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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚ニ年目の二人 隠し子発覚?

ヴィルヘルム達のガザルザング要塞陥落に皇宮では激震が走った。

一方のヴィルヘルム達は皇都へとクリスティア商団の名を借りて進路を進めていた。

フェレ皇国のガザルガング要塞から大キャラバン隊を率いて、ヴィルヘルム達はクリスティア商団として出発した。

すでに闇の世界はその支配を譲り始めて、空は藍色と青色、薄黄が混じり合い太陽がその地位に昇り始めている。


深夜に戦いが行われてしまった為に戦いの後の疲れで皆荷馬車の中で深い眠りに陥っている。


御者だけが、交代でその旅路を進めていた。


北部の様子は荒野の砂漠のそれの様相だ。

数年前まではこの辺りはのどかな牧草地で、多くの牧畜の盛んな地方だった。

住人達はそれなりに生活に困らない暮らしが出来ていた。

牛、ヤギ、鶏、羊が住人の数以上の頭数があちらこちらに勝手に生えている草を食べ、小川の水を飲んではスクスク育った。

農民はその肉、毛、ミルクなどを売り、又加工した物を国内、海外には一定程度の規制内で販売をしては生計を立てていたからだ。


中には加工工場や繊維加工工場を経営する者もいて一定程度豊かな地方だった。


それが昨今、天候不良で家畜が弱り、また家畜の疫病が追い打ちをかけ死ねケースも出てきた。


そうこうするうちに農民の暮らしがたちゆかなくなリ、土地を手放し夜逃げする者も現れ始めていた。

土地は荒れ果て残された者は村を捨てるか?

死ね時を待つか?

他者の少ない食糧を奪いあうかしか生きる道がなかった。

皇都はなんの手も打たず、ただ呆然と報告のみを受けるに留められていた。

何故ならほとんど全ての地方で同じ状況であり、また皇都も地方を気にかけるどころではなくなっていたからだ。

皇都ではそれなりの人口をかかえ、しかも地方の流民がなだれこみ、治安や衛生上非常に悪化していった。

それに加え食料困難から主食のパンの材料が高騰し、卸業が市場に出さずあり得ない値段で取引されていた。

もう市民は限界だった。

各地区で「パンを我らに」とデモが自然的に発生しては、いろいろな政治的色合いの濃いグループが多発的に発生していた。


治安部隊と警察隊や下級軍隊が制圧に乗り出すが、潰しても潰してもデモはなくならないのでもはや

強権政治では立ち行かなくなっている。


今皇都へ向かう道は広くはあるが、雑草が生え砂ぼこりは激しく巻き上がり行く手の視界を奪う。

目に見える景色はひたすら延びる地平線と埃だらけで、強い風で巻き上がる砂埃に時折現れる朽ち果てた家々が見えるだけで住人は見かけない。


家の中に人のいる気配はするものの出てきたり、歩いている者は一切見かけない。

あるのはカラスに啄まれ、無残に朽ち果てた死体だけだった。

まさに地獄絵図さながらの様子に御者も目を覆い、恐怖で震える心を振り払いながら、馬の鞭を打ち先を進める。

ひたすら進んだ先にようやく小さな泉とサボテンの木々が辛うじて生え、休息をとれる場所を見つけた先頭の御者は昼食を兼ねた休憩を取る事にした。


「さぁ。昼食にしましょう。

 休憩です」


次々荷馬車は停車してゆき、綺麗に順に並んでいった。


しばらくして荷馬車に乗った下働きの者達が次々に降り、積まれたテントや調理器具、食材、休息に必要な品々を降ろしていった。


人々の忙しない動きで眠っていたヴィルヘルムやリライディナ達が目を覚まし始め、一気に賑やかになり始めた。


「はぁ〜ヴィル!

 おはよう」


リライディナは眠たそうにしながらも明るい声でヴィルヘルムにくったくない笑顔を見せて言った。


「おはよリラ」


「ねぇ難攻不落のガザルグンガ要塞をあんな簡単に

 落とせるなんて信じられなかった!」


「難攻不落なんて城も要塞もないと思ってる。

 もしあるならエゴだ。

 禍心は綻びになる。

 いままであの要塞は確かに難攻不落だった。

 記録からね。

 でも大軍で押し寄せた時に限るし。

 そもそも少数で攻撃されるなんて思いもしなかっ

 た。って事だろう。

 それに事前に要塞内の地図を手に出来たのは大き

 い。見てピントきたんだ。

 何せ異常に狭かったからね。

 それに武器庫の位置も分散してあったから散らば

 って叩けばやれると思った。

 しかも狩猟大会の当日は皇軍や要塞内も浮き足立

 ってるものだ。

 極めつけは花火大会だ。

 誰もあの夜煙や火花が見えても疑わないだろう

 とね。

 実はオルファン皇軍の参謀を兄上からよく相談さ

 れるんだ」


リライディナは何度も頷きながら、ヴィルヘルムの顔をふんわり花が咲いたように眺めてうっとりしている。


ヴィルヘルムが恥ずかしさに思わず目を背けようとしたくらいに。


「すごい!

 ヴィル尊敬するよ。

 私の夫はすごいんだ!」


リライディナはあまりの嬉しさにはしゃいでヴィルヘルムの肩をその固い筋肉質に柔らかな自分をなんの抵抗もなく強く抱きしめた。


愛情表現なのか?

ただ単にそこに愛はないのか?


ただヴィルヘルムはどうしたらいいかオタオタして動揺してしまった。


そんな和やかな雰囲気は呆気なく終わりを告げる。


泉近くの兵士達の騒がしい声が、何事か起こったのかを告げていたから。


「……なん…」


「どこ……」


「なんだ。何だ?」


兵士達がざわめき始めたからだ。


「リラ!

 ちょっと行ってくる。

 何か起こったみたいだ」


「ああ。私も行くよ」


騒ぎを駆けつけて集まった兵士達の波をかき分けて

た先になんだか泣き声が聞こえてくる。


誰?

誰の泣き声?


二人が見た先には。


二人の兵士の前に小さな子供が小さな手を両目押さえて涙を流しているのだ。


「子供??

 なんっ……?」


ヴィルヘルムは自分の映し出す光景が嘘のように、妖のように思えてしかたなかったのだ。


まじまじとその子供を見つめていると。

子供と瞳が合った!


その瞬間その子供は信じられない一言を叫んだのだ。


「おとぅしゃま!!」


子供はまっしぐらにヴィルヘルムに抱きついて両足を捕らえて離さない。


「ヴァァァぅぁゔァァァァ〜〜〜!!」



「えぇぇ??………えええぇ゙…」


薄空色の空にヴィルヘルムの驚愕の叫び声が木霊する。

突然のヴィルヘルムを父と呼ぶ幼い子供が現れる。

この子は誰の子供?


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