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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚二年目の二人 アディルジャを救え!

突然現れたヴィルヘルムの隠し子と名乗るアンドリューをどうするのか?

沈黙の会議室。

普段はあれこれ意見を激交わすいつもの光景だが、今日に限って誰一人話そうとしない。押し潰れそうな重い空気がそうさせる。

それもそうだヴィルヘルムの子供を名乗るアンドリューをどうするか皆真剣に話し合う為に集められたのだから。


それでもヴィルヘルムは意を決してうったえかける。

話はやっと進み始める。


ヴィルヘルムは自分の子ではないが、ほってはおけないと主張し、リライディナもそれに同意した。

ヴォルとギャバンは異論はあったものの最終的にリライディナに従った。


フランシスとアンリエットは子供の素性を調べる必要性を感じ、このままクリスティア商団に一緒に連れて行くという意見が出る。


皆はその意見に同意して、次の事を決めた。



ヴィルヘルムはこれから愛称ヴィルと呼び、絶対に殿下の尊称で呼ばない。


これは全員に伝令された。

呼んだ者は処罰されると言われたので、全ての身分の者は同意する。


そして子供の世話はアンリエットに決めた。テントも同室だ。隊の中で一番警戒心が薄そうというのが決め手だった。

子供の様子を報告するように伝えられ、一旦隠し子問題は棚上げされる事になりヴィルヘルムは胸を撫で下ろす。


夕食をとった後、隊は夜間に再びの出発になった。

夜移動は昼間の黄砂が酷く馬が進まないのだ。

夜になると気温は下がるが、何故か風がない日が多く移動に敵したからだ。


この行動を七日繰り返し隊は一つ目の地方都市アデルジャに到着する。


とは言っても大集団なので、郊外の今は人の住んでいない邸を使用した。

秘密裏に持ち主に大金を払い借りたのだ。


クリスティア商団の団員数名がアディルジャの中心部に偵察に行き戻り報告を行う。


「もう。すさみきっているよ。

 役人も軍もなんの制圧もしていないよう

 だ。

 いわゆる無法地帯だね。

 辛うじて神殿で救済活動をしているくらい

 で。す」

腕組し瞼を閉じていたヴィルヘルムが口を開く。

「つまり何もしていないという事か?

 行政は何をしている?」


「皆表に出ると怒り狂った市民からリンチされると 早々に皇都に逃げていったよ。

 呆れるね。まったく」

諜報員は背もたれにぐっと身体を押しつけ、怒りに満ちた表情をして不快感を顕にした。


「つまりそこにうちが支援したら?」

フランシスがつかさず明暗を口にする。


「そりゃ大歓迎だろう。

 まずは信用される為に神殿への協力、その後で都市部の支援でいいんじゃない?」

名案とばかりに諜報員は食いつく。


「じゃここで支援者リライディナ。

 名を売ろう。

 勿論身分は伏せてね。

 クリスティア商団の隊長リライディナ誕生」

ヴィルヘルムが颯爽と口にした言葉にリライディナは目を丸くする。


「わたし?」 


「そうだよリラ。

 いきなり二代前の皇王の娘と言っても猜疑心と逆に憎悪されてしまう。

 だからまず人間性から印象を与えてから身分を明かす。

 真実を知ったら一気に象徴的存在になるよ」


「そうかなぁ?」


「自信持っていいよ。

 リラはすごく人を引きつける魅力がある」


突然のヴィルヘルムの褒め言葉にリライディナは耳が赤くなる。面と向かって褒められるなんてなかなかないものだ。


「……。皆がいいなら…。

 民の明るい顔がみたい」


その場で反対する者などいなかった。

一堂多く頷いて会議は円満に終え、支援の準備に取り掛かった。

出発は明日に決まった。

事前に神殿で必要な品を聞いていたので荷馬車に積み込まれ大わらわだった。


地方長官、並びに行政長以下皇都から来た行政官は全員皇都の皇軍が支配する地区に引き払った。

残されたのは行政を担っていた当地の役人と共に下働きを生業とした下男や下女達だけだったという。

その人々も暴徒の対象になるかも知れないという恐怖から神殿に保護されている。


ヴィルヘルムと近衛隊長、リライディナ、ヴォル、アンリエットそしてアンドリューが何故か興味をしめし同行し神殿へ向かっていった。


神殿は町の中心部からは少し離れた場所にあった為、障害もなく無事に辿り着いた。

神官は信じられないと面を食らった様に目を丸くしてリライディナの話を聞いていたが、そのうち食料や日用品を屈強な男達が神殿に運ぶ様子を見てようやくほっとして僅かに微笑みを湛えた。


「行政からも支援はなく、あと少しで貯えの材料もなくなる所でした。

 助かりました」


「いえ。間に合ってよかった。

 こちらでの奉仕が無事に済めば街に救護施設を造

 りたい。

 神官様にご協力してほしい」


「あぁ~~なんとありがたい。

 街の者もたすかりますが、ただ市民が多いため全

 てを助ける事は出来ません」


「ぁあ

 市民の中で体力のある人や指導者に向く人、雑用なら出来る人。

皆で運営出来るように。

 私達は財政面で支える。

 私達がいなくなっても商団の者を残こす。

 その者の事は宜しく頼む」


「そこまで…ありがとございます。

 リライディナ様」


「それは商団の者達に。

 彼らが動いてくれるからやれるんだ」


「それでも…貴方方に女神ディアの祝福があります

 ように」


「ありがとう神官さま」


リライディナの目線の先には自分よりも小さな子供達を懸命にお世話するアンドリューの姿が見えた。


「ああ~~」

赤ん坊がアンドリューの手にしたミルクの瓶を早くと言わんばかりに言葉にならない声を出す。

その愛らしい顔を覗き込んだアンドリューの穏やかそうな顔が印象的だった。


傍にいた年長の女の子が少し遠慮がちにアンドリューのシャツを手で引っ張っている。


「小さな男の子が川で水遊びしたいっていうの。

 一緒に行って遊んでみては?」

どうやらその子はアンドリューを休ませたいみたいだった。


アンドリューは困った顔をしてその子ににっこり微笑んだ。


「ありがとう。だいじょうぶ」

そう言ってまた赤ん坊に目線を移した。


世話される子供が一緒に行って大丈夫かと思ったけれど、赤ん坊をあやしたり、ミルクをあげる姿は健気だ。


リライディナの視線を感じたアンドリューはさっと背を向けてそれを遮る。


どうやらまだ警戒されてるな。と思い苦笑してしまった。

それはそうだ父だという人の妻がいるのだから複雑な気分だろう。

リライディナもそれ以上は無理に接近するのは避けた。きっと時期が来たらいい関係になると信じていたから。

そのぎこちなさが少し気になったが、神官と今後の奉仕についての話し合いの時間になったのでその場を後にした。



神殿で奉仕活動を一週間した後、なんとか施設内の問題は解消できた。

定期的に消耗品や食料を調達出来る手配をフランシスは行い、神官の同意を得て街で救護活動を開始する事にした。

神殿で保護されている人々はリライディナに感謝し、人々は女神ディアが降臨させた聖女だともてはやした。

全ては計画通りだった。




神殿での奉仕が成功をおさめ、いよいよ市街の奉仕活動を始める事になった!

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