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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚二年目の二人 アンドリューの秘密と絡む糸Ⅶ

ディアナの協力者と思われる二人の人物は?

フェレ皇国皇位奪還に向けて旅立つ。

クリスティア商団は順調に皇国の皇都へと近づいていく。


皇都へ向け翌日の早朝にはクリスティア商団の隊列は出発する。

さまざまな思いが交錯しながら、順調に次の野営地でも無事に一夜を過ごせ旅の終わりは近づいていた。


心を通わせたヴィルヘルムとリライディナは同じ馬車に乗り込んでいた。

二人ともぎこちない様子はなくなったものの、お互いを意識しすぎて顔を合わせる度に恥ずかしさが増してしまう。


こういう時は僕がリードしないと…。


ヴィルヘルムは馬車の窓際から外の荒涼とした田畑と朽ち果てた家々を見ているリライディナの瞳の光が厚い雲に覆われていくのをだまって見つめていた。


喉の奥でごくりと唾を飲む音が聞こえそうだ。


ふと自分の手が無意識にリライディナの小さな指に置いた。


気づいたリライディナは少しはにかむように笑顔が可愛らしいその姿が愛おしくて、思わず肩に両手を腕抱いて彼女の首すじに自分の顔を近づけた。


「大丈夫だよ!

 何があっても君を守る」

瞳に力強さを宿し、リライディナの心は春の温かさに満ち溢れている。


「ありがとうヴィル」


リライディナは「守ってあげる」と言直接的にはいわれたことが無い言葉だった。

ヴォルとギャバンはそんな事は当然とばかりにあえて発言しなし、どちらかと言えば自分が言ってきた台詞だ。

侍女や召使自分よりも身分の下の者、年齢の下の者、貧しき者、体力的に劣る者を庇護したいと守ろうと生きてきた。


むず痒いけどいやな言葉じゃないな。


ヴィルヘルムを見つめて、頬を赤く染めながらこくりと頷く姿は年頃の可愛らしい少女だ。


「皇都に入る前にこれからディアナの暮らしていた屋敷に行くんだよね」


「ああ。

 侵入者がまた現れないとは限らない。

 注意しないと。

 それとディアナの話だと二人殺害されている。

 侵入者が後始末をしたとは限らない。

 彼女と出会って二ヶ月。

 いつ起こったのかは知らないが、かなり悲惨な現

 場になっているだろう。

 薬師に言って臭覚鈍化薬を貰おう。

 それとリラとディアナ、女性は行かないほうがいい。

 耐えられないだろう」


「でも……これから悲惨な現場はいくつも出会うよ。」


「あぁ。

 でもいきなりのはやはりトラウマが心配。

 僕でも戦場はきつかったからね。

 訓練とはまったく次元が違う。

 勿論これから経験するだろう。

 今ではないよ。

 ここは僕の願いを聞いてほしい。  

 リラにもこれからの戦いで知るだろうからわかってくれるね」


リライディナはやや納得がいってないのか両頬を膨らませて拗ねた様子を見せ、その表情があまりに可愛らしいのでヴィルヘルム達は口元を緩ませる。

ふっと優しくリライディナの背に手を廻して自分の胸に引き寄せると頬に優しくキスをする。

ヴィルヘルムの爽やかで心地よい香水の香りがリナイディナの鼻をくすぐった。

もう抵抗出来ない。



仕方ない。

これからも見せたくないと言っている訳ではないしと無理やりヴィルヘルムの願いを聞くしかないかな。


リライディナのクスッと笑うのを合図に軽く唇を重ねる。

開いた窓から夏の匂いと光が二人を包み込む。




クリスティア商団の隊列はさしたるトラブルもなく皇都へのそろそろ到着マジかな距離を移動していた。


最後の休憩場所からは先頭のディアナの馬車が走る事になった。

屋敷の場所は彼女しか知らず、その前をギャバンが騎乗し馬車の窓越しからディアナが行先を伝える事になっている。


景色は出発以来ほぼ変わらない。

変わらないがもう皇都に近いそれにも関わらず荒れた光景は雲一つ変わらない。


荒れた田畑は日照りの為に土は割れて干からびている。

そこにいた小動物もすでに骨と化している。

皇都へと大動脈といえるこの大通りすら、多くの動物の墓場化している。


「皇都が近いというのに…これほど酷いとは………」


普通は都市に近い場所は少なくても整備や表繕うほど整備されているものだ。

すくなくとも祖国を出国した頃のギャバンの記憶はそうだった。


ギャバンは深い溜息をつき、口に手を当てその手は激しく震えた。


若い時代を過ごした祖国だった。

傭兵として長く出国していたとはいえ故郷の様子を目にし、頭を激しく雷が落ちた様な激痛と吐き気が襲ってくる。


これがあの皇都か?

確かに貧しくはあった。

地方は今まで目にしてきた姿をそう変わらなかった。

地方が貧困しているのは昔からだ。

しかしもう皇都は近い。

にも関わらず、近郊ですらこの状態なら……。

皇都はどうなっているのか?

激しく動揺している姿を見たディアナは心配そうに言葉をかける。


「ギャバン殿。

 大丈夫ですか?」


「……えっ!!

 あぁ……ええ。

 これほどとは………」


唾を乾いた喉に無理やり流し込みそういうのが精一杯だった。


「……私も……屋敷以外は出た事……なくて。

 皇都近郊で………これなら……」


青ざめた顔色のディアナが絞り出した言葉はすぐ風に飛ばされる。


「あっ!!そろそろ屋敷です。

 左の枯れた大木に心当たりが……。

 あの大木の手前にある枯れた草原の中に入って行ってください。

 おそらく馬車が一台入るくらいの道幅はあるはずです。

 屋敷に入る人の馬車だけ進んで後の列は後方に広場がありますそこで待機してもらってください。

 広いので全ての馬車が止まれるはずです」


「わかりました」


そう言ってギャバンは後方の馬車の御者に合図を送り各御者がそれぞれ後方に知らせていった。


三台の馬車が隊列を組んで枯れた背の高い草をかき分けるように小道をひたすら進んでいく。

三十分くらい進んだ頃だった。

ゆっくりと馬車の速度は落ちていき、人が進むくらいになった後、美しく整列した馬車が開けっぱなしになった錆びた鉄の門を歩く速度を保ちながらゆっくりと進んでいく。


両側には木々が植えられていたものの全て枯れ果て、根元からなぎ倒されている物すらある。

辛うじて馬はそれらを避けながらようやく屋敷の前に止まった。


意の一番に降りたのはヴィルヘルムだった。

次に騎乗のギャバンが馬から降りて、フランシスが降りた。

瞬間放った言葉は意外なものだ。


「酷く匂うな」

そう言って薬師から事前に調達させた臭覚鈍化薬の軟膏を鼻したにべったりと塗りこんだ。

同行したギャバン、フランシスも配布しているのですぐに使用した。


「もうしませんが。外にも酷く臭い匂いがしていましたね」


「……これは死臭だ。

 人の戦場で何度も嗅いだ。

 間違いない」


「そうだな」


目の前の屋敷に全員目をやる。


一瞬地方の豪農の屋敷といえる。

ディアナと母親が連れ去られた後、人の手入れを入れられていないのはその外装でわかる。

所所薄茶色の汚れ元は白い壁で黒い木造建てのずっしりとした重厚感のある屋敷だ。

大きなチーク材の扉はドアノブが斧の様な物でぶち破られた跡が残る。

しかも半開きになっている。


最近まで人が住んでいたとは思えないほどの荒廃感と地獄まで悪魔が口を開いているような恐怖がよぎってくる。


「行こうか……」


「行くしかないな」


「はい………」








次回はディアナの暮らしていた屋敷に到着して、何か出生や殺害拉致事件の謎は解けるのか?



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