を営みながらも信仰心と共同体としての連隊に敬意を惜しまない。


「そうだ彼らが主導しなければ。

 僕は助けてあげようなんてなんて傲慢なんだ……」


ふと呟かずにいられなかった。




********************************************



「医務官!!けが人だ!

 矢にやられた!」


商団のテントに呼ばれた医務官はいそいで手術用の道具を手にして応急処置をしていく。


「大丈夫だろうか?」


ヴィルヘルムが冷や汗をかきながら医務官に問う。


「わかりません。

 かなり心臓の近くに刺さっていますので。

 止血がどのくらいできるか……」


そういいながらまずは矢の先をペンチで切断する。


その音と共にテントの入り口が風にたなびいた先には……。


ヴィルヘルムは自分の瞳を疑う。


そう視線の先には彼女がいるのだ。


血の気の引いたリライディナだった。


「どうして??」

ワナワナと震えて石像の様に立ち尽くすリライディナにゆっくりと近づくヴィルヘルム。


両手にリライディナを抱きしめる。

彼女の冷たい体温から絶望を感じて心配で仕方ない。


「どうし…。

 ねえ~~」


「リラ。大丈夫だよ!」


そう大丈夫だ。

大丈夫。


医務官が患者にきつけのミント水を嗅がせた時だった。


ピクリと男の瞼と睫毛が揺れた。


矢に当たった男性は助かるのでしょうか?

次回新たな決意の二人が決戦の時は近い!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ