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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目の二人 夫婦の絆

監獄襲撃計画の後不覚にも小川に落ちたヴィルヘルムさてどうなる?


ふあふあ…なんだか気持ちいいふわふわな感覚。朧げな意識の中でそれはまるで海の中にいるような感覚が全身を包み込む。


なぜだか海?の中と感じているのに呼吸はできる。


ふあふあと身体が浮いている様な感覚が心地よくてずっとこのままでいたいそんな気持ちになる。

穏やかな気持ちが心の中から湧き出てこの母の腕の中でいるようななんだか懐かしい久しぶりの気がする。


そうヴィルヘルムはこのままでもいいと思えているそんな虚ろな空間世界で……。


そんな穏やかな波の音の間から僅かに微かに聞こえてくる誰かの声。

誰かの?誰の?


「誰の?」


ヴィルヘルムは更に耳を澄ませて意識を集中させる。


……でも聞こえない。


また聞こうと耳を澄ますが………今度は聞こえない。


聞こうと意識するのを諦めるとまた波の音の間から今度はす〜と微かに聞こえてきた。


それは女性の声?



「ヴィ…ヴィ…ル!」


「そう…誰か呼んでる。

 誰か僕を呼んでる??」


その瞬間に口の中に鼻を耳にボコボコと海水が入って圧迫するような感覚が襲ってきた。


呼吸が出来ない!

急に呼吸ができなくなって苦しい!


息が出来ずボコボコと泡が口から出ては両手をバタバタと上へ上へと押し上げる。

バタバタと暴れながらも上へ上へと動作を止めない。


そう思った瞬間身体は何かに持ち上げられるように急に浮上していく。

もがきながら足もバタバタと蹴り上げて必死に上へと這い上がる。


もう息が続かない。

諦めかけた時にがっ!!と。


瞼が開いた。


はっ!!


意識がはっきりした目の前にチーク材の天井板が見える。


えっ?

自分の置かれた状況がいま一つ呑み込めない。


随分古いが、しっかりした梁も規則正しく配置されている。

寝ている?


左右に目を動かすとどうやら寝台の上で寝ていたようだ。


左側には何か重い違和感を感じたその場所には。


そう何か?

誰かいるのだ。


「誰??」


長い豊かな黒髪がベッドのシーツの白色とのコントラストに映えて光沢を浴びてさらに美しく見えた。

顔をベットに埋めて眠っている少女?女性?


無意識に手をその人に触れてみようとして手を差し出した時だ。


瞳と瞳が交錯する。


ふとリライディナの潤んだ瞳はヴィルヘルムを映すと、涙で目の前のヴィルヘルムが霞んでは滲んでいく。

なくなるのではとそんな恐怖心で涙が止まらなくなった。


すると目の前のヴィルヘルムの姿は途端に消えてしまって、更に悲しく感情的になってそのまま身体をヴィルヘルムに抱きついた。


しっかりとまるで逃がさないといわんばかりの力を両腕でヴィルヘルムの背を包み込む。

後から後から涙が止まらない。


「WA~~~~~~NN! WA~~~~~~~~ヴィル!ヴィルが…~~~」


今まで声をあげて泣いた事などなかったのに。


ヴィルヘルムが助かったと目覚めた瞬間安堵の波が涙となってあふれ出たのだ。


「ヴィル!ウッッ……」


「リラ!!」


ヴィルヘルムも優しくリライディナの背に両腕を廻して背をトントンと撫でる。

それは父の様な情愛を感じさせると同時に何か最近のヴィルヘルムと違う印象を与えた。


そしてリライディナははっと気付いた。


そう自分を呼ぶその名は愛称。


殿下でもなく。

リライディナ皇女でもなく。


そう愛称のリラと呼んだと気が付いた時にわかったのだ。


「ヴィル!

 記憶が!!記憶が戻った!ヴィルの!

 記憶が!!」


「ん?記憶?

 リラ変なの………。何?記憶って?」


ヴィルヘルムはリライディナの言葉に疑問しか湧かない。

どうやら今度は記憶喪失時の記憶が消失してしまっているようだった。

本人にとってはその方がいいかもしれない。

何せ好きな妻に他人行儀な行動や言動を重ねていたから。


「ヴィル…ヴィル…ヴィル!ヴィル……」


声が枯れるまで彼の名を呼び続けた。

今までにないほど、刹那に。

その名を呼び続けた。


「リラ?」

ヴィルヘルムは記憶喪失だったのが記憶にないのかこのリライディナの取り乱し方を理解できていない。

驚いたようにしばらく動揺していていたけれど、リライディナの背を両手で覆いしっかりと抱きしめる。


大丈夫という替わりに。

自分の温もりを感じられるようにずっと抱きしめる。


「もういなくなってしまわないな。

 ずっとそばにいてくれ。

 ヴィル好きだ。

 ヴィル好きだ。好きだ。好きだ~~」


その好きは皆と同じ好きではない事をヴィルヘルムにもはぢきりとわかった。


「僕は愛しているよ。

 リラ!

 君を愛している」


激しさの中に優しさが見え隠れしながらもその熱は失っていない。

そう言って抱きしめた腕を緩めて自分の両手をリライディナの頬に寄せた。

真っ赤な薔薇の花の様に頬が染まり、その瞳に揺らめく潤んだ瞳がヴィルヘルムを魅了する。



「私もだ。

 私もヴィルを愛している」


そう言ってその唇をヴィルヘルムのそれに重ねた。


二人は初めてお互いを強く抱きしめあい求め合い。

本当の意味での愛を感じ合うその時を歓喜している。

熱い身体はお互いを更に熱を上げてその熱さの温度を上げていく。

長い長い深い口づけは二人をようやく一つの夫婦の証だった。


「ヴィル。本当の夫婦になろう。

 私はヒキガエルになっても大丈夫だ」


意味の解らない言葉に苦笑しながらもヴィルヘルムは本当に嬉しく心臓は最高潮に鼓動を波打っている。


「ふっ…ありがとうリラ」


そう言って優しくリライディナの身体を寝台へと寝かしつけると優しく、軽やかに。

口に。額に。目に。鼻に。頬に。

キスの雨を降らせる。


「ふっ…くすぐったい…」

思わずリライディナがコロコロと笑い始めて空気が和んだ。


「リラ僕の妻」

ヴィルヘルムは深い口付けを再びリライディナに降らせてその柔らかで艶やかな肌にその唇を重ねて甘い熱をリライディナに起こす。


「ヴィルなんか変。身体が熱いんだ」


ヴィルはリライディナの顔を覗き込んで優しく頬にキスをして耳元で囁いた。


「熱いのは僕が。君が。求めているから。

 大丈夫だよ」


再びの濃厚なチョコレートのような甘いでも、豊かな芳醇な果実酒を口にしたかのような刺激的で狂おしいまでに求め合い。

2人は1つに重なり合う。


その夜はヴィルヘルムに翻弄されて本当の妻になった。

名実共に。






高位貴族を拉致せよⅢはこの章終わりましたら更新します。

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