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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目のニ人 政治犯を開放せよ!

シャハルバード共和国との取引の売り上げを皇都に輸送する途中の輸送隊を襲撃して略奪に成功したヴィルヘルム達。

今後どう動きフェレ皇国を揺れ動かすのか?

「略奪したのは全部砂金だったよ。

 成型してフェレイデン同盟国に必要品の調達に

 使っては?

 軍事品は全て揃っているし。

 追加費用も準備出来ている。

 貧困層への支援や施設の建設と維持費に用立てよう。

 かなりの額だ。

 きっと賄賂にでも使うつもりだったんだろう」


フランシスは準備万端といわんばかり腕組しながら得意げに砂金の袋を手に提案する。


ヴィルヘルムは思わず苦笑しながらもさすが叔母の片腕だと言わんばかりに肩を叩いて微笑んでいる。


「流石クリスティア商団の片腕だけはある。

 いつも仕事が早いね」


「でっ!

 次は何をするんだ?」


リライディナはヴィルヘルムを食い入るようにギラギラした瞳で問う姿に、心の奥がぎゅっと握られたような感覚にドギマギしてしまう。

可愛いのだ。

理由はない。

ただ無条件で愛らしい。

その純さがにぶさだとおもいながらも。


「リラ。

 次は……ね。

 革命軍の重要人物の救出しよう。

 彼らを救い出しまずは革命軍の陣を厚くして組織として固めないと。

 まずはアレクサンドル達と打合せをしないと。

 今度の計画は緻密に。

 狂いなく行う必要がある。

 まぁ楽しみにして」


「まかしてくださいな両殿下。

 私が蹴散らしてみせましょう」


ヴォルは今にも剣を振るいそうな荒い息使いで意気込む。


「ヴォル。

 程々にね」

リライディナは先走り気味のヴォルを心配した。


「なぁ!ギャバン…」


ヴォルに問いかけられたギャバンは心ここにあらずといった様子で、ぼんやりしてしまって言葉に詰まる。


「ああっ…」


心ここにあらずの様子でそう言うのが精一杯だ。


ギャバンは昨夜の皇宮から秘密裏に届いた伝書鳩の伝令を受け取っていたからだ。


何が書かれているかは明白だ。

ギャバンの心は冬の木枯らしのそれが吹き荒れ、肯定と否定の意志が代わる代わる襲ってきては揺れ動いていた。

家族の為に彼らを裏切りそして破滅させるか?

家族を犠牲にしても彼らを守るのか?


昨晩はまったく眠れなかった。

そして今もその答えは出ていない。

その時のその瞬間には出るかもしれない。

もう自分の意志ではどうにもならないとあきらめの気持ちと、死を覚悟してその日を待つ事しか思いつかないでいた。



その日からヴィルヘルム達は忙しい日々を過ごしていた。

郊外に待機させていた兵器を調達し、アレクサンドル達との当日の行動と打ち合わせと実行のための行動を着々と始めていった。



****************************************





日差しが監獄の奥深くにまで差し込んで黄色い土塀と乾いた土を容赦なく照り付ける。

それでいて雨季である湿気があり、蒸し蒸しして立っているだけで汗ばむそんな季節を迎えていた。

その監獄の中庭で小さな男の子が両手いっぱいに薪を抱えフラフラしながら近くにいた兵士に叫ぶ。


「ねえ~~。この薪はどこに置いたらいいの?」


監獄の警護兵達はニコニコした笑顔でその様子を眺めながら答えた。


「アンディ!!

 下の調理場に運んでくれ!

 今夜の食調理に必要な薪だ!」


汗だくの薪割をしていた斧を振りかざした汚れた身なりの大男が答えた。


「いいよ!

 わかった」


アンディはやはりフラフラしながらも監獄の中庭に面した小さな半開きになっている扉の奥へと消えていく。


「しかしよく働くな。あの子」


「ああ。ここに父親と一緒に来てもう半年か。

 なんか何年もいる様な気がするね。

 元気だし。

 時々くれる飴玉が今では楽しみだよ」


「あっ。あれね。

 なんでも母親が養蜂をしているって。

 その蜂蜜で飴を自分で作ったんだってね。

 小さな子なのにね」


「あぁ」


しっかりと監獄で生活する場所を何の不自然さもなく溶け込んでいる。


通称アンディはアンドリュー。

実はディアナだ。


アンディと呼ばれたディアナは螺旋階段で地下にある料理場に階段を降りていく。

人が一人通れるくらいの細い階段だ。

その階段を降りながらこの牢獄に来る前にヴィルヘルムを説得した事を思い出していた。


元々ディアナはこの牢獄に潜入する予定ではなかった。自ら名乗り出て牢獄の様子を知らせるスパイに志願したのだ。

勿論ヴィルヘルムは反対し、リライディナも何とか思いとどまらせようと必死になって説得した。

しかし自分だけがのうのうと守られるだけで、何もしないのはどうしてもいやだった。

母を助け、自分にあんなに尽くしてくれた二人の仇をどうしてもとりたかったし、それに他力本願は絶対にいやだった。


何とか一週間を要して二人を説得し、フランシスが安全策を講じ計画的にディアナをシュラン監獄に送ったのだ。


主に政治犯を収容する監獄で、反乱は裁判なしに即処刑フェレ皇国では郊外に4か所あった。

しかし政治的に処刑を行うと人民の反発が避けられないもしくは過度に反乱を助長する際に収容される場合に収容される施設だ。  


刑が確定しているわけではなく、どちらかというと精神的に追い込み、出来れば自傷か自死を選択出来るように追い込む為に陰湿な拷問や取り調べなどが自由に行われていた。


ヴィルヘルム達はフェレ皇都にこのような施設が4か所ある事を知り、それらを同時に陥落させようと計画しているのだ。



アンディーはこの監獄の見取り図や人の配置、人員、兵士以外の人の出入りなど。

細かくヴィルヘルムに定期的に報告をしていたのだ。


「キャサリン料理長!

 薪をここにおいとくね」


「アンディ!!

 ありがとう」


「大した事はないよ。

 そのかわりいつもみたいにこの飴球をクレア伯母さんに渡してあげて。

 叔母さんは喉が悪いから。

 この飴がとてもいいって言うから」


「ああ。クレアもいい甥を持ったね。

 次の買い出しの時に渡しておくよ。」


「ありがとう」


ディアナはそう言ってベージュの麻袋を料理長に手渡し、そそくさと元居た場所に戻っていく。


そうこの飴球はただの蜂蜜の飴だが、その包み紙のうらは二重になっていて間に薄い紙がしまわれているのだ。

その紙は毎回事情の知らない料理長がクレアという女性の家を訪れ、飴を渡していた。

クレアの家の清掃を行う女中がゴミとして出しているが、この清掃員が潜り込んでいたクリスティア商団の団員だった。

彼女は廃棄の前にこの包み紙を確保し間の紙を抜き取りフランシスに渡していたのだ。

その紙を順番に繋げると牢獄の見取り図と情報を読み取る事が出来た。

しかも念には念を入れてレモン汁で書かれていて火にあぶりようやくその内容がわかる様にしていたのだ。


決行日は天候と月の満ち欠けを考え嵐の月のない夜に決行が決められた。





次回章はシャラン監獄の潜入を実行。


上皇王も動き始めて……ヴィルヘルムの作戦は成功するのか?

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