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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚二年目の二人 アンドリューの秘密と絡む糸Ⅲ 

リライディナによって溺れそうになったアンドリューは一命をとりとめた。


容態が安定した後居間でヴィルヘルム、リライディナ、アンリエットが話し合う


朱色、黄、茜色の混じり合った夕暮れ時の太陽の光が大きな窓から入った居間に差し込んでいた。

ソファーにリライディナ、ヴィルヘルムが神妙な面持ちで座って心配そうに寝向かいにいる

アンリエットは目線をやや下げて夕暮れ時の日差しは更にその曇った表情を鮮明に浮き上がらせる。


この少し前にリライディナによって助けられたアンドリューは呼吸も脈絡も弱いが辛うじて命を繋いだ。

救護に来た団員が担架で運び医者に付き添われて、邸に運ばれ治療を受けたのだ。

幸い命に別状はなく、「しばらくは安静肩を寄せ合って座っている。」とヴィルヘルムに医師は告げた。

アンドリューは今は眠っている。

容体が落ち着きを取り戻した後、三人は居間で話始めたのだ。


ヴィルヘルムが口火をきる。


「アンリエットは知っていたよね」


ヴィルヘルムのその声は怒りは感じられず、どちらかというともどかしいまでに柔らかで優しく聞いた。


「……えぇ。

 実は最初にお風呂に入らせる時、一緒にバスルームに入る事を頑なに拒否されて。

 何か秘密があるのでは?と気になって…。

 こっそり覗いたんです。

 丁度上がろうとした時……。女の子だと知りました。

 だまっていてごめんなさい」


顔を下に向けて手はぎゅっとスカートを握りしめて身体はワナワナと震えている。


「んんっ…」


リライディナは少しショックだった。

何も教えてもらえない事でアンリエットに信頼されてないと感じたのだ。


「何か事情があるのではと黙っておりました」


「名前から男の子としか考えなかったしね。

 何か理由があるはずだ。

 性別を偽らないといけない何かが?」


そう言ってヴィルヘルムは顎に手を添えて考え始める。


ファビエンヌは今どうしているのか?

あんな小さな子供が性別を偽るなど考えつくだろうか?

そもそもあの子は誰に連れてこられ、どうして僕達の商団の傍にいたのか?


「ファビエンヌを探すしか方法はないかな?

 とりあえず済んでいた皇都の近郊の家に行って手掛かりをつかんで。

 そっから動くしかないね」


「アンドリューの信頼を勝ち取らないと。

 そうしたら教えてくれて力になれるかもしれないよ。

 何かあって追われているか?

 隠さないといけない理由があるのだから。

 それにあの子の意思も大切。」


リライディナは何か決心したように強い意思を言葉にした。


「そうだね。」

リライディナらしいとヴィルヘルムはクスッと笑った。


アンリエットはそんな二人の姿を見ては自然と微笑むが、何故だかそこには悲しみや罪悪感を感じる僅かな表情が垣間見れた。


「本当に侍女失格です。

 解雇されても仕方ありません。

 どのような罰も受け入れます。

 リライディナ様」


リライディナの口元が緩む。


「何言っているんだ。

 アンリエット。

 君は私のかけがいない友だよ。

 ずっと私の傍にいて。

 いたらない私を助けて欲しい」

その言葉を聞いた時、突然湧き上がったように涙が溢れ出す。


アンリエットはその言葉でリライディナの心の広さと優しさ、なにより人を引き付けて魅了せずにはいられないと。


リライディナをやっと分かったような気がした時に、溢れる涙は止まる事を知らない。

時がゆっくりと流れた。


しばらく泣き腫らした後、アンリエットは優雅な礼の仕草をして覚悟したように伝えた。


「これより誠心誠意リライディナ様にお仕えいたします。この身にかえても」


そう言って居間を退出していった。



アンリエットが去った後居間に残された二人に静かな空気が漂っている。

アンドリューが現れてから二人っきりになるのは初めてだった。

ヴィルヘルムは酷く緊張している。

リライディナは何か伝えたくてウズウズしているもののなかなか言い出せないでいる。

少し間があってリライディナがギュッと両手を握り締め、瞼を閉じながら勢いよく発した言葉は唐突だった。


「私はヴィルの事が好きだと思う!

 川に飛び込んだ時苦しかった。

 その時にヴィルの事を真っ先に思ったんだ。

 会いたいって。

 もっと知りたいって。

 もっと……。 

 だから。ヴィルを信じるよ」


顔は見たことがないくらいに真っ赤になっている。


ヴィルは嬉しいやら、驚いたやらで、不意打ちをうけたが、やがて満面の太陽のような笑顔を見せてはリライディナの小さな身体を抱きしめて抱いた。

柔らかなリライディナの身体が。

熱い感情がヴィルに伝わる。


「嬉しいよ。

 リラ僕はよき夫で君だけを愛し君を命をかけて守るし、誠実に君だけを愛するから」


リライディナは初めての真っ直ぐな告白になれないせいでむず痒くてドギマギもするけれど。同時に嬉しくもあった。


「私、良い妻かは分からない。

 でもヴィルと会えなくなると思ったら酷く悲しかったんだ。

 その…ファビエンヌって私の知らないヴィルを知っているんだよね。

 何だかわからないけどちょっと嫌な気持ちになった。

 でもアンドリューの事はいずれはっきりすると思うし。一緒に考えようヴィル」


リラの表情に曇りがない。


単純に嬉しかった。

リラが少し焼きもちを焼いてくれていると思うと心が踊って弾けんばかりの嬉しさが押し寄せる。

ヴィルヘルムは嬉しくてリラの身体を強く抱く。

しばらくお互いの体温を確かめあった後、ヴィルはリライディナの肩を両手で少し離して尋ねた。


「キスしていい?」

ここは自然にするものだろうが、誠実が過ぎるヴィルヘルムらしい同意の確認だ。


リライディナは下を向いて耳まで赤くなって小さく頷いた。


ヴィルヘルムの頰が緩んで、指でリライディナの顎を持ち上げた。


リライディナの潤んだ瞳が官能的で、ヴィルヘルムの身体の奥に火が灯りそれは広がっていく。


ゆっくりとヴィルヘルムの唇がリライディナのそれに重なり、初めての可愛らしい口づけを交わした。


まだ恋人同士の濃厚なそれはもっと愛が深まった後でいい。

時間はあるのだからヴィルヘルムはそう思う。


しばらく二人は抱き合った。

同化するのではないかというほどに。


ようやく恋人通しっぽくなった二人。

さて病床のアンドリューは?

次回アンドリューのもう一つの秘密が明らかになる?

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