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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目の二人 監獄襲撃の後にⅡ

グランダリア公爵には非常事態に邸にいてもいられず上皇王宮に押しかけ謁見を行おうとしたが、上皇王の錯乱という事態に体よく侍従達に追い返されてしまった。


しかしその扉の向こうから確かに錯乱し叫ぶ上皇王の声は十分に伝わった。


「陛下に何が起こっているのだ?

 あの取り乱し方尋常ではない・…」


答えが見つからずに悶々としながら皇都の私邸に戻った時、ファレーデン伯爵が訪問していると執事長に告げられた。


靴底が割れるのではないかというくらいの荒々しさで足取りが早い。

応接室の扉を開けさせて挨拶そっちのけでソファーに身体を勢いよく投げ出した。


「緊急に訪問したのは例の件がわかったのだな」


興奮する気持ちを落ち着かせる為に葉巻に火をつけて口にした。

芳醇で濃厚な香り、渋みを感じながらその味を堪能する為に大きく息を吐く。

と同時にその呼吸で気持ちが落ち着いてくるのを感じる。


「はい閣下。

 グロフォード公爵がディークフリド侯国から孤児達を人身売買で買い取り傘下の工場で強制労働させております。

 孤児達は悪環境の中死去したり病を患ったりしているようです。

 またシャハルバードとの貿易の利益を秘密裏に詐取し、違法な薬物売買も行っているとの報告が。

 闇の仕切り人と言われているようです」


「なんと国際問題ではないか!」


「しかもどうやら上皇王陛下もご存じで黙認されていらっしゃいます。

 その一部は宮廷費に用立てられていると報告が。

 つまり上皇王陛下も。」


「なんと……上皇王陛下もご存じ?

 だというのか?」


まさかの報告にグランダリア公爵の頭はおっつかない。

何故?

少なくとも上皇王は専制君主ではあったが強欲な君主ではなかったと記憶している。


「これはまだ噂でしかありませんが。

 2人は長くそういう関係であったと。

 表立っては噂されてはいませんが、我が妻が秘密時に内々で高位宮廷婦人の間では承知の事実とか」


グランダリア公爵はその話で納得できた。

あの上皇王の錯乱状態の叫びの場にグロフォード公爵がいたのだ。


「実は今しがた上皇王宮に行ったのだが………。

 どうやら上皇王の私室にグロフォード公爵が出入

 りしているようだ。

 あの二人は皇位奪還計画前にそういう関係だった

 のか?」


「わかりませんが。

 上皇王陛下はまだしも。

 あのグロフォード公爵の普段の行動と言動、そして異常な忠誠心。

 否定するにはいささか無理があるかと」


グランダリア公爵は最近の上皇王とグロフォード公爵の2人の行動、些細な表情、小さな言葉のやり取りを思い出す。

どれをとってもファレーデン伯爵の発言を裏付ける証拠の様な気がして仕方ないだ。


ゴツゴツした拳をぎゅっと握る手は微妙に震えている。

怒りからだ。

そうだ。

気になけないようにしていたのだ。

私は……。

何故だか自分自身を責めずにはいられなくなる。

頭の中で目まぐるしく過去が思い出される。


グランダリア公爵は前皇王(つまり上皇王の父)の時代には低い男爵の地位を持つ武官の下級貴族だった。

そんな時に屋敷に出入りしていた商才に長けたを商人を通じ皇太子だった前皇王に接近した。

若い頃の前皇王は血気盛んな改革派のまさに明るいフェレ皇国の未来だった。

即位後は侯爵の能力を買い高位貴族侯爵の爵位を授かり、そして婿養子の話をつけてくれてグランダリア公爵の爵位を継げたのだ。


前皇王は即位中頃までは改革を推し進め名君の誉れが高かった。

まさにフェレ皇国の黄金時代だった。

しかし前皇王は安定的な政務に物足りなさにいつしか政治に興味を失っていった。


遂には酒肉に溺れ、囲っていた女達を集めた後宮から出てくる事が滅多になくなっていった。


晩年に第一皇女の反乱を招き廃位させられ幽閉されたのだ。

一報を受けたグランダリア公爵は即座に第一皇女側につき、私軍を第一皇女に加勢したのだった。


もとはといえば皇王陛下が、善政を敷いてくださればこのような事には……。

今でもふとそんな気持ちが心に隙間風の様に訪れる瞬間がある。


グランダリア公爵は今更言っても仕方ないと溜息まじりに頭を上げ天井を見上げる。


結局何が一番最適な道だったのか?

わからない……。


「グランダリア公爵?」


ファレーデン伯爵が目の前に怪訝そうな顔で聞いた。


「あっ……。いや………もういいんだ」


「証拠はある程度押さえました。

 どうされますか?」


「……まずは預かっておこう」


「では…まだ一部しか明らかにされておりません。」


「十分だ

 時期を見て開示しよう。

 ご苦労だった。

 この労には報うつもりだ」


「はい。ありがとうございます」


そう言ってファレーデン伯爵は鞄を一つ公爵の前に差し出して机の上に置いた。

黒革の長方形の鞄には多くの書類と帳簿、そしてクロフォード公爵の行動が逐一明記された書面が大量に入れられていた。


「まあ。今の所は十分だ。

 後は機会とタイミングだ」


「わかりました。

 では私はあまり長いもよろしくないので。

 これで失礼します」


そう言ってファレーデン伯爵は邸宅を去って行った。


「さてどうしたものか?」


証拠は手にいれたものの。

上皇王陛下が絡んでいるとは想定外だった。

一番良いのは皇王陛下一人を担ぎ上げ王位を独占させるのがよいが、病床にある以上望めない。

下手に動くと逆に反乱の意図ありと逆賊にされかねない。


別の悩みに今はまだ答えが出ないでいる。




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