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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目のニ人 政治犯を開放せよⅥ!

フェレ皇国の監獄を襲撃したヴィルヘルム達救出には成功するも脱出時に監獄の兵士に捕まり絶体絶命?

しかしディナス家の弓矢隊と騎馬隊の援軍を受けて善戦しヴィルヘルムの勝利に終わった。

司令官の手りゅう弾による自爆行為で、ヴィルヘルム達は無事なのか?


リライディナは囚人達を匿う為に大木近くにいた。

その影に隠れていたが、大木は爆破の炎でみるみるうちに焼け焦げ煙を上げている。


焼ける感覚と煙が喉に入りせき込んでしまう。

しかし火傷を負う事はなかった。


「さあ場所を変えましょう」


そう言って囚人達と共に燃えてない森の入り口に誘導するし難を免れる。

辺りはようやく止んだ雨。

しかしまだ空気は湿気を多く含んでもったりと重い。

その中に燃えた匂いと血の匂いが混じり合って不快だ。


ヴォルはギャバンの応急処置をして張り付いている。


「ヴォル!

 ヴィルを探すわ」


「姫様了解」


ヴォルは汗だくになりながら意識のないギャバンの胸を押してはひたすら心臓マッサージをする手を決して止めずに答える。


リライディナは戦場を見渡すも、倒れた兵士やもはや人の形をしていない司令官の残骸、そして負傷している兵士、捕虜も犠牲になりまるで焼けたダミー人形の様に横たわっている。


人間の焼ける匂いに吐き気がこみあげてくるがそれどころではない。

その旨に嫌な予感が芽生え、打ち消そうとしようとするも何度も何度も不安は押し寄せ、必死にその姿を追い求める。


こんなに会いたい。

顔を見て安心したいと思った事はなかった。

というか常に隣にいるのが当たりまえ過ぎたのだ。

そんなことを考える隙もないほどに。

息を切らせて先ほどまでの戦場を見渡す。



一方ギャバンはヴォルが応急処置をしていたが意識はなく身体はぐったりとして微動だにしていない。

まるで死んでいるように。

その光景にぞっとするもリライディナはキョロキョロしてヴィルヘルムの姿を探す。


その時だ。

リライディナの視野に丁度吊り橋の傍に先ほどまで生きているかの様に動いていたヴィルヘルムの剣がぽつんと落ちている。


「剣?

 なんで剣だけ?

 ヴィルは?」


フラフラしながらその剣を拾い上げ、じっと剣先を見る。その先には吊り橋のかかった小川だ。

なんだか無性に嫌な気がして慌てて崖から下を眺めた。


その小川は両側が崖になっていて、岩を這う様に低い小木が生えている。

小川は雨の影響で色が黄土色に濁り、激流となっていた。

茫然とその光景を見ながらもリライディナは嫌な予測をせざるを得なかった。


まさか??


ふっと手前の崖の小木に目をやると。

ヴィルヘルムが着ていた藍色の上着の生地が風に煽られていた。


「ヴィル!!」


リライディナは察したヴィルヘルムがさっきの爆音で、足を踏み外して小川に落下したのだと。


「ヴィル!ヴィル!ヴィル~~~~!!」


リライディナの様子に異変を感じヴォルが駆け寄る。


「姫様!」


「ヴィルが!ヴィルが…落ちた!

 きっと落ちたんだ。

 早く助けなきゃ!!」


リライディナは小川へ身体を投げ出そうとして崖に突進しようとした。


 「姫様!」

ヴォルががっちりリライディナを後ろから羽交い絞めにする。 

 「姫様!

  ディナス家の全員で捜索します。

  丁度嵐も去り、もう少しで太陽が登ります。

  まずは囚人達とギャバンとそれとアンリエットを宿に。

  医者の手配はしています。

  姫様!!」


その時だ。

四方の空に赤い煙が突如立ち上った。


「監獄すべてで作戦成功ですね姫様」


ヴォルが伝えるもリライディナはそれどころではない。


あまりの衝撃で血の気がすっと引いて何も考える事が出来ず、膝から滑り落ちてしまう。

ヴォルはその細い肩を父の様に愛情をこめて抱きしめた。 


「姫様!

 私達が殿下を探します。

 必ず生きて姫様の前にお連れします」


ヴォルの強い声でリライディナの意識は戻る。


我にかえったリライディナはふっと息を呑み。

苦しそうに吐き出すように告げた。


「そうだよ。

 ディナス家は助けるヴィルを……」


その言葉が合図の様にして太陽がその姿を空に覗かせた。


まずは一刻もここを去らなくてはいけない。

ヴィルヘルムもあの濁流にのまれたなら下流に流されたはず。


「では撤退する!

 皆急いで宿に戻る。

 私とヴォル、そしてディナス家騎馬隊は別行動をしてヴィルを捜索!!」


高らかに宣言する。

先ほどまで動揺しているリライディナはいない。



*********************************************


ヴォルとリライディナそしてディナス家の騎馬隊以外は全員宿へと帰っていった。


宿は忙しさに天手古舞だ。

宿には医者と看護師、そして下働きの使用人が多く集められテキパキと仕事をしている。

ディアナは献身的に世話をやいている。

囚人達は手厚い介護を受けながらようやく衛生的で健康的な生活の始まるを心から安心していた。


あのルシファルという囚人をアンリエットが世話を焼いている。


実は皇室に監禁されていたのがこのルシファルだった。

婚約者を拉致され脅迫されスパイをしていたのだ。

郊外の屋敷に監禁していると教えられていたので、まさかこの監獄にいるとは思わなかったのだ。

実に一年ぶりの再会だった。


痩せ衰えたその姿にアンリエットは心が痛む。

たまたま留学先で知り合った青年がルシファルで、当時はフェレ皇国の高位貴族だった。

身分を偽り出国した先で出会ったのだ。

二人は両親を説得し何とかルシファルが亡命し親族の養子になる事を条件に婚約にこぎつけた。

しかしルシファルはフェレ皇国の改革派貴族という事もあり宮廷から目をつけられて逮捕されてしまう。

そこで婚約者の存在を知り、アンリエットに接触してスパイをさせていたのだ。


「…僕の為に。すまない」


アンリエットは涙を止める事が出来ない。

いつになったら会えるのか?

狂うのではないかと思うほど再会を切望していた。

やっと会えたのだ。


「貴方のせいではありません。

 それほど私は貴方を愛しているのです。

 だからこれからも貴方は私の傍にいてください。

 2人で共に重荷を背負ってください」


涙に咽ながらそう言ってその細い痩せた背を抱きしめた。


ルシファルは何度も何度も頷いて彼女を抱きしめた。

Ⅰ年ぶりに。

二人の心に温かい風が広がる。本当に久しぶりの暖かな温もりだった。


「後はヴィルヘルム殿の」


ルシファルはそう言ってアンリエットの頬を両手で覆い言った。


「彼に謝罪しよう。

 それとリライディナ皇女殿下にも。

 君の罪は僕の罪だから」


アンリエットは大きく頷いた。

皇女殿下が許してくれたならこの命に懸けてこれからは皇女殿下に奉仕すると強い決意を二人で結んだのだ。


その頃、小川沿いを下流に向けてリライディナ達は用心深く下って行った。


嵐はおさまったものの、小川は大量の水を蓄えてまだ勢いはおとろえていない。

リライディナは時折大木が漂流してきては、ヴィルヘルムにぶつかりはしていないか冷や冷やしている。

下流にむけて半分くらい下った所で小川は広い川岸に出てきた。

それなりに広い。砂利と小石が点在した川岸だが、小川の深さはそれほどではなかった。


もしかしたら?

ディナス家の騎馬隊は歩みを止め、馬から降りてこの川岸を捜索する事にした。


「上流よりも深水が浅い。

 それに流れも緩やかだ」


ヴォルがそう呟くと全員で捜索を開始する。

大きな岩陰の後ろを確認したり、大きな流木の後ろ、反対側の崖の下、川底ありとあらゆる場所を必死で探している。


リライディナも疲れも、水に濡れる事も厭わずに川に入る。

確かに深さはないし、流れも緩やかだ。

あの細い小川が急に大きな川へと変化した場所だった。


ヴィル……。

リナイディナは僅かな希望を胸に反対の崖に出てみる。

そこはフェレ皇国では珍しいマングローブの森になっていた。

行く手を阻む様に森は続いている。


でも……もしかしたら引っかかってないか?この森がヴィルを……。


リライディナは何度も何度の気になっているマングローブの森を瞳がすり減るほど眺めてその姿を探した。


何度も何度も角度や場所を変えながら。


必死に………。


すると自分の腿になにかが当たった。

ふと下を見ると。


見た記憶のある革製の胸当てだった。

鹿皮の弓を引く時にあの狩りの時にしていた!!


あっ!!


そうヴィルの胸当てだ。


「ヴィル!!」

その胸当ての流れてきた方に視線を向けると。


「ヴィル!!」

大声で叫んだ。


マングローブの木に仰向けで失神しているヴィルヘルムをようやく発見出来たのだ。


「ヴォル!!

 来てヴォル!!

 ヴィルがヴィルが!!」


ようやく発見出来たヴィルヘルムをヴォルが丁寧にマングローブの木から外して抱える。

どうやら息はしているようだった。

浅くはあったけれどもリライディナは安心した様に涙が頬を伝う。


ようやくヴィルが!!


ヴォルは川岸に大きな布を敷いてヴィルヘルムを寝かしては心臓マッサージを始めた。

後ろからリライディナは叫び始めた。


「ヴィル!ヴィル!ヴィル」


ヴィルヘルムは無意識の中誰かだ呼んでいるような気がするが意識は混濁している。

真っ黒な世界で誰かの声だけが聞こえてくる。

その方向には段々とグレーになり、白くなっていき、瞳を開けていられないほどの光が射しこんでも眩しいほどだった。


うっすらと瞳が開く。


その瞳に大男と一人の娘が目に入る。


「うっ!!」


意識が戻りと同時に身体のいたる所が傷んだ。

そして目の前には涙にむせんだ娘が叫んでる。

しかも突然自分を抱きしめ出した。

ヴィルヘルムは軽いパニックを起こしそうになる。


ようやく声を出せそうに思えて、その赤紫の唇が動く。

開口一番放った一言はここにいる全員を混乱させる言葉だった。


「あ……貴方方は?……

 あの………?どうして……」


リライディナは絶句するまさかヴィルヘルムがそんな言葉を問うとは思ってもみなかったからだ。







次回記憶をなくしたヴィルヘルムにリライディナとの関係に変化が?

ギャバンは?

ヴィルヘルムの記憶が……?

そして新たなフェレ宮廷を揺るがす事件が勃発する。


そして次回新展開!

そして次の章へと続く!!

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