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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目の二人 高位貴族を拉致せⅢ!

グランダリア公爵は甥がいるとはいえ、監禁されているとは思えないほどの高待遇を受けていた。

宿の敷地内では自由に動けてる状況に公爵自身も困惑していた。


何せ拉致されたのは間違いない事実であり、しかも自分は皇国の中枢にいる一派の長なのだ。

拷問されてもおかしくない。

皇国の憲兵ならば即座に拷問して虚偽の自供をさせて処刑しているだろう。


唯一の出入り口である正面門は厳重に兵士によって守られてはいるが、敷地内は外でも自由だ。

なので庭園も散策できる。

但し自由といってもどこかに監視の目を一定の距離感で感じていて、何かあれば即座に対処出来るだろうと公爵は見ていた。

その通り監視員を配置していた。


「連中はただの反乱分子ではなかった…のだ」


そうだ。

あの時に甥と一緒に入ってきたのはクリスティア商団のオルファン代表のフランシスだった。

そして面識はないが肖像画で入手したフェレイディン帝国の第二皇子ヴィルヘルム殿下だ。


フェレ皇国は鎖国というよりも一定の制限のある鎖国という政策をとっている。

敵国への外交の窓口である大使館はあるが、貿易はしなかったり、人流を断ったりしていた。

要は情報や政治的な事は知りたいが、文化や人の交流で自国の不満や問題や他国の干渉を受けたくないという思惑から前皇王時代から行っていた政策だ。


つまりリライディナ殿下のバックにはフォレイデンとオルファン帝国が。

勿論その他の同盟国もついているという事だ。

これは間違えれば大戦争にエルディア大陸を二分する。

大陸の大惨事が予測出来るほどの…。

公爵の頭の中は混乱と濁流でまったく妙案を見いだせないでいた。

これはやっかいだ。

皇位継承問題と敵国の干渉とさらに大商団と………。

今のフェレ宮廷で対処出来るのか?

この状況で……。



窓際でガラス窓に背を預けて庭園をぼんやり見ては顎に手をやり指でなんどもこすりつける。

考え事がある時の公爵の癖だった。


考えれは考えるほど真っ白になる脳内を鎮めて気分転換をするために公爵は部屋を出てた。

警備兵はいるものの公爵を見るだけで止めようとしたり後を追う者はいない。

一階への階段を降りて中庭へ入って行く。


緑のアーケードは適度に日差しを遮り、乾燥地帯でも生える植物を選りすぐって植えられた庭園は心身共に疲れた公爵の目の保養になるには十分だ。


少し歩くと東屋があり、木製の椅子とテーブルが可愛らしい休憩所の雰囲気を演出してくれている。

傍にはなんとか水の流れている小さな小川が人工的に作られ、水の流れる音と流れる風が少し涼しい。


「ここで疲れをとるか」

公爵は呟いて腰を降ろす。

ふっと息を吐く。


久しぶりにゆっくりしている気分になる。


宮廷や自邸にいても政争に振り回されていた。グロフォード公爵は目障りで常に監視しないといけない相手であり、自分は一派を率いた長なのだという自覚がそうさせるのだ。


ふと小川に小さな虫や魚に目をやる。


このところこういう景色は見ていないな。


フェレ皇都も貧困と病魔、不衛生な環境で一般市民さえ生きる気力をなくしていると公爵は知っていた。

しかし政争でそれどころではなかったといえば無責任な貴族だと思われても仕方ない。

政権さえとれればいくらでも改善できると考えていたからだ。


前皇王の皇位略奪計画の時に市民を賛同した。

皇宮を制圧した時には皇都中の市民が宮殿に集まり歓喜したものだった。


今市民にはその力さえ残っていないのだ。

政治の舞台から離れたこの時に冷静にその事を認めなくてはいけないかもしれない。


でないと本当にシャハルバード共和国の様に王権が失われ、ひょっとしたら貴族ではない更に平民が支配する時代がくるかもしれない。


途方もないそんな考え頭に浮かんでくる。


そんな事を思い巡らせていたその時、近くに人の気配を感じる。

反射的に振り向くと三人の人影が目に飛び込んでくる。


「…殿下?妃殿下………。

 アレクサンドル?」


そう三人が東屋に来たのだ。


「こちらに座ってよろしいでしょうか?

 公爵閣下」

ヴィルヘルムが軽く会釈をして公爵の瞳を覗き見る。


「ええ。殿下」


「遅れてご挨拶いたしておりませんでした。

 私フェレイデン帝国第二皇子ヴィルヘルム・ディア・フェレイデンでございます」


「フェレの公爵位グランダリアでございます殿下」


「お会いできて嬉しいです。

 公爵」


「こちらに掛けても?」


「どうぞ両殿下。

 そしてアレクサンドルも」


三人はゆっくりと腰を落とす。


そしてどこからか侍女が合わられてお茶の用意がされテーブルのカップに紅茶が注がれた。


グランダリア公爵は静かにカップを口元に押し当て紅茶を喉に流し込み。

芳醇な香りが鼻から抜けて心地よい。


「アフェルキア茶。

 しかも手に入れないくらいの最高級品ですな。

 よい香りと芳醇な味わい。

 ナッツの香ばしいコクすら感じます」


「クリスティア商団の仕入れです」


「なるほどさすがオルファン帝国支部の長のフランシスですな」


「恐縮でございます閣下」


「所で…リライディナ殿下はどうやら()()()()()()()がおありのようだ」


「公爵。

 私は私の野望や私欲の為に皇王になりたいとは思っていない。

 この国の貧困と人々の無気力さや絶望を危惧しているのだ。 

 公爵。

 上皇王がこの現状になんの対策もしない。

 いや責任を放棄し一部の私服を肥やす高位貴族の温床と皇室がなっているのなら。

 改革しなければ。

 このままではフェレが滅亡するしかない。

 私は私の周りのそして私の血の責任を全うしたいのです。

 閣下は上皇王の近くで一番見てきたろう。

 私は皆に笑って生活してほしい。

 それだけだ!」


リライディナの言葉に嘘や野心、欲望の欠片も感じない公爵は直感的にそう感じた。

長いフェレ皇国の政争でそういうやからが発する独特の悪臭を若い頃から嗅ぎ分けてきた。

だからこそ下級貴族から現在公爵位まで登りつける事が出来たのだ。


公爵は黙って瞼を閉じてその熱の籠った声からリライディナの本質に触れた気はしたが、何分すぐには決断が出来ない。

それはそうだろう。

事は重大問題だ。

反乱に同調したと思われただけでフェレではどういう目に合うかは考えなくてもわかる。


じっと瞼を閉じてリライディナの素質や可能性を排除せず、又否定や避難をせずひたすらに悪意と野心と欲望があるのではとその一点に集中しリライディナの話を聞く。


「私の存在は一部の者しか知らなかった。

 おそらく公爵も私の存在を知っていたとは思うけれど。

 どういう人物か私を知らないと思う。

 だから今わかってほしい。

 協力してほしいとは言わない。

 話だけを聞いてほしい。

 フェレの為に。皆を助けたいんだ」


「皇女殿下の事は噂でしか存じませんでした。

 恐らく貴族の中でもそれすら知っている者は少ないでしょう。

 フェレ皇国の皇族は正妃腹の皇子皇女のみがその地位を持つためです」


公爵は静かに事実だけにぼそりと告げた。


「ええ。でも私を知ってくれてありがとう」


リライディナの口角が僅かに上がる。

くったくのない笑顔は悪意やよく思われたいという虚もない。純粋むくな瞳が物語っていた。


それを見た公爵はふと昔を思い出した。

前皇王が皇位を継承して皇王として即位式を行った後、私に労いの言葉をかけた時の笑顔に似ていたからだ。



私はまだ奇跡を。

期待しているのだろうか?


口には出さないが公爵は苦笑いを浮かべながら口元へ再び紅茶を流し込んだ。


「伯父上。

 どうか考えてほしい。

 フェレは限界だ。

 今どうかしないと。

 エルディア大陸から永遠に消滅してしまう」


泣きそうな声でアレクサンドルが懇願した瞳を伯父に向ける。


公爵はその姿に寂しさと頼もしさとなんともいえない感情に支配される。





両天秤にかけて答えがすぐ出る訳もなかった。


「公爵。

 貴方が即答出来ないのはよくわかる。

 私であってもそうだ。

 長たるもの安易に政治的決断は出来ない。

 自分だけでなく束ねる下々の者まで影響を受けるのだから。

 だからすぐ答えが欲しいとは言わない。

 ただせめて傍観してほしいという願いは伝える」


「………ヴィルヘルム殿下。

 参りましたね。

 いっそ脅迫された方がよかった」


「脅迫したところで貴方は逆に反発する方と分析いたしました。

 私が得た情報によると閣下はクロフォード公爵に疑惑を持たれている。

 しかしかなり相当な。

 彼はフェレには悪でしかありません。

 現状の皇室が延命する限りフェレの希望はありません。

 残念ながら」


公爵はじっと耳を傾けながらも言葉にする事はなかったが同意するしかない説得だった。

まさに皇族の政治家という面のヴィルヘルムを肌で知った。

見た感じは柔らかで温和そうで懐柔しやすそうだが、しかしとんでもなく戦略家であると感じる。



「私は……即答はやはりできない。

 しかし……君達の気持ちは十分に心にとめて置こう」


そう言うのが精一杯だった。


「十分です。グランダリア公爵

 明日で12日間こちらで過ごしていただきました。

 明後日解放させていただきますが、恐縮ですが当日は他の拉致貴族と同様にしないと公爵が疑われてしまいます。

 なので。

 失礼なお見送りになります事をお許しください」

 こちらを出られたら当分の間は連絡はやめておきます。

 もし公爵が同意される日が来ましたら、頃合いを見て合図をお願いします。

 合図は………」


ヴォルへルムが少し頭を下げてグランダリア公爵に告げた姿は本当に申し訳ないという気持ちが籠った例だったので思わず公爵は笑ってしまった。


「ぷっ…殿下は本当にあまり皇族らしくありませんね」


この話し合いの後拉致後の十二日後まるで貧困者の身なりで汚れた姿で自邸の門前に縄で括りつけられて発見させた。


その後は他の拉致者の様にしばらくは自邸に籠る生活を送る事になった。



次回は最終章にあたるため、休載させていただきます。

遅くても末には更新したいなと思っています。

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ありがとうございます。

励みになります以降も宜しくお願いいたします。

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