外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚三年目のニ人 皇都到着 反乱軍リーダーとの出会い
ディアナの屋敷で大惨事を目撃したヴィルヘルム達。
そこへディアナが突然現れる。家族の様に過ごした人々の残骸を目撃したディアナは失神してしまう。
皇都へ向かう馬車の中で小さくうずくまっているディアナをリライディナは温もりを分け与える。
腕に抱いている姿は親鳥が子を慈しむ姿に似ていた。
ヴィルヘルムとリライディナは屋敷で起きた惨劇に複雑な心情を持ちつつも、皇位奪還を目的に新たな段階に進んでいく。
皆緊張した面持ちでようやく皇都の入り口である城門を通過した。
検問はほぼ鎖国的な国であるにも関わらず、クリスティア商団の隊とわかるとすんなり荷の点検もほとんどせずに通過する事が出来た。
商団の影響力を見せつけられる出来事だった。
城門を抜けた先は空まで伸びる石造りの建物がひしめき合いながら建ち並ぶ。
ヴィルヘルムは地方の荒廃を目にしていただけに皇都の疲弊感は酷いものだろうと思っていた。
しかし馬車から眺める光景は想像とは違い皇都は比較的平穏の様に感じて、口がぱっくりと開いて呆気にとられてしまっている。
人々に笑顔はなく無表情ではあるものの、庶民は街を出歩きそれほど酷い装いをしてはいない。
乞食や貧民が道端にたむろしている姿もなく、多少のゴミの散乱やたむろする野犬らの姿があるが、
楽しそうに鞭で追い払う子供の姿も見える。
確かに裕福層ではないが、命に関わる頻拍した様子は見えない。
馬車や荷車など商人達も行き交い、人々の交流も賑わっているとは言えないまでもそれなりに通りを闊歩していた。
隣のリライディナも固まって身体はまったく動かない。
どういう事?
リライディナは頭を抱える。
そうして馬車の列は街の中心よりも東側の中規模の宿の前て止まった。
今日から一年間この宿の全館を借り取り、宿の従業員には一年間の給料を前渡しにし、商団とヴィルヘルム達の使用人をあてがった。
「重要な商談を行う理由にして破格の値段で買い取りたい」とフランシスは経営者にそう申し出たのだ。
クリスティア商団では大きな取引の際には一般的に行っていたので二つ返事で了承が取れた。
フェレ皇国入国時に分かれた他のクリスティア商団の隊もそれぞれのルートで地方で救護活動を行いながら、リナイディナの名の下皇都まで進行していった。
当然リナイディナの評判は各地方で上がり、今や聖女扱いとなっているとヴィルヘルム達に報告があがってくる。気持ち悪いくらいに予定通りで、それはそれで返って胸のつかえになって意味のない不安が宿る。
宿に入りヴィルヘルム達は一旦あてがわれた部屋でくつろいだ。
商団員とヴィルヘルム達の商人はそれぞれの役割に応じ必要な品を荷から取り出しては部屋の設えを整えようやく当日に必要な品を準備出来るのを終えたのは夜中を超えた頃だった。
しばらく宿はおもちゃをひっくり返したような雑然とした光景が広がったが、日が経つに伴い整理され一週間もすると日常生活を快適に過ごせるような環境が整えられた。
長旅の疲れがすっかり取れたヴィルヘルム達は今後の皇位奪還の計画に向けて、首都圏でレジスタンス活動を活発に起こなっている反乱軍のリーダーに接触する事にした。
今後の皇位奪還計画にはぜがにでも協力したい組織だ。
フランシスに強いコネクションがあり、なんとか面会の約束を取り付けた。
指定された日の昼間に訪問する為ヴィルヘルムとリナイディナとフランシスが徒歩で外出する。
その家は皇都の中心にあり、しかも周りはなんの疑いもかけられそうにない。
いたってどこにでもあるような集合住宅の一室だ。
石造りのそびえ立つ高い建物の外には洗濯された衣類がまるで旗のように風に煽られて激しく揺れていた。
中流層の雰囲気の漂う住宅街であり、まさかこんな所に革命軍の潜伏地があるのかと疑うほどだ。
とある聳え立つ石造り建物の鉄の扉に沿えつけた鈴をフランシスが奇妙な感覚のリズムで鳴らす。
すると扉の取っ手を引くとス~と重い扉は軽々と開く。
「行こうか」
フランシスがあたりの人影を警戒した仕草の後、ヴィルヘルム達に言った。
中庭は息吹く木々が青々と生い茂りここがあの荒れ果てたフェレなのか?
と目を疑った。
不思議に思いながらも次の正面の扉を開き階段を一番上まで登りきり、息をきらせながら上がった先の廊下の突き当たりに重厚な木製が姿を現した。
「えらく普通の……」
ヴィルヘルムは目を丸くしてぼそりと呟く。
その空間には使用人やおそらく住人と思われる男女、子供が生活空間として暮らしているようだ。
すれ違った女性の手には今から干そうと洗濯物を籠に入れて足早に屋上に向かっている。
廊下では数人の子供が腰を下ろして夢中で絵を描いている。
「意外とこういう方が隠れ蓑になっていいかも。
逃走経路だけしっかり確保する事と侵入者の防御を徹底出来ればな」
フランシスが肩で息をしてタイを緩めながら答えた。
少し緊張しているようだった。
「…んっ」
ゴクッとリライディナの唾を飲み込む音が静かで冷たい空気に響く。
ヴィルヘルムは陽だまりの様に暖かい微笑みを讃え、リライディナの肩を抱いて手を握りしめた。
「お熱いね。お二人さん」
フランシスはちょっと呆れた様に茶化した後真剣な瞳を宿しながら言った。
「さぁ。行こう。
彼が待っている」
フランシスがその扉のドアノブに手を掛けようってすると、突然内側からガチャと音を立てたと思ったら、ギィギィと木の擦れる音が高く響いた。
フェレ皇国の革命軍のリーダーは?
ヴィルヘルム達を受け入れるのか?




