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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目のニ人 政治犯を開放せよ!序章

ヴィルヘルム達はフェレ皇国の貿易で得た利益を輸送隊を攻撃し略奪に成功した。

フェレ皇宮ではクロフォード公爵の召集で大臣朝廷会議が開かれていた。

静かさと闇が支配するフェレ皇国の首都の夜はようやく明けようと群青色の空から蒼色へと変化していった。

その夜明けを見計らったように皇宮からの使者達は各々大臣達の邸宅を訪問するのだった。


大臣達は朝食の席にも座る事も出来ず着替えさえもそこそこに使者にせきたてられて、大臣達は強制的に入宮させられた。

一同が皇宮の第一会議室に揃った。


グランダリア公爵が率いる一派の大臣達はグロフォード公爵の召集に不愉快だと言わんばかりに不機嫌そうな顔を隠そうとはしない。


大臣朝廷会議の召集は宰相たるグロフォード公爵の権限だからだ。

両陣営は向かい合い今にも争い事が起こりそうな気配が匂っている。


グロフォード公爵一派の大臣達は不審げにクロフォード公爵の顔色を窺っている。


「グロフォード公爵!

 こんな朝早くから会議の招集などどういう事だ。

 それ相応の緊急事態なんだろうな!!」


グランダリア公爵はしかめっ面な表情を隠そうとはせず、眼光鋭くグロフォード公爵に悪意に満ちた口火で言葉を発す。


グロフォード公爵は予想していたであろうと言わんばかりの、皮肉交じりの余裕の微笑みでグランダリア公爵を見ながら口を開け始める。


「さて今回大臣方に招集願ったのは。

 フェレ連合の結束強化についてです。

 ご存じの通り現在我が皇国の内乱の頻度が増え続けている。

 今の所治安部隊に鎮静させているが、乱の平定まで至っていない。

 そこでだ。

 連合軍の徴集に同意頂きたくお集まり願った訳だ」


「なに?

 そんな緊急事態でもない理由で呼び出したと?

 戦争でも起こそうというのか?

 グロフォード公爵!!

 我が国に他国の軍隊を従軍させるなど今までのフェレ皇朝ではなかった事だぞ!」


グランダリア公爵は血走った瞳と荒げた声を荒げた。


「…我々の同盟国だ。

 我が領内に他国軍が入国しても問題ないはずだ」


グロフォード公爵はめんどくさいと言わんばかりに吐息に近い溜息と腕を組み始め、指で樫の木の大きな机をたたき始めた。


「だからといって他国の軍を安易に入国させて、影でフェレイデンに寝返った国の軍がいないとは言えない!

 そうなった場合貴殿はどう責任を取るつもりだ!」

さすがに同じ公爵家とはいえグロフォード公爵は宰相だ。

この言動に全員がいろめきたちざわつき始める。

がグランダリア公爵はまっていましまとばかりに責任の所在について激しくグロフォード公爵に詰め寄る手を緩めない。


グロフォード公爵の権力をそぐいい口実が出来た。

こんな機会を利用せずどうする。


攻め立てようと更に両腕を机に乱暴に叩きつけた時だった。


ドンドン!!

荒い扉を叩く音が聞こえる。


「両公爵閣下!

 早馬の緊急を伝える者が入宮しております。

 至急で報告したい事があるとの事。

 会議室に入室を願い、控室に待たせております。

 いかがいたしましょう?

 大変緊急を要する事態が発生したそうです」


警護官の大声が会議室に響き渡る。


大臣達は口口に囁き合い、何が起こったのかと騒ぎ始めた。

グロフォード公爵も音耳に水でまったく予想は出来ない。


「閣下。

 何が起こったのでしょうか?」


シャリーノ侯爵は隣のグロフォード公爵に心配そうに耳打ちする。


「とにかく。

 使者を通せ。

 まずは話を聞こう」


そう言うと警護官が廊下を離れる音がしたかと思うと、唐突に会議室の大きな扉が開く。

重く木の軋む音が何故か良い知らせではないと予感させる。


大臣達の目に飛び込んで来たのは埃だらけで薄汚れ、ゼイゼイと息が上がったどう見ても伝令を伝える兵士しかもかなり下級武官だった。


「大臣閣下方。

 大変です!!

 シャハルバードからの最後の取引の資金が山賊に奪われました。

 隊は全滅。

 資金も全て奪われてしまいました!」


兵士はそう告げると最後の力を振り絞った後だったのか、その場で失神してだらりと床に倒れてしまった。


「閣下。

 あの金がないと他の高位貴族の不安と動揺を抑えるのが困難です……」


シャリーノ侯爵は真っ青な顔でグロフォード公爵の顔を覗き込み震える声でなんとか告げる。


「………」

グロフォード公爵の瞳の焦点は静止し一点を見つめていたかと思うと、みるみるうちに怒りの表情がマグマの様に噴き出してきている。


「……おのれ!!」

拳が激しく震えて眉間に深い皴が刻まれていき、会議室は凍り付く。


それを鼻で笑うグランダリア公爵は満足そうだった。


グランダリア公爵が非難を浴びせようとした瞬間だった。


ギイ〜ィ〜〜。


入り口とは反対側の黄金の扉が突然なんの先ぶれもなく、鈍い音と共にゆっくりと開いたのだ。


一堂はその扉に目線を向ける。

その扉が開く理由を知っているからだ。


会議室に沈黙が支配した空気の中大臣は我に返り一堂席を立ち深く頭を垂れた。

グロフォード公爵が怒りの表情を手放したかと思った後、冬の木漏れ日の様な柔らかな表情に変わる。

軽やかに扉の先に歩み始めた。


「陛下。

 ご無事の復帰おめでとうございます。

 この日をどんなにか待ち浴びた事でしょう」


祝辞を述べて上皇王の白いしなやかな手を取り臣下の礼として口づけた。


上皇王は口元を僅かにあげて公爵の礼に答える。

大きな窓から差し込む日差しからそのベージュの艶やかな肌が、ピンク色の薔薇の花の様な頬がいかにも生気がみなぎるのを感じる。

プックリとした唇は紅をひいてはいるが、病人のそれでは明らかに違った。

美しい髪をアップに結い上げて上皇王の証であるティアラが✨と輝きを増しその存在感を見せつけた。

そう上皇王は静養先で見せていた病的な様子は一切見せず見るからに健康そうだ。


「皆の者。

 心配をかけたな。

 私は大丈夫だ。

 ただ陛下がまだ予断を許さない。

 皆心を一つにして。いがみ合わずにこの国難を乗り切ろうではないか」


しっとりた落ち着いたその声は女性の物にしては低く、それがかえって重厚感が増し威厳に満ちあふれている。


「まずは上皇王陛下に御祝申しあげます。

 我がグランダリアは陛下に忠誠を尽くす所存。

 グロフォード公爵との軋轢はあくまで皇国の行く末を思っての事。

 決して恣意私欲の為ではございません」


「わかっておる。グランダリア公爵。

 そなたは私が起こした皇位奪還運動の際にはいの一番に参戦してくれたではないか。

 グロフォード公爵。

 略奪の件は聞いている。

 申し訳ないが、ここは一旦重要高位貴族をリストアップしてそれらの者に公爵家の私財で補填してもらえないか?

 勿論後に私が責任を持って返還しよう。

 公爵そうしてもらえたら助かるが。」


「陛下の御要望ならば。」


「ありがたい。

 では同盟国軍の召集についてはこれから議論しよう。

 私に一案がある。

 まずは皆解散してかまわない。

 グロフォード公爵。

 相談事がある。

 しばらくここに残っておくように」


「はい上皇王陛下」


グランダリア公爵は訝しくは思いながらも仕方なくその場を去り他の大臣もそれに続く。

皆久しぶりに君主の姿に安心した様子だったがグランダリア公爵だけが得体のしれない何かしらの思惑に心が騒めいていた。

その原因はわからない。ただ直感めいたものだった。



「ファレーデン伯爵。後で我が屋敷にくるように」

そう言い残して皇宮を去った。



その馬車をグロフォード公爵が窓越しにワイングラスを手に眺めている。


「何が見えるのだ?」

上皇王に呼び止められて振り向いた。

すぐ傍に身体が密着する距離で上皇王がいる。

その甘美な身体からは媚薬の様な甘い香水の香りが鼻をくすぐる。

自分を抱きしめよと言葉にしないが、身体がそう言っている様に感じ本能的にそのかぐわしい女体を引き寄せて抱きしめた。


柔らかで豊かな胸元が自分の心臓の音をさらに加速させるのを激しい動悸で知ってもそれを理性で読める事は出来ない。


「陛下!

 私の陛下」


「……予定通りに」

上皇王は公爵の腕の中で甘く囁いた。


「えぇ陛下」





クロフォード公爵と上皇王の謎の会話は?

次回ヴィルヘルム達の次の作戦が始まる。


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