外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】結婚一年目のニ人 アレキサンドロヴィッチ離宮の謎
初夜にリラディナにコテンパに打ちのめされたヴェルヘルム。
二人のヒキガエルひっくり返る事件の後、気まずい雰囲気の中離宮の外れにある森に。
「いやぁ。
両殿下には新婚そうそう申し訳ございません。
何せ習わしなもので。
私としてはこの様な日に誠に心苦しいのです
が…。」
そう言ったのはこのアレキサンドロヴィヂ離宮の神殿を管理している司教だ。
司教はディア教の中で神と民を繋げる役割を担い、神官と違い俗世で生活しながら教えを広める。
その出で立ちで一目で司教とわかる。
白い衣を頭から下身体をすっぽり隠し、頭からベールを被り僅かに瞳と口元を見せている特殊な装いをしているからだ。
なんでも穢れを出来るだけ避ける為だそうだ。
瞳は曇りもない清らかな淡い水色で、やや目尻が下がっている。
優しく親しみやすい印象を受けいかにも聖職者らしい好感のもてる人物だ。
「直系皇族の結婚後に離宮にいらした次の日にお連 れするのが決まりでして…」
司教はバツの悪そうな顔で、俯き加減で申し訳なさげだ。
という事は滞在した皇族はその日必ず司教の訪問を受けたという事だろう。
兄上夫婦もいたたまれなかったろうと想像した。
そう今日は初夜の翌日。
司教は昨夜は何もなかったなどとは思っていない。
ヴィルヘルムは赤い血走った目をしていたし、非常に眠そうに何度も欠伸を繰り返している。
リライディナは昨夜の失態を思い出しては顔中真っ赤にしてずっと下を向いているし、二人とも酷く恥ずかしくてまともに顔を合わせられない。
この状態なら事後だと思われても仕方なかった。
何もない初夜だったが、二人は初めて日の明るい場所で顔を合わす気まずさに耐えかねていて顔を合わせないだけだった。
しかしその態度がかえって司教の申し訳ないという気持ちを助長している。
今日はこのアレキサンドロヴィッチ離宮付きの司教から文をもらい、太陽が真上を照らす少し前に待ち合わせ、離宮の裏の森に足を踏み入れる事になった。
促され森に入っていく二人は緑のシャワーに途端に癒される気分になる。
木々から差し込む光が深い緑色の森を照らし、苔は水を含んでキラキラとその水滴が光っているその光景は神秘的だ。
「綺麗!神々の世界みたい」
リライディナが呟くように言葉を漏らす。
「ええ。そうですね。
ここはその言葉が一番相応しい場所です。
詳しくは現場に到着してからお話しいたします
が。
まさにこの森に相応しい遺物がございます」
何か確信めいた司教の言葉が耳に響く。
「この離宮はご存じの通り特別な宮殿です。
その理由はのちほど。
直系男性皇族の方が婚姻し、こちらに滞在し
てから新婚旅行という名の外遊をなさいます。
皇太子殿下も妃殿下と共においでになりました。
但しこの滞在とこれから参ります場所は極秘の事
なれば。
両殿下も他言はなりません」
二人は大きく司教の言葉に頷いた。
「これから現場でお話する事は事実であり、今後の
お二人の試練になくてはならないものになるでし
ょう」
司教の肩がわずかに震えているのをヴィルヘルムはただ事ではないと予感し、冷たいものが背筋に通る感覚でゾクゾクと悪寒が走る。
ヴィルヘルムは十分覚悟していたが、司教に改めて言われると待ち受けるものの大きさに心臓の鼓動も激しく波打った。
随分歩いてようやく森の小道を抜けると眼下にあった場所を見て呆気にとられた。
壁?崖?
高さは何メートルあるのか?
草が生い茂り、木々の葉が舞い散る嶄然とした切り立った延々に天まで届きそうな崖が立ちはだかったいったのだ。
いや崖か?
積み上げられた石の残骸か?
ヴィルヘルムは崖から瞳を離さず、その壁に吸い寄せられる様に前に立つ。
リライディナも後ろに続いた。
森の中から背に草の香りのする風が吹いた。
まるで二人を壁に誘導するように。
崖?壁?
脆くかけてしまってゴツゴツした自然石の様にも見えるし、所々人工的な石積のそれにも見える。
天高く聳え立つそれのその先を確かめようとするが、雲に邪魔されてまったく見えない。
「こ…れ…これは…壁なのか?…崖か?」
あまりの光景にヴィルヘルムの口から漏れた。
「司教。ここは?」
リライディナが振り向いて司教に大きく見開いた好奇心旺盛な瞳で言った。
司教は目をさらに細めていかにも愛らしいといわんばかりに微笑みながら語った。
「これはアレキサンドロヴィッチ城にありました。
城壁の跡でございます」
「えっ?あの?アレキサンドロヴィッチ城?」
ヴィルヘルムは聞き覚えのあるその名に懐かしさを覚えて思わず聞き直した。
幼い時に母から聞かされた母からの祖父母の冒険と戦いの物語に出てくる神の城の名だった。
ワクワクしながた祖父母の活躍をのがすまいと前のめりで聞いた物語。
幼い日の懐かしい思い出がヴィルヘルムの心をほっこりとさせる。
司教は大きく頷いて落ち着いた口調で話し始めた。
「ヴィルヘルム様は良くご存じだと思います。
アレキサンドロヴィッチ城は神と人を繋ぐ地であ
り。
ヴィルヘルムの祖父母であられるフェレデン帝国
セヴィエ一世陛皇帝陛下とエルミエ皇后陛下が
神の力を得て、内乱を平定され今のファレイデン
帝国の繁栄をもたらしました」
「はい。その事は母上から子供の頃から寝物語によ
く聞かされました。
フェレイデン帝国では事実とフィクションも交え
た書物で伝わって知られています」
「えぇ。
両陛下は帝国を平定後に城跡だけが残りました
が、神の城であった城壁跡はそのものに宿る物が
あると考えられました。
三キロあった城壁を三か国に分散して残されまし
た。
すなわちここオルファン帝国、フェレイデン帝
国、アフェルキア公国にです」
「えっ?
それは知らなかった」
「はい。極秘のうちに。
おそらく知るのは各三か国の管理者司教、君主と
男子皇族や公族の方だけです」
「今もなんだかの恩寵はあるのでしょうか?」
「えぇ。
まずこの三か所の城壁跡の位置を三角形に結ぶと
中心地がフェレ皇国なのです」
「えっ?フェレ皇国?」
「ええ。リラディナ殿下の故郷ですね」
「ええ。幼すぎて故郷の事はほとんど覚えていない
けれど」
「当時のセヴィエ一世皇帝陛下は神の恩寵が消滅し
たかもしれないが、何かの恩寵が残されているの
ではとお考えになり残された城壁を移築されたの
です」
「それで?」
「今からお見せします」
「今から?」
「どうやって?」
「これからご覧になれますよ。
さぁ目をそらせずじっと城壁を見ていてくださ
い」
リライディナは二人の話を隣でポカ~とした表情で見た後に言われるままに城壁を見つめた。
皇后の愛と復讐と…それは全てはこの日のために
でてきましたね。
アレキサンドロヴィッチ城の謎、消えた神の痕跡がいま明かされる。
これからの二人の行く道がようやく灯され始めます。
次回新たな出発に向けてのクリスティア商団参加します。
「逝去した皇女は剛腕凄腕大商団女団長になりました」のキャラ登場します。
是非お楽しみに!
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