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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目の二人 高位貴族を拉致せ!

「そろそろ()()()()()()()()()()思う」


始まったばかりの宿の一室で行われる定例会議の席でフランシスが口火を切った。


「次の段階?。

 そうだね。

 時期としてそろそろいいだろう」


リナイディナは腕を組みながらぼそりと呟くその口調には次の段階がなんの計画なのか理解しているように憮然と同調する。


「じゃあ~やるんですね。

 腕がなります!」

アレクサンドルはこの会議に呼ばれた理由がわかり興奮しながら声を荒げる。


「ヴィルヘルム殿下は早い時期に私に今回の計画を告げられていた。

 詳細の書面も預かっている。

 まるでこの時を知るかのようにね。

 こうなる可能性があるのではと頭の中にあったのだろうか」


フランシスはそう言うと感心した様子でちらりとヴィルヘルムに視線を向ける。


ヴィルヘルムは当然そんな記憶にないのでぽか~んと何の事だろうとばかりにフランシスを見ているだけでほぼ反応は見せない。。


「ヴォルが中心になってディナス家の影の工作隊が動くよ」

リライディナもこの詳細を聞いていたのか予め予定していたように言った。


「適任者だな。最高の工作員部隊と聞いている」


フランシスが意味ありげに皮肉っぽく笑って褒めた。


「それと皇都圏と近くの地方都市で行われている平民へ小規模に行っている私塾を各神殿の地下を借りて大規模に行う事にする」


リライディナはさも当然と言わんばかりに議題を持ち出した。

クリスティア商団は各地で慈善活動を行っていた。

女神の薬草を施し医療と食料、そして生活支援を無償で行っていた。

そしてその資金主をリライディナ・ディア・フェレ皇女だと公言していたのだ。


平民に教育をという話にフランシスもアレクサンドルも目を大きく開き完全に言葉を失っている。


「…リライディナ殿下の指示の元神殿内の改革派の

 神官と渡りをつけ表向きは神学を平民に教える授

 業。

 神官長にはそういう名目で話しています。

 寄付という名の金銭も渡しました。

 改革派の神官をよりすぐり表向きは神学を教える

 名目で。

 読み書きや計算を手始めにいずれはフェレの担い

 手になる人材を育成する教育組織にして大規模施

 設を建設し開校予定です。

 貧困家庭には出席する子供達の食事代と衣服、そ

 してそれらに必要な資材をこちらで負担します。

 授業中に子供達が稼げたであろう金を授業に出た

 回数分補填すると説明したら二つ返事で許可がで

 ました。

 しばらくは小規模で行い。

 軌道に乗れば広げていきます」


アンリエットが神妙な面持ちで冷静に説明してはいるがその声は興奮で震え頬は紅潮している。



「皆さん驚くだろう。

 シャハルバードでは平民以下の教育は義務なん

 だ。

 授業料も学費も食事も無料なんだ。

 フェレ皇国でもそうしたいんだ。

 今のフェレでは陰でしか出来ないだろ。

 いずれ私が政権を取った後、貧困家庭であろうと

 義務教育は必須としたい。

 いやするよ。

 フェレの高位貴族は腐敗しているか。

 この状況を黙認しているか。

 それを打ち砕くのはまさに平民だと思うから。

 フェレの貴族は高慢だけど、自分の評判には酷く

 繊細だ。

 少しの悪評も自尊心を傷つけられると怯え恐怖す

 るのが貴族。

 そこを突く。」


「なるほど民意か。

 重要だな。」


アレクサンドルは何度も頷いてリライディナの孤高で崇高な精神を見て感心しかりだった。

フェレ貴族いやほとんどエルディア大陸の王侯貴族は自分達を女神から選ばれた者で、領地や支配している国を統治するのは当然だという絶対主義が萬栄している。


この常識を打ち破るのがまさに異端者でもあるこのリライディナかもしれない。

そうアレクサンドルが確信した瞬間だった。


「よし。わかった。

 そうしよう」


アレクサンドルは覚悟を決めた。

いや決めていたが、更にその決意が強固なものになったと言っていい。


「リライディナ殿下。

 クリスティア商団員達。

 それと各地方のリーダーからクリスティア商団を

 通じて少しずつ貧民の暮らしがましになったと報

 告が上がってきている。

 改めて礼をいう」


リライディナは恥ずかしそうに微笑んで答える。


「いえ。私はいるだけ。

 皆が命にかえて行ってきた事が成果として出てい

 るんだ」


「じゃあそっちはそっちで進めるとして。

 まずは第一作戦といきましょな姫様!」


ヴォルの嬉しそうなその表情から恐らく順調に作戦は遂行出来るだろうとリライディナは感じていた。




*******************************************




最近のフェレ皇国の皇都では貴族達はめっきり夜の外出をしなくなった。

以前は闇で行われる賭博会場や仮面舞踏会、口にはしないが憚れる夜会に快楽の限りを尽くす者も多かったが、めっきりと豪華な貴族の馬車の通行は見受けられなくなりつつある。


たまに出会う馬車は猛スピードで闊歩して爆走しているか、もしくは辻馬車を装って移動している者ぐらいだ。


実は皇都では深夜に外出するととんでもない羞恥なめに合わされるともっぱらの噂になっていたからだ。


最初の犠牲者はクロフォード公爵派のバリュディアン伯爵だった。

横柄でいかにも強欲な貴族の一人として有名で平民からも評判の悪い人物だった。

いつもの賭博場から大負けした帰りに馬車が襲撃されなんと拉致されたのだ。

犯人はわからず、最終的に伯爵は発見された者の貧民街の近くの路地に手足を縄で縛られ目隠しをされ裸の状態で発見された。


治安部隊が調査したが犯人には特定できず、伯爵はそれ以降夜の外出はもとより宮廷へもすっかり足を運ばなくなり人付き合いもせず邸の自室の寝室に籠ってしまったという。


次に狙われたのはグランダリア公爵派のレントーラ侯爵で、仮面舞踏会に出席する為に外出し帰りの道でおなじくまるで霧の中で消えてしまった様に行方不明になった。


発見された時には郊外の大木の上に吊されて首には「ぶるいの女好き侯爵」と書かれた看板をぶら下げていたという。


この侯爵は確かに女好きで多くの愛人や妾、手を出したのは強制的に町娘や召使といった者にもおよんでいた。

この事件の後宮廷での噂が静まらず、正妻にも愛想をつかされ失意のうちに別荘に逃げ隠棲生活をよぎなくされた。


次は中道派のバレンティナ子爵で比較的下級貴族だったが、グロフォード公爵の手のいい犬だった。

上にはへいこら頭を下げるくせに、下の者には横柄で凶暴ですぐに暴力に出ては平民を殺す事さえしていた。

貴族の襲撃事件は知ってはいたが屈強な護衛をつけて夜会に出席したやはり帰りに護衛は全員刺殺され拉致された。


7日後皇都の一番広い広場の前に建てられた祭り用のポールに全裸で縛られて発見された。

子爵は当然前の数名と同じように社交の場に出てこなくなり、豊だった領地運営はまたたくまに火の車になって没落していった。


そして間を置かずグロフォード公爵派の財務大臣でもあったレンデェ侯爵が拉致された、。

レンデェ侯爵は財務大臣の職権をいいことに多額の賄賂を受けてはいいように私腹を蓄えていた。

7日後に郊外の農場の豚小屋で豚に舐められ蹴られ発狂せんばかりの所で発見された。

皇都に入るやいなや役職を辞任して即座に領地に引きこもってしまった。



それを知ってはいたがどうしても深夜に外出しなくてはいけなくなったのがグロフォード公爵の一番の配下であるシャリーノ侯爵だ。


前日の昼にクロフォード公爵から極秘の任務を受けその日の深夜に猛スピードで皇都を行き交ったが。

案の定襲撃を受けて3日後乗っていた馬車の御者の席に縄で縛られて発見された。

シャリーノ侯爵はかつて経験した事のない状況に狂わんばかりに恐れ、以降宮廷に顔を見せなくなりしまいには自信の領地であった保養地に隠棲してしまった。


次に狙われたのはグランダリア公爵派のラシュール伯爵だった。

すでに80歳という老人だったが、その頑固さと年齢を感じさせない強靭な肉体で貴族を狙った拉致事件も鼻で笑うほど気にもかけていなかった。

若き時代は武人として知られ上皇王の反乱の際には第一皇女とグランダリア公爵との橋掛け役をこなしたほどの人物であり、グランダリア公爵に唯一苦言を言える人物だったのだ。


その人物すら深夜にある人物に呼び出されいそいそと外出し、そこを襲撃され拉致されたのだった。


そして14日後に自身の邸宅の門に縛りつけられ使用人によって発見された。

伯爵はその後寝室に籠り、誰とも会おうとせずに7日間後、突然なんの前触れもなくグランダリア公爵にある手紙を出した。


さてこの拉致事件では市民からの評判の悪い貴族か宮廷内の高位貴族に限定されていて、何故か新興貴族はターゲットにされなかった。


新興貴族はその名の通り貴族の身分を手に入れた新参者の貴族を指す。

つまり古くから家系の貴族達にとっては卑しい者に過ぎなかった。

あくまで本当の貴族とは自分達だけといわんばかりだ。


貴族と言っても一括りではない。

主に旧宮廷派と新興貴族に別れ両者は対立していたが権力は圧倒的に旧宮廷派が優位だった。


旧宮廷派とはフェレ皇王家の始祖かだ三代までに仕えた貴族の家の出身者で構成され、四代以降に貴族になった家を新興貴族と呼んでいた。


両者は更に分裂して現在はグランダリア公爵派とクロフォード公爵派そして中道派に分類されている。

全体の貴族の構図は旧宮廷派10%新興貴族90%


派閥はグランダリア公爵が30%、クロフォード公爵40%、中道派が25%その他の5%という構成になっている。

しかしこれは全体でいう常に宮廷を牛耳っているのは旧宮廷派であり、%がそのまま政治に結びつきはしない。

あくまで指示しているにすぎないからだ。


そして最後の拉致事件が行なわれる夜がやってきた。






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