外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目の二人 ヴィルヘルムの苦悩
監獄襲撃が無事成功したものの、その後遺症のような状況がリライディナ達に遅いかかる。
それぞれのその後
ヴィルヘルム達は監獄襲撃を成功させ、各リーダー達を介抱し、介護し重く遇したのでリーダー達はリライディナの皇位奪還に協力する事を固く忠誠を誓った。
特に首都部を束ねるアレクサンドル・ドゥルージュはリライディナに跪いてその小さな手に自分の手を重ねて甲に軽く敬愛のキスを贈る。
もはや女神ディア扱いだとその光景を見たヴォルが満足した表情でその場面を永遠に覚えておこうと目に焼き付ける。
「リライディナ皇女殿下。
いえ我らが皇王陛下にこの身を捧げます。
私と私の子孫の永遠の忠誠をここに誓います」
リライディナはにっこりと微笑んで答える。
「貴方方の忠誠心に相応しい君主になると宣言します」
「万歳!
万歳!
我らの新皇王陛下!」
「万歳」
「万歳!万歳!」
「万歳」
「新皇王陛下!」
自然と口々にリーダー達はリライディアを賞賛し、君主への道を確かなものに出来る一つの力を手にいれた瞬間だった。
そしてそれぞれの革命軍の本拠地に帰っていった。
帰還後はゆうまでもなく各地方の反乱に勢いがまし依然と比べ小競り合いも優位に立てていった。
武器もクリティア商団から納入されしいては参謀まで派遣させていたからだ。
しかし革命と言えるほどの行動はしばらく控える様にリライディナが指示する。
何故なら民意がまだ定まっていないのだ。
つまり樹はまだ熟していないし。
何よりも他に優先すべき事柄が多かった。
今回の作戦は監獄を襲撃した成果は単にフェレ宮廷を揺さぶるだけでなく、新しい革命軍の人材となによりもリライディナやヴィルヘルムの力強い勢力の拡大を意味していた。
一歩も二歩も前進だ。
さてヴォルは秘密裏にギャバンの遺体をディナス家の支配地域に輸送した。
結局ギャバンは出血多量で名医の治療のかいもなく死去したのだ。
ヴォルはギャバンがスパイだったという事実にショックは受けたものの、家族を人質にとるという卑怯な手段に出たフェレ皇国の宮廷に激しい怒りを覚え敵討ちを心に誓う。
ギャバンの事は嫌いにはなれないのだ。
それよりも二人で過ごした日々が何よりも思い出に強かったからだ。
どんなにか悩んでいたろうかとそれに気付けないでいた自分を責めた。
保護した者の中で重症の政治犯達は医療を受けさせて回復した後に、クリスティア商団で保護する事になった。
中には商団にとって貴重な人物も含まれていてフランシスは体調が回復次第団員に誘うつもりでいる。
アンリエットとルシファルは婚約者同士でフェレ皇国側に人質としてルシファルを捕らえアンリエットをスパイとして潜入させていたと発覚した。
リライディナはショックではあったが、その立場と二人の愛に広い心で許す事にした。
アンリエットは驚嘆し、以後二人でリライディナに忠誠を誓うと宣言し何よりも強い絆が生まれたのだ。
しかしリライディナとフランシスには更なる問題が横たわっていた。
そうヴィルヘルムの記憶喪失だ。
重要な参謀を失った痛手は大きい。
ヴィルヘルムとリライディナ
ヴィルヘルムが発見されてから医師の治療により外傷は概ね完治したが、2か月経つも以前記憶は戻らなかった。
焦ったヴォルやマーシャは無理に記憶を思い出させようと矢継ぎ早にいろいろな出来事を話はするもののヴィルヘルムは頭が混乱するだけで最後には頭痛で寝込む事が多くなった。
しかたなくリライディナは二人を諫め、あまり記憶を取り戻させようとは積極的にしない事にした。
それは諦めたというよりも時期を待ったといっていい。
自然と記憶を取り戻したいとヴィルヘルムが思えばいいんだと自分を納得させてた。
そんな日々が過ぎ、ヴィルヘルムもようやくこれからの事、自分の事、いろんな悩むや不安が頭をよぎる事が多くなった。
そんな時息抜きに近くの森を散歩しようと出かけたある日の事だ。
日照りに悩まされ続けているフェレ皇国の中でこの地区は何故か水環境が良く森が形成されていた。
最もこの森林は乾燥地でも良く生育する植物ではあったが。
森の中に入ると木漏れ日の日差しが柔らかく、又森の香りがその鼻孔を刺激してリラックス出来る。
久しぶりの解放感と静けさに心が穏やかになるのをヴィルヘルムは感じる。
こんな所だったらこれからの事を考えるのにはいい場所だ。
そう思った。
丁度老木ではあるが鬱蒼と生い茂る大木の根元に僅かに木陰は休める場所には最適だ。
ここにするか。
ヴィルヘルムはそう言って静かに腰を下ろした。
風に揺れる葉の音と、鳥の鳴き声、小動物の動く音、遠くから聞こえてくる動物の鳴き声。
何よりも心地い森の香りが心を落ち着かせてくれる。
久しぶりにゆっくり深呼吸を一つついて、木々の香りをいっぱいに吸い込んだ後ふと今の自分を客観的に考えてみる。
僕がオルファン帝国の第2皇子でフェレ皇国のリライディア皇女殿下の皇配なんて。
しかもフェレ皇国の皇位奪還に一役かっている人物だなんて……。
言われても………。
正直覚えがないのだから仕方ない。
自分が何者なのか?
他人から聞かされても実感が沸かないのだ。
それはそうだ。
平民や貴族、王族そんな身分の記憶すらないのだ。
自分はこうだと言われてもそれで納得するにはあまりに大きな抵抗感がどうしてもつきまとう。
これからどうしたらいいんだ。
僕は何者で。
どうするのが一番いいんだ?
誰かに決めてもらうなんて変だし。
でも僕に答えが出せそうにない。
どうするのがいいのかまったく答えはでない。
自問自答を繰り返しながらも真面目に問題と向かい合おうとする姿勢は以前のヴィルヘルムと変わりない。
何度も何度も考えても。
記憶を辿ろうとすると決まって頭痛が襲ってはそれを妨げる。
まるで思い出したらいけないほどに。
欝欝とそんな答えが見つからない問答を繰り返していた時、突然水音がどこからかしているのを耳が拾う。
えっ?
動物?人?
でも結構森深くに来たはず。
そう思いながらも立ち上がりその音を確かめたいという衝動を押えられずに歩む。
その音はさらに奥の森から聞こえてきた。
更に目を凝らすと木々の間から小さな泉が出来ていた。
「えっ?泉?」
天候不順により日照りが続いたフェレ皇国と聞いていたヴィルヘルムは目を丸くした何せ小さいが滾々と湧く泉がその姿を隠そうともせずにそこにあるのだ。
しかも無意識にその泉に近づいた時にはっとした。
そうリライディナが下着のままで水浴びしていたのだ。
しかも今瞳が合った!
二人は予期せぬ出会いに、しばし身体が硬直し一歩も動けず言葉も出ない。
この出来事のしばらく後、ディナス家の直轄領地を出発する遊牧民の荷馬車の一行あった。
その列の中に遊牧民とは明らかに風貌が違う4人の家族の姿があった。
まだ痛々しい傷の残った大柄の男、妻らしい女性は心配そうにその横でぴったりと寄り添う。
その両側に両親の腕をしっかり抱きしめている二人の娘。
実はヴォルに助けられたギャバンは死んだと報告していたが、手当されディナス家に保護されていたのだった。
ギャバンの立場を考え新たな道を用意し、リライディナには後日報告する段取りだ。
ギャバンはヴォルの仲介でシャハルバード共和国に生活拠点を移す事になった。
ギャバンは思う。
いつの日かリライディナ殿下に謝罪する為に家族の為に生きると。
後書きは実はギャバンは編です。




