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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目のニ人 政治犯を開放せよ!Ⅱ

監獄に囚われた政治犯達を脱獄させるために出発したヴィルヘルム達を待ち受けるものは?

無事に計画は成功するのか?

4カ所ある監獄は皇都にある東西南北の角に位置し、距離的に作戦を同時実行するには各監獄の詳細なスケジュールと人の把握、人員の動きをそれぞれ把握しなくてはいけなかった。


ゆえにて厳密な計画と適切な時期、時間を厳選しなくてはならず、郊外に待機させていた軍事物資も各部隊に行き渡り、実行までに8カ月を要しようやくヴィルヘルム達が動き始める。


そう遂に決行日がやって来たのだ。


ヴィルヘルムは皇宮に近いシュラン監獄を選択し、リライディナとヴォル、ギャバンに少数の精鋭部隊で移動する。

北部監獄は丁度乾燥に強い木が多く群生しており、兵器は秘密裏に隠す事が出来、作戦が首尾よくいった後の逃走にも十分な備えを組んでいた。


嵐の夜は誰も外には出てこない。

いわば無人の首都を堂々と闊歩出来る。

しかしそれは中心街の言える事だ。

牢獄が近くなると高い塔からの監視にさらされるのは間違いない。

ただしこの天候だ人の目にも限られ、多少の目立つ行為も隠してはくれるだろう。


吹き付ける雨風にさらされ、気温も低くさらに風に乗って小さな浮遊物が頬を叩き不快さはピークに達する。

しかしそんな素振りも見せずに皆馬の速度を緩めもせずに暴風に挑む様に進んでいく。


けれどさすがに時間は限られている。

朝になれば嵐はおさまっているだろうから、全てを終える余裕はそうない。


ヴィルヘルムは今回の作戦はいままでフェレイデン皇軍で立てた作戦の中でも難易度の高いリスキーなものだと自覚していた。

だからこそ下準備には相当の月日を積んだのだ。


一番重要だったのは監獄内の把握だった。 

潜伏者は今回の様な危険な任務では手慣れた者を派遣するのが定石だが、今回はそれすら警戒される危険が高かった。

あえて事情を知らない人物で警戒心の緩む老人か若い者を選択したのだった。


そんな場所に幼いディアナが行くといった時は反対したものの、あの子ほど適した子はいなかったと今では考えている。


後はあの子の勇気に応えないと。


しばらく走り続けると辺りは段々と人里を離れ始め荒れた土地が水平線に広がった先に突然現れた緑の一色の先に黒い人工物の建物の外壁が現れ始めた。


馬は進路を左に取り、あえて建物を避け大きく迂回し緑へと投入して行った。




*********************************************



丁度監獄の真下に当たる場所は木々に覆われ、自分達の姿を完全に隠してくれている。

まず監獄への接近はひとまず成功したようだ。

ようやくヴィルヘルム達は馬の歩みを止めてゆっくりと場上から降りた。


バシャ!

ぬかるんだ地面は久方ぶりの雨に驚きでもしているように頑なに拒んでいる。


「さあ。ディアナが待ってる」


風に煽られて雨が頰を打ちつける。

さっきまで荒々しく鞭をうち馬を走らせていたから身体の熱のせいで気づかなかった。

この冷たい雨を。

その場にいる者の身体の熱をあっと言う間に奪っていった。


「ディアナには南門の扉を開けて待機するように言ってある」

ギャバンがヴィルヘルムを見ながらその門へと誘導するように言った。


ヴィルヘルムはさすがのギャバンも緊張しているのかと納得しながら後ろに続く。

黒い高い監獄の壁は天高くそびえ立ち、立ち向かう者を無言で屈服させようとさえ思える。


ふっと息を吐きヴィルヘルムは隣のリライディナを守る様に肩を抱き寄せながらも実は動揺していた。

ヴィルヘルムは激しい戦場で戦略を立てる為に軍に同行していた。

いつもどのような戦略も冷静に忠実に戦略を実行に移してきた。

しかし今回は自分でも完璧だと自負してはいるものの、心の奥底でなにかがふつふつと湧き上がる不安それがなんなのか見当もつかない。


今は計画通り実施しないといけないとは十分に承知していた。


ふと肩を並べて隣にいるリライディナに目をやると、孤高の魂がその光を輝かせた様な瞳に吸い込まれそうになる感覚に陥った。

自分は第二皇子、いわば高貴なスペアだ。

兄の皇太子に何かがあったり、兄の家系が途絶えた際の備えだという自覚の為か。

政治的に介入しようとはしてこなかった。

政治に感心がないというのではなく、へたに介入し余計な皇位継承に波風を立てたくなかった。

オルファン皇家の結束は強かったから、そうなっても問題はなかったが。


やはり今のままの僕ではいけない。

僕は王配になるのだ。

この国の…リラの隣に相応しい…人に…。



「ヴィル?」


ふっとリライディナの声が耳をつく。

我にかえるともう門の前に着いていた。僅かに開いた扉にディアナの姿が見える。

少し寒さで震えているようだった。


「ディアナ!

 無事でよかった。

 後は僕達が。

 副隊長に宿まで送らせるよ」


ディアナは皆の顔を久しぶりに見れたので、安心したようににこりと微笑んだ。


「ありがとう殿下。

 成功を願っています。

 待っています。

 それとこれを殿下と妃殿下に」


そう言うと胸のポケットから金色の小さなプレートを取り出した。


「えっ?」

ヴィルヘルムはディアナの小さな手から差し出されたプレートを不思議そうに見つめた。


「母がこれを胸に当てていなさいと。

 別れる直前に渡されたのです。

 護符のような物だと言っていました。

 是非お二人に身につけてほしいの」


「そんな大切な物…」


ディアナは力強い瞳を向けながら、大きく首を振った。


「計画が成功したら返してくれたらいいの」


「わかったわディアナ」


リライディナはディアナの頰を優しく撫でて、そのプレートを受け取り胸ポケットの中に収めた。


ヴィルヘルムも同じ様に胸ポケットに収めて、柔らかな微笑みと同時にディアナの頭を撫でた。



「じゃあ行こうか」


ディアナと副隊長を残し、監獄の闇の中へ消えていった。






ディアナが役割を終えて護衛に連れられてヴィルヘルム達と替わるように監獄から宿に帰る。

さあ遂に脱出計画が始まる。

次回計画は成功するのか?

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