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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚二年目の二人 隠し子発覚?Ⅱ 

皇位奪還に燃えるクリスティア商団に突然現れたヴィルヘルムを父と呼ぶ子供の登場に一堂唖然。

ヴィルヘルムからまったく離れようとせずに力いっぱい剥がされまいとする様子は客観的に見ると健気にも見える。

しかし当のヴィルヘルムからすると気がきではない。

身体中を針で刺すような酷く冷たい周りの視線がとにかく痛かった。


他人から見れば不倫か火遊び的なあらぬ疑いを妻の前で発覚したかのように見えるからだ。


まったく…心当たりは…まったくないが…。


瞳を子供から外してリライディナを見ればこの状況に硬直し無機質化しているのが目に入る。

いやな汗がじわりと背中を伝う。


ヴィルヘルムのキュロットは子供が流す涙でしっとり濡れ始めているが離す勇気すらもでてこない。


どうしたら?

って君誰…?

僕がお父様?

何???


すぐにでも問いただしたいが、それで状況が良くなるようにも思えない。

下手をすれば逆効果だった。


しかし何度記憶の引き出しをひっくり返しても身に覚えがないのだから。

出てくるわけはない。

やるだけ無駄のようにも思うが良い案はまったく浮かばない。


五歳くらいだろうか?

五年前??いや六年前?

っていうか僕今年で十七歳差し引き十一歳頃?

いくら何でもお父様はないよな~~~~。


この子よく見れば血管が浮いて見えるほど外に出たことすらないかのように肌は病的なほど白い。

霧ががったような薄いグレーブルーの瞳には生気がない。

唇はやや薄いピンク色をしているものの少しカサカサして乾燥している。

身体つきは痩せてはいないが、比較的ちいさい印象。

寒さのせいか単に緊張しているのか?

身体はどこもかしこもガタガタと震えている。


泣き腫らした顔はかっと食らいつくばかりに必死な形相でヴィルヘルムを凝視している。


「おとうしゃま!」


再びの父親発言に、野次馬はただ呆気にとられて微動だにせず皆言葉もなく現実を眺めるしかない。


ようやくヴィルヘルムがその子から解放されたのはもう少し後になってからだった。


子供のお腹が鳴ったかと思ったらその子は気を失ってしまったからだ。


あわてふためいたヴィルヘルムは子供を抱えて自分用のテントを目指して駆け出した。

リライディナは考えが追いつかずに気がついた時にはただヴィルヘルムの後を追っていた。


残された野次馬はとたんにガヤガヤと騒ぎ始めた。

ヴィルヘルムはそんな事は知ったこったなが……。


さてそれからヴィルヘルムのテントはてんやわんやの大騒ぎだった。

まず医者が呼ばれ、瞼を無理やり開いて瞳孔を確認したり、脈拍をとったり、熱を測ったり、身体をあちこち見たり触ったり、血色を確認したりとした後ふっと息を吐いてニッコリ笑った。


とりあえずヴィルヘルムはほっと胸を撫でおろすどうやら問題なさそうだ。


「おそらく状況から見て腹に何にも入っていないよ

 うです。

 空腹で失神したんだと思います。

 いきなり与えるのはよくないですから、目ざめた

 ら消化の良いものを与えてください。

 それとそれが終わったら入浴と休息が必要です。

 話はそれからですね」


にやりと医者は皮肉っぽく笑いテントを後にした。


残されたのはヴィルヘルムとリライディア、そして皇子付の侍女達と皇太子妃付のアンリエットだけだった。

しばしの沈黙の後、ヴェルヘルムは覚悟した様に吐息を吐いてリライディナの顔を見て口を開いた。


「僕本当に心当たりがないんだ。

 信じてくリラ!」


ウルウルとまるで捨てられる子犬の様な瞳で訴えかけてくる子供に何も言えないヴィルヘルム。

沈黙が痛いまさにそんな感じだ。


リライディナははっと我に返ったように懇願するヴィルヘルムの姿をじ~と眺めて幾分考え込んだ様に黙り込んだ後にゆっくりと口を開ける。


「…どんな事があっても私はヴィルの妻だし。

 それに…婚外子がいるなんてフェレでは普通にあ

 る事だし。父にも側室や手をつけた侍女

 だからと言って離婚なんてないよ。

 私も子供の母として頑張るよ」


その瞳は何故か物悲しさと僅かに憂いを帯びウルウルとし口元は少し緩ませている。

いわゆる無理して伝えた一言だ。


ヴィルヘルムの顔に深い縦線が入って血の気が一気に足元へと激流する感覚がぞっとする。


「だから!!

 僕はしてな~~~~~~い!

 無実だ!!

 リラ信じてくれ!」


その時に控えていたアンリエットが咳払いをして、二人の会話に入ろうと試みた。


「両殿下。

 まずはこの子の回復を待っていろいろお聞きしま

 しょう。

 それから考えたらいい事です。

 まずはこの子が目を覚ました時に用意する食事の

 手配をいたしますね。

 後入浴はとお着換えを」


二人とは違い淡々としたその姿はどうもよく見慣れた光景だと言っているようだった。

ある程度の正当性のある意見にぐうのねもでない。


「たのんだよアンリエット」


ヴィルヘルムは顔を歪ませながらそういうしかなかった。


アンリエットは仕方ないとばかりにふっと息を吐いてテントを出ていった。





子供が目を覚ました後、野菜のスープと柔らかなパンとミルク、フルーツを準備され、それらをゆっくり食べさせた。

しばらくして湯あみの用意をされて清潔で綺麗な服を着せられて、アンリエットに連れられて今度は居間に通された。

そこにはヴィルヘルムとリライディナ、ヴォル、皇子付侍従長、近衛隊長、フランソワがすでに寛いでいた。


「おとうしゃま!!」

子供はヴィルヘルムを見つけると一直線に駆け出してその膝に当然とばかりに座り抱きついた。



「だから……。おとうしゃまって……」

ヴィルヘルムはそう続けて話そうとすると、アンリエットが目線でそれを止めるように訴えかけた。

ヴィルヘルムはしかたなく口を閉じて話すのをやめた。

その膝にニコニコしながら子供はちゃっかり座っている。



アンリエットはつかさず子供に近寄って、膝を床について目線を下げて優しく頭を撫でてやる。


「おかげんは大丈夫かしら?」


子供の大きな頭が大きく上下する。


「そうよかったわ。

 坊やのお名前は?」


「アンドリュー・デア・べりじゅーずだ」


「アンディ様ね。

 どうやってここにいたの?

 この辺りには人が住んでたり、あったりした様子

 はなかったのだけど?」


「わかんない。

 僕は皇都のはずれの邸にいて、急に召使が旅の支

 度をしだして。

 用意された馬車に乗ってここで貴方の父上がくる

 から待っているように言って皆何処かに行ってし

 まったよ」


「どうしてすぐにお父様とわかったの?」


「邸にある肖像画がおとうしゃまだと亡きおかあしゃまが言っていたから」


「お母様の名は?」


「ファビエンヌ・デア・べりじゅーずだ」


ここでヴィルヘルムはギョッとしたその名に心当たりがあったからだ。


ファビエンヌとヴィルヘルムはどういう関係なのか?

子供の謎は?

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