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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚二年目の二人 アンドリューの秘密と絡む糸Ⅳ

リライディナが助けたアンドリューは一命ととりとめた。

そしてアンドリューの秘密のひとつが明らかになる。

ヴィルヘルムとリライディナはお互いを意識してようやく恋人同士になる。リライディナはアンドリューを心配して。

リライディナはまだ意識の戻らないアンドリューの世話をしたいと申し出てる。

ヴィルヘルムは自分と交代で付き添うならと承諾する事にし、昼間はリライディナが、夜はヴィルヘルムが付き添う事にしている。


リナイディナはアンドリューの寝台の傍で身体を拭いたり、額の汗を拭ったりしてかいがいしく世話をしている。


早く目覚めて元気になってほしい。

なんとなく自分を良く思っていないのがわかる。

余所余所しいし時に悪意のある表情で見ていたりされたりしていたからだ。

でもどうしても嫌いになれない。


そう。

よく見たら確かに女の子。


長い自然にカールしてるまつ毛、ふっくらとした淡いピンク色の唇。

なだらかな肩に細いけれど艷やかな肌と柔らかな張りのある白い肌。

そして時折目にするその自然な仕草から不自然に思わなかった自分に何故気がつかなかったのか?と投げかける。


思い込みって怖いな。

くすっと笑う。


こんなに小さな可愛らしいのに。


でもずいぶん嫌われてたなと思う。

自分の父だと思っている人の妻なんて悪意を持たれてしかたないだろうと納得している。



時折うなされて頭を左右に揺らすアンドリューの手を握ったり、汗を拭ったりしている。その姿は流石に母親とは言えないまでも年の離れた姉弟か親しい親族にも見える。


どんな悪夢を見てうなされているのか?


心配そうに顔を覗き込んでは額の汗を拭いてやる。

重体ではないのでリライディナは傍で手を握りながら本を読んだり、ぼんやりと外の庭の風景を眺めたりできる余裕もある。


「大丈夫かな?」


アンドリューは疲労の為に三日間眠っている。

おそらくは商団に来た時から神経を張り詰めさせていたから、事故をきっかけに疲労がどっと押し押せたのだ。


ここはどこ?

アンドリューは真っ黒い闇の中に一人立っている。

誰もいない。

真っ黒で何も見えない。


「お母様?」

ふとい出したかのように母を呼ぶ。

そう呼んだが母の声は返ってこない。


最後に母と会ったのはいつだったか?

隠れ家の様な屋敷で暮らし、母と家政婦と自分の世話役の四人で暮らしていた。

父親は知らない。

いや父親という存在すら知らなかった。

でも平凡だったけれど三人に愛されて幸せだった。


そんな日は突然打ち消される。

突然見知らぬ乱入者が現れて家政婦と自分の世話役の二人を大剣で殺害した。

そして血の旋律の中、私の名を呼び泣き叫ぶ母を連れ去ったのだ。

アンドリューは乱入者の一人に溝内を打撲され、意識を失った。

そして気が付いた時にはあの泉に置き去りにされたいたのだ。


「お母様。

 どこにいるの?

 お母様!」


何度も何度も呼ぶが答えは返ってこない。


悲しみと孤独さ、そのどす黒い不安の闇に呑み込まれそうになる。

そのうちなんだか温かい風が吹いてくるし、自分の手が何故かホカホカと温かくなるのを感じる。

なんだろう?

自分の掌を眺める。

なんだろう?

この温かい穏やかな気持ちになるのは何故だろう。


その時誰かが自分を呼んでいる声が小さく聞こえてきたような気がした。


「…はや……目を…覚まし………こっちに………大丈

 夫……」


その声の方に足を進めようと手を差し出そうとした時だ。


自分の暗かった闇の視界が急に開けて木目の天井が目に飛び込んできた。


意識が戻ったのだ。


目が覚めた瞬間に感じたのは違和感だった。

自分の左側のベットがいやに凹んでいたのだ。


視線をその方向に向けるとリナイディナの姿が見えた。上半身を寝台に預けて眠っている。

彼女の豊かな髪がアンドリューの腕にかかり、その先には自分の手を握っているリナイディナの手が見えた。


その時確信した。

「あぁ。もしかしたら彼女だったんだ」


アンドリューの悪夢の中で感じたあの温かさはリナイディナの手の温もりだと。


なんか変な人だ。

嫌いだとわかるように接してもまったく態度が変わらないどころか……。


リライディアの顔をじっと眺める。


長い睫毛と形のよいぷっくりした唇、全体的に整った顔立ち。

美しい。


「私達の因縁………」


そう呟いてリナイディナの髪を撫でてみる。

その表情には憎しみや嫉妬はなかった。

それどころか懐かしい者見るかのように穏やかだった。



しばらく夏なのに春のような温かい空気が寝室に漂った後、リライディナの瞼がパチリと開いた。


と同時にぱっと再び瞳を見開く。


「アンドリュー?」

その瞳に目覚めてはにかんで微笑でこちらを見ているアンドリューが映っていたからだ。


「わぁ~~~~」

その声と同時にアンドリューの背に両手を重ねて抱きしめていた。

ようやくアンドリューが無事だと実感できたのだ。

嬉しくてしかなたかった。


「やった~~~~!

 あっ!!お医者様お医者様」


そう言ったっきり部屋を駆け足で出ていったのだ。


「きゃはアァァ」

リライディナの様子が嬉しくて噴き出して笑ってしまう。


本当に面白う人だ。

意外と心地いい。

そう思った。


しばらくして医師とヴィルヘルム、リライディナ、アンリエットが現れた。

医師はアンドリューを触診した後安心させる様に告げる。


「もう大丈夫でしょ。

 沢山食べて運動して体力をつけてください」


そう言って商団の医務室に帰っていった。


「とにかく無事でよかった」

ヴィルヘルムがアンドリューにほっとした表情をして言った。


「お騒がせしました」

落ち着いた様子のアンドリューにヴィルヘルムは一種の違和感を感じる。

そうかなり大人びた物言いだったからだ。


「リライディナ様が川に落ちた貴方を助けてくださったのです」


アンリエットがやや目線を下げて静かに告げる。


アンドリューはえっと驚いてリライディナの方に目線を向けると恥ずかしそうにキョロキョロして落ち着きのない彼女がいる。


「ありがとうリナ」

アンドリューの言葉と表情には敵視する表情はない。

どちらかというと子供らしくない落ち着いた様子だ。


リライディナは小さく頷いて嬉しそうに太陽の微笑みを向ける。


「あの…。

 いろいろお話しないといけない事があります。

 私は……。女の子です。

 本当の名前はアンジェリです。

 母がいなくなる前にこう言ったのです。

 しばらく男の子のふりをして過ごしなさい。

 誰にも性別を語ってはいけません。

 命に関わる事になるからと。

 それからしばらくしたある夜に。

 侵入者が屋敷に現れて家政婦と世話役を殺害し

 て、母を浚ったのです。

 私は気が付いた時には知らない泉の傍に置き去り

 にされていました」


「……。」


予想外の告白に全員言葉を失って重い空気が流れる。



























アンドリューの告白に言葉を失う。

そして五歳にして落ち着いた様子?

さらに秘密は続く。


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