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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目のニ人 政治犯を開放せよⅣ!

ここにいる政治犯達を解放して、民意の指示と革命軍のリーダーを救うためにヴィルヘルム達は政治犯の収容されている監獄に深夜侵入した。



監獄に収容されていた囚人は全員で20名だった。

他の監獄と違い投獄者は全員反皇室派の貴族であり、かつ革命軍に身を投じそれなりの影響力のある人物。

そのため皇国は民生の声を気にして即処刑出来ず、限られた者のみの収監だったのでそれほど多くない。

つまりこの20名の為にこれだけの監獄に収容していた事実はいかに彼らが重要人物なのかを物語っていた。


地下牢から出たヴィルヘルム達は息を切らせながら囚人達を伴いそのまま北側の裏門へと予定通り進む。

頬を打つ風も雨も到着時よりもずいぶんましになっている。

それは嵐が過ぎてきているという現象でもある。


早くここから脱出して安全な場所に移動しなくてはいけない。

ヴィルヘルムの心臓の鼓動は激しく波打ちながらも冷静にならないといけないとも気持ちが交錯する・


「さあ行こう!

 北門まですぐだ」


北門の傍に早馬と馬車を数台待たせて待機させているのだ。


足早に北側にある巨大な壁へと向かった。

ヴィルヘルムはようやく脱出計画の成功を確信しつつあった。

通用門なのか正面の巨大な鉄の扉とは違い、古びた木の扉は背を低くしないと通れない小さな出入り口だ。


「殿下!

 このミッションが終わったら。

 いい葡萄酒をごちそうしてください」


ヴォルがもう任務完了とばかりに満面の笑いでヴィルヘルムに聞いた。


「ヴォル!

 まだ仕事は終えていないんだよ」


思わずリライディナが諫める。


「まあまあぁ…そうだねヴォル。

 いいのをご馳走するよ」


「きっとですよ!!殿下」


ヴォルが振り向いて真剣な表情をした後、顔を正面に向けて僅かに扉を開いて片目で辺りの様子を確認する。


薄暗い監獄の渡り橋の先には静まり切った森が深く広がっていた。

どうやら乾燥にも強いといわれるボッシュ林の森林地帯のようで人の気配も感じなかった。


「行きましょう殿下」


ヴォルが扉を押してゆっくりと外へと身体を押し出す。

キョロキョロと様子を伺うも人影らしきものは見えないし気配すら感じない。

その森へ目の前の吊り橋を渡ればすぐだ。

監獄の北側に侵入者を拒絶するかのように細いが急流で深さがありそうな小川が流れている。


ヴィルヘルム、リライディナ、そしてギャバン、囚人達が橋を渡り始める。

橋板は古く所々ささくれだって板が欠けている箇所もあるが朽ちるほどではない。

ギシギシと嫌な摩擦音が鳴り響く中で全員が吊り橋を渡りきりようやく監獄を脱出したその時だ。


ガシャ!!ガシャガシャ

キーキィーキーキィキー!!


皆その音のする方向に身体を反射的に振り返る。


その瞳に吊り橋が激しい軋む音と共に上がっていく映像が飛び込んできた。

ヴィルヘルムはあげられる橋を茫然と眺めながら自分の目を疑った。

看守も警備兵も夢の中なはずだったからだ。


「誰が?

 やられた!」

ヴィルヘルムが思わず放った後、森の中から何やら気配がしかもその数は相当数感じられた。


歩いて来た後方高い門の頭上にはどう見ても警備兵がヴィルヘルム達を狙う弓矢隊の存在が確認できる。


「クッ!!」


ヴィルヘルムは歯ぎしりをして全身が震えこれから起こる事態を何とか抜ける方法を探す為あらゆる思考をかき乱す。


「革命軍の諸君!観念ください」

森の中から男の低い声が聞こえてきた。


そこには男の影だろうか?浮かんだと思ったら、その影の両側に多くの人影が突然現れた。


「しまった!罠か?」

ヴィルヘルム達は手に剣を持ち格闘の準備を始める。

しかし多勢しかも頭上からは弓矢隊の矢が射程圏内でヴィルヘルム達を狙って照準を合わせ今にも発射しそうだった。


「ここまでよく侵入できましたね。

 貴方達が初めてですよ。

 この監獄が出来てから出口まで脱出出来たのは。

 私達の協力者がいなければ完全にしてやられていました」


そう言った男の姿がようやくヴィルヘルム達にも確認できた。


背が異常に高く、筋肉質な身体。

いかにも高位武官おそらく皇室の幹部司令官だろうと思われる。

その鋭い視線は刃の如くヴィルヘルム達を軽蔑した眼差しで捕らえている。


「協力者?」

ヴィルヘルムは男の言った一言を口にする。


「ええ。

 そうですよ。

 貴方達の行動、計画の全てを我々に教えてくれた。

 彼女の……」


 彼女?


そう言うとその男の右側には小さな影が現れる。


男はニンマリ微笑んで隣のその影をヴィルヘルム達のいる方へ寄る様に前へ押し出した。


「アンリエット??」


リライディナは彼女の名を呼ぶと岩の様に微動だにせずその場に立ち尽くした。


「リラ……様 すみません……。すみません。

 私には………私にはこう………するしか…」


アンリエットは青白い顔で全身を震わせヴィルヘルム達の顔を見る事が出来ず項垂れていた。

後悔と謝罪でまともに見れないのだ。


「どうして??アン……」


リライディナは信じられないとばかりに瞳は大きく見開いてアンリエットを凝視している。

今まで信頼し合っていたと思っていた。

侍女ではあったが、ファルキア公国の貴族令嬢だ。

そんな彼女が何故?

リライディナには見当もつかない。



その時だ突然。


「アンリエット!!」

誰かがアンリエットの名を叫んだ。


アンリエットは聞き覚えのある声なのか。

その落とした目線を即座にその声の方へと向けた。

ハッとした後。


その顔には信じられないといわんばかりの驚きが見て取れた。


「ルシファル?」

アンリエットの震えながらも絞り出すような声でその名を口にし震えながら涙を流す。




その名を呼んだのはヴィルヘルムが助けて脱出させた人物だ。


「何故君がここに?」


「嘘?何故ここに?

 聞いてないわ!

 どうして??何故?」





司令官は彼らの様子など無視をして言い放った。


「さあ!

 反逆者並びに侵入者を捕獲しろ!!」


一斉に草むらに隠れていた多くの兵士が現れて武器を持ちヴィルヘルム達へと突進してくる。


兵士が飛び掛かろうとしたその時だ。


どこからか空を切る甲高い音がそこら中に響き渡った。


皆反射的にその音の方向へと顔をあげる。


シュ!シュシュ!! シュシュシュシュ!!


シュシュ!!


シュシュシュ!!


「ウッ!」


「グワッ!」


「ウッ」


「ンン!!」


ドン!


ドン!ドン!!


ドンドン!!


飛び掛かろうとした兵士達が幾重にも重なりながら巨体を地面へと落下していくのだ。


監獄の頭上の弓矢隊も不意打ちの弓矢に打たれ空へ落ちていく。


ドンドンドン!


ドン!


ドン!ドン!ドン!


ドン!


ドン!



高い門の上から黒い物体が落下した後鈍い音がいくつも鳴り始めた。


「ディナス家弓矢隊参戦」


ヴォルが得意げに冷たい空に叫ぶ。


得意げに敵兵の陣へと突風の如く走り抜く。


兵士達の剣をまるでおもちゃのそれのように力で払いのける。


空に回転しながら剣が舞う。


無防備になった兵士の急所を一突き。


ヴォルは得意義にまさに軍神の様暴れまくり、むかってくる兵士達を容赦なくなぎ倒していく。

まるで木を伐採している光景の如くだ。



その空が少しずつ藍色、青色へと変化してきた頃、少しずつ光景がぼんやりと浮かんできた。


「あっ!ボッシュ林の頭上に!」

リライディナが叫んだ時その方向に木々の先端にあった枝の上に自動弓矢器部隊の兵士が見えたのだ。


ボッシュ林の枝は上層部が枝の群生になっており、数名の人間が登る事も出来るのだ。


ヴォルがリライディアに叫んだ。


「作戦勝ちですね。

 殿下!妃殿下!

 さあ行きますか?」



「負けていられるか!」

 リラ!

 救出者を頼む!」


ヴィルヘルムも燃え盛る炎の様に風と一つになりその後を追う。


「ええ」

リナイディナはまだ負傷した囚人達を背後に守り兵士達と剣を交える。


兵士は相手が女性だろうと関係ないといわんばかりにリライディナを切りつけ襲い掛かる。


キーン!!!

交わる高い金属音が空を切る。


リライディナは素早く軽やかにその剣を左右に振る。


相手はリライディナの速度におっつかない。


力任せに剣を振るもリライディナの軽やかで舞でも踊っているような剣裁きに翻弄されている。



兵士の力をまともに食らわせず、左右にまるで手元で遊んでるかのように。


軽やかに空を舞っては相手の懐に入りその急所を突き刺して絶命させる。


そしてまた新しい敵兵が襲い掛かるも、顔色一つかえずに向かえ打つ。

次の敵兵は始めこそ得意げに力でねじ伏せようとむかってくるがすぐに後悔する事になる。


肩で息をしながら一撃も出来ない。


リライディナは相手の体格には及ばないがそのスピードで凌駕していた。


兵士が一振りさせる隙も与えずに懐に滑り込んで心臓を一突きしていく。


まさに目に見えない相手と戦っているように兵士達は段々志気が低下して、リライディナに立ち向かおうとせず一定の距離をよったまま牽制している。


ヴィルヘルムも自分よりも体格のよい兵士を相手に全勝している。


相手の剣を跳ね返す。


副司令官らしき高位軍人を見つけ交戦する。

バランスを失った時、その兵士の肩を足で蹴り身体を反転させて背後から心臓を一突き。


ドサッ!!


相手は何が起こったのかわからないほど、気がつけば地に崩れ絶命した。


別の将校が大きく鋭いヴィルヘルムの剣は相手のそれを封じながら剣を空へと弾いていった。


無防備になった兵士を柄で殴り失神させていく。

一見簡単そうで戦場では実は殺さない選択が一番難しい。

情報収集の為に捕虜としたのだ。


ディナス家の騎馬隊も到着し、数の上でもヴィルヘルム達が断然優位だった。


司令官は次々倒れていく部下に手をこまねいてみている事しかできない。


もはや自分も参戦しなくてはいけなくなったのだ。


「やれ!!」


司令官が腹の底からありったけの声で段々広がっていく白い空へ向けて声を張り上げながらヴィルヘルムに突進しながら叫ぶ。


「何をしている!!

 御前の任務を忘れたか!!」


誰かに向かって激しく責め立てた。






突然の予期しない展開にヴィルヘルム達はどうなるのか?

無事にこの危機を乗り越える事が出来るのか?


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