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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚二年目の二人 アンドリューの秘密と絡む糸Ⅴ 

川で溺れたアンドリューをリライディナが助け一命を取り留めた。

ようやく意識の戻ったアンドリューの口から突然の性別詐称の告白が!

鉛の様に固まってぴたりと流れない寝室の空気をヴィルヘルムが揺り動かす。


「ぇぇっ……と……」


あまりの事実の衝撃に頭が追っつかないヴィルヘルムだが、それよりもさっきからアンドリューから感じる違和感がどうしても気になってしかない。


どうしても聞かずにはいられなかっただ。

恐る恐るゆっくり息を吐きながらその息を吸すい吐いた勢いで口を開く。


「…君の…そのさっきからものすごく冷静で……。

 言葉のボキャブラリーがものすごく大人びてるんだけど……。

 ……いや。

 いや…今聞く事じゃないよね…。

 いいんだ。

 いいんだよ。ハァァ……」


無意味な無駄な笑いで誤魔化した。


聞いてはみたが、自分でも今か?と疑問に言葉を打ち切ったのだ。


アンドリューは瞼を閉じ、静かにやや頰を緩めて物悲しさを含んだ微笑みと共に語り始めた。


「母の話だと知能指数が人より高いと言っていました。

 二歳でペラペラ言葉を話し、三歳で大体の本を読め、記憶力も高かったそうです。

 勉強は三歳から初めてファレ語、フェレイデン。

 語、オルファン語を共通言語のエルディア語を読み書きを覚え、歴史、地理など。

 五歳ですがいわゆる一般教養は身につけています。

 フェレ皇国の成人である十五歳以上の知識がある大学院にも通えるレベルと。

 私の世話係が言ってました。

 御免なさい。

 子供ぶって………しまって」


院?大学院?

五歳の子供が?


ヴィルヘルムは軽く引いてしまった。

あまりに流暢な大人なみの言葉に自分の目と耳が可怪しくなったのかと疑うほどだ。

予想以上の告白に完全に面食らった状態でぽかんと開いた口が閉じない。


「いゃ……。

 警戒するのも……わかるよ。 

 子供ぶってなんて……。 

 子供にはかわりないんだから」


リライディナがつかさずフォローに入る。


「母と家政婦、私の世話係の三人しか接していませんでした。

 生活に必要な品は家政婦が皇都で調達していました。

 いつも感じていたのは漂う緊張感でした。

 母も僕の世話係も。

 小さな物音や人に。 

 いつも警戒していました。

 何故だかはわかりません」


ハッと我にかえるヴィルヘルムは思わず質問したかった話をし始める。


「それと僕が父親っていう話は?

 僕には心当たりがないんだが」


「母がそう言っていたのは事実です。

 真偽のほどはわかりませんが。

 あの時偶然にも母が見せてくれた肖像画にそっく

 りな人を見て咄嗟に。

 あのまま野たれ死ぬ可能性もありましたし。

 …流れで……。

 ただ私としては母の父だという告白は事実なの

 か…。

 調べたいとも思いましたので」


「あぁ~~~なるほど…。

 ん~~でも本当にフェビエンヌとは幼い頃の遊び相手で。

 宮殿に戻ってからは一度も会っていないのは事実なんだ」


「そう………ですか…」

少し頭を下げて両手はシーツをぎゅっと握りしめている。


「まあ…乗りかかった船だし、君も知らないいろいろ謎がありそうだ。

 君さえよければ僕達はこれから皇都に行く。

 皇都では僕らはかなり危険だから着いてから別れてもいいし。

 住んでいた屋敷の状況で何か分かるかもしれない。

 疑問を解決する手伝いをさせてほしい。

 取り急ぎ情報ギルト集団に渡りをつけて調査させよう。

 僕も…。このままだと…」


アンドリューはふっと可笑しくなって苦笑いをして言った。

「そうですよね。

 殿下も妃殿下に顔向けできませんよね」


「えっ??

 僕が殿下って!

 えっ僕の素性を知っているの?」


「ええ勿論。

 始めからオルファン帝国の第二皇子ヴィルヘルム

 皇子殿下。

 そしてお隣はリライディナ妃殿下ですよね。

 フェレ皇国皇族で前皇王の皇女殿下。

 世話係は家庭教師も兼ねていましたし。  

 各王室皇室の歴史は学びました。

 本にも肖像画が載っていました。

 妃殿下との結婚は家政婦から聞きました」


「………まぁでも命が助かってよかった。

 リライディナが偶然現場にいたからよかったけれど。

 あのまま攫われていたらと思うとぞっととる」


「…リライディナ妃殿下が。

 ありがとうございます妃殿下。

 お礼申し上げます。

 そして今までの失礼な態度をお詫び申し上げます」


こくりと頭を下げる素直なアンドリューに少し戸惑っているリライディナはなんだかワナワナと落ち着きがなくなってしまう。


「えっ!

 あ!そうだったのか?

 大丈夫だよ…」


リライディナはそう言ったものの、五歳時に超敬語で話す違和感にどうしてもついていけないのだ。


「身体を休めて体調が戻ったら皇都へ行こう。

 それまでいろいろ途中経過でも調査の報告書が入ってくるはずだし。

 僕達は出発の準備をするね」


ヴィルヘルムは安心させるようにアンドリューの肩に優しく触れる。


「あぁ~それとこれからどちらの性で過ごすのか?

 そして君をなんと呼ぼうか?

 やはり男の子だという事にしてもいいし。

 身元を隠すためだとしてもフランシスに頼んでクリスティア団員として登録してもらうから。

 女の子でも問題ないはずだけど」


「ん~~。

 そうですね。

 正直な所私もどちらとも……。

 母が性別を偽る様に言った理由もわからないので。

 なんとも…」


「そうか。

 でも性別を偽ったらいろいろ問題も出てくるだろうから。

 本当に男子の中にほりこまれる状況になるかもだし。

 女の子に戻って、瞳や髪の色を変えるのは?

 うちの薬師大陸一の名薬師だから。

 瞳と髪の色は自由自在だ。

 任せて!」


「そうなんですね。

 じゃあ…それもいいですね」


「うん!

 そうしたらいいよ。

 色は薬師と相談したらいいよ。

 アンリエット手配頼むね」


「はい。殿下」


にっこりとアンリエットが微笑み頷いた。


「いろいろありがとうございます」


「念の為君の名前を変えないとね。

 さすがに本名はマズイだろうから。

 フェレで一番一般的な名前がいいだろう」


「そうですねフェレでは。

 ディアナが多いでしょうか。

 平民では」


「じゃあ。

 ディアナ・モルシャン」


「ディアナ・モルシャン?」


「フェレでは比較的多い姓だ」


「そうなんですか。

 すみません。そういう知識はあんまりなくて……」


「それと世話係はいままで通りアンリエットでいいかな?

 気があっているようだし。

 アンリエット。

 リライディアとのお世話を兼ねるけどいいかな?」


「勿論です」


「はいお願いしたいです。

 アンリエットさん宜しくお願いします。

 何から何までありがとうございます」


「よろしくねディアナ」


二人握手してほっこりとした空気がようやく部屋中に漂って心地いい。


とりあえずわかったようなわからないような話は一旦終えて、ヴィルヘルム達はディアナが休めるように寝室を去った。



正式にクリスティア商団員として活動する事になったアンドリュー改めディアナの秘密はまだ続く。

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