表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/117

外伝【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目の二人 資金源を断てⅢ

荷馬車を攻撃したヴィルヘルム達はどう攻撃していくのか?

荷馬車襲撃は成功するのか?


ザッ!ザザッザ!


何かが擦れる音の後に空を飛ぶ黒い物体が突然目の前をよぎる。


「ひぁ〜」

 

傷の男は声にならない驚嘆した霞んだ叫び声を出し、打撲の痛さも忘れ一目散にどこかへと逃げ出す。


「おい」

御者が呼びかけようとするが、その前にその黒い物体はすっと大きくなり目の前を遮った。

大男だ。

剣を身構えて獲物を狙ってにんまりと不敵に笑うヴォルだ。


「観念しな。

 警護兵もすぐに降伏するさ」


そう言って太陽の光を浴びた巨大な剣先を御者の喉元に突きつける。


御者のこめかみに冷や汗がたらりと落ちそれは頰を伝う。


ごくりと生唾を飲みみながらも恐怖に苛まれながらも見える範囲で、わずかに周りに目線を向けるとすでに襲撃者と警備兵の交戦は始まっていた。


「これまでか」

御者は深い溜息を吐いた後、震える手でゆっくり懐の上着を開けた。

ヴォルの瞳に護身用の小型拳銃が映る。


元々威嚇する為に用意した物に過ぎなかったので大した量の玉を持っていないし、威力も最小限で相手を負傷させれる程度の短銃だ。


抵抗するだけ身に危険だと判断したのだ。

観念したのを見計らいヴォルはあっという間に縄で御者を拘束した。

まだ誰もいない馬の繋がれていない荷馬車に押し込め自身は戦いの輪に風の様に入って行った。


御者は抵抗せずに荷馬車の後方に身体を小さくさせて恐る恐る隙間から戦闘を眺めることにした。

勿論状況によっては反撃出来る機会を伺っての事だ。


呼吸さえ押し殺して目線さえ外さずに見ていたのは警護隊長と若い男の戦いだった。

体格の良い鍛え抜いた肉体を持ち、一目で戦闘に長けた人物と認識していた。

警護隊とはあまり接点を持っていなかったが彼らの接し方で人望もあるように見えた。


その彼が明らかに推されている。


その若い。

おそらくまだ十代だろう。

軽やかに彼を翻弄していた。


「誰だあれは?」

ぼそりと呟いた。


日差しを背に受けながらヴィルヘルムは自分よりも二倍近くはあるだろう体格の良い甲冑を身に纏った男に剣を振りかざす。

男は逆光でヴィルヘルムの剣を受けるのが精一杯で手元が不安定だ。


シュ!!


風が空を切っ裂く。


相手も男は寸前の所で身をかわすも僅かに甲冑の肩が触れる。


ガシャ!!


鈍い金属音が響くが、そこかしこで聞こえる剣や叫び声でかき消される。


「なかなかやるね」

ヴィルヘルムは子供の頃の遊びの様に嬉しそうに警護隊長を挑発する。


「クッ……」


何度も剣を交えるもこんなに小柄で細い少年の身体を持つ者の剣とは思えないほど、重く両手がジンジンと痺れる感じに酷く動揺してまったく自分の思うように剣が振れない。

ヴィルヘルムの風で空を切るような素早い動きについていけないのだ。


「ヤッ!!」


ガシャ!ガシャ!!

ヴィルヘルムの剣先が警護隊長の手元を狙う。


ガシャ!ガシャ!!


大きく縦にヴィルヘルムは力強く天に向けて振り上げた。


「痛っ!!」

その隊長の声と同時に警護隊長の剣が青い空にプロペラの様に上昇していった。


警護隊長の腕から一筋の血がたらりと落ちたっきり動かなくなった。

しばしの沈黙の後隊長はその場に膝から倒れ込んだ。

どんな戦場でも武器のない戦は敗戦確実なのは痛いほど知っていた。


「もう観念したほうがいいですよ。

 ほら後ろ貴方が守るべき荷馬車の隊はすでに白旗をあげて降伏しました。

 命まではとりませんが。

 拘束させていただきますね」


にっこりと微笑んだヴィルヘルムは涼し気な顔立ちで穏やかに微笑む。

さっきまで交戦していたのを覚えていないようなヴィルヘルムのその風貌に警護隊長はぽかっんと口が閉じない。


よく見ると爽やかで高貴な顔立ちをしている。

そうどこかの皇族か王族か相当な身分の威厳も備わっている。

自分が交戦した相手はとんでもない人物かもしれない。

真っ青になって頭を抱え込んだ。


「そろそろいいですよ。

 ジョン!」


ヴィルヘルムが誰もいない枯れた草の茂みにそう呼びかけた。

ガサガサと警護隊長は見に覚えのある男が出てきた。

傷の男だ。


斜め後ろからリライディアも警護するように緊張した面持ちで現れる。


「お前?

 どういうことだ?」


警護隊長は自分の見ている現実が受け入れられなかった。

さっきまで隣にいた傷の男、そして襲撃された時に逃げた人物が目の前にいるのだ。


ヴィルヘルムはさらに笑顔で警護隊長に言った。


「ここにいるのだからわかるだろう。

 彼は自分と家族の保護と落ち着いた生活と引き換えに我らと取引したんだ。

 君も無駄な戦いはやめたほうがいい。

 命あってのって言うだろう?

 このまま拘束して私達の計画が成功した際には解放しよう。

 それまではこちらの用意した収容所に行ってもらう」


「…………」


「もう沢山がこんな生活!

 嫌な仕事をしないと生活できない。

 借金だらけ。

 子供達は飯も食えない!

 いいじゃないか!!

 俺は悪くない!」


ジョンと呼ばれた傷の男は悪びれた様子もなく激しく言葉を警護隊長に投げかけた。


警護隊長はジョンを睨みながら軽蔑した眼差しを向けた後、項垂れた様に頭をじっと下げている。


震えが止まらない両手で頭を抱えたと思ったら、ふいうちに低い姿勢のまま突然あっという間にジョンの隣にいたリライディアの背後に廻った。


「ウッ!!」

ヴィルヘルムが確認した時には警護隊長の手はリライディナの首をしっかり絞めつけた。


その細い首を屈強な男が絞めるのは造作もないだろう。

しかもその左手には鋭利な短剣を固く握りしめ今にもリライディナの心臓を突き刺さんばかりに剣先を胸元を押えている


「そのままその場を動くな!

 彼女を殺されたくなかったらな!!」

じりじり前を向きながら後方に下がっていきながら話を続ける。


「………武器を投げろ!

 でないとこの女を殺すぞ!!」

ヴィルヘルムとヴォル、ギャバンの動きがピタリと止まる。


皆身構えた姿勢で微動だにしない。


「私の…いい…!

 早……くにんむ…!!」

リライディナは絞り出す様に皆に伝える。


「駄目だ!

 皆武器を捨てよ」

ヴィルヘルムが苦痛に満ちた暗く歪んだ表情で伝達した。


「駄目…!

 ぜった…い…」


「駄目だ!

 君がいないと……」


その時にリライディナは覚悟したこの時、この瞬間皆の足手まといにはならないし、自分はフェレの皇族で皆の命を預かる者で、そしてそれは同時に皆の弱みになる事を知った。


絶対に……。


リライディナは強い輝きに満ち溢れた瞳でヴィルヘルムの瞳に映り込んだ自分自身をしっかりと見つめる。


はっとそのリライディナの眼差しの奥に宿る強く激しく燃え盛る意志が。

その決意の光を感じずにはいられない。

言葉にしなくても、感じる事が出来た。


リラは自分自身も僕達も犠牲にしたくないと。

そして僕達の目的を必ず成し遂げる。

その強い輝きに抵抗出来るはずはないんだ。


ヴィルヘルムはリライディナのその熱い眼差しに応えるように口元をふっと緩めた。

吐息には仕方ないとばかりの諦めを吐き出す。


「わかったよ

 じゃあ。武器を置くよ」

そう言ってヴォルとギャバンに目線を送り、剣を置くように相槌をうつ。


ガシャ!

ガシャ!!ガシャ!

さきほどまで血を吸った大きな剣はその生温かさを感じさせながらも力なく地面に落とされる。


リライディナは押さえつけられた首元を外そうと必死に抵抗している。


警護隊長はその動きを封じようと腕を動かした。

僅かなバランスの変化にリライディナが隙をつくように目にも止まらない速度でさっとリライディナの左手の甲を警護隊長の背に回した。


ブスッ!

何か刺さる音。


「いっ!!わぁ!!」

血吹雪が散り、群青色の軍服に真っ赤な絵の具を垂らしたような血痕が出来た。


リライディナを拘束していた手はだらりと垂れ下がる。

さっとリライディナはその手の中から離れた。


警護隊長に激痛をもたらした後、あまりの激痛に転がりながら七転八倒している。


「リラ!」

ヴィルヘルムがリライディナに駆け寄って抱きしめる。


ふぁっと汗に塗れたヴィルヘルムの匂いに包まる。

居心地のよい腕の中で、心地よい香りに酔いそうだった。

 

ヴォルとギャバン、クリスティア商団の部隊は即座に剣を取り直し警護兵に突っ込んで反撃に向かう。


ヴォルはギャバンと共にクリスティア商団の兵士達は交戦を有利に運んだ。

あっという間に全ての警護兵を拘束したのだ。

勝利を勝ち取った。


ヴィルヘルムは無意識の中でリナイディナを抱きしめ続けている。

リライディナは恥ずかしいようで耳まで赤いが、あえて離れようとはしない。


ヴィルヘルムは温かいリライディナの身体に尚更彼女の生を感じされてほっとした。

と同時にリライディナを失う怖さをまじまじと感じだのだ。


僕がどんなに彼女を好きか………。


その思いと同時に彼女を守るだけではいけないのだとも思い知らされた。

彼女の強さを彼女が傷つかない、死なないと彼女の生の執着を。

信じないといけないのだ。

彼女の勇気を。意志を。

守るだけではいけない。

信頼しないと隣に立つべきではないとも。


「僕はこれからリラを信じるよ。

 君の強さを君の勇気を。

 隣で一緒に生きよう。

 君の強さを。」


そう言って周りも気にせずに強く抱きしめる。


リライディナは身体中が真っ赤になるほどだがやはりその手を腕を胸から離れようとはしなかった。


ヴィルヘルムは満足そうにリライディナをいつまでも飽きる事なく抱きしめて似人が一つになるのではと思うほどだ。


後ろでヴォルが大笑いしている。

ギャバンは目線を外しては暗く、複雑な表情で二人を見ていた。


襲撃は成功した。

しかしこれ終わりではない。

この計画は始まりなのだと………。






資金源である荷は無事に拿捕出来た。

次の計画は?

そして二人の愛は?

次回は革命軍の司令官達を解放する為に?!

牢獄を襲撃します。

しかし……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ