外伝【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】婚約一年目の二人 帝都への道のり
離宮で婚約者の家族と過ごすリライディナは優しく家族として迎え入れられる。
夏の皇室のバカンスは二カ月、しかし二カ月はあっという間に過ぎ去った。
家族で乗馬や狩猟、森や湖でのピクニック、風景を描いたり、楽器を演奏したり、歌を歌ったり、軽い剣術さえ家族で楽しんだ。
時にはイスハファンの有名楽師や歌手、俳優を招いて小さな劇場でコンサートも開催され、夜は湖面越しに花火が打上げられる夜もあった。
リライディナは全て初めてな事ばかりで、毎日興奮しては。
「こんなの初めて!」
を連呼し続け、その回数や毎回だったので、口にする度皆クスクスと笑って賑やかさは絶えない。
また違う日にはイスハファンに滞在している傍流の皇族達と大公家の一族が、それぞれ挨拶に来ては一時を共有した。
概ねリライディナは親族達に温かく迎えられ、好意的に接してくれた。
ヴィルヘルムは一安心だと胸を撫で下ろした。
家族は彼女を気に入っているが、皇族に繋がる者は何かといいたがるものだというのはヴィルヘルムは痛いほど知っているからだ。
自分に近づいてはあからさまに「皇太子殿下より皇子殿下が皇位に就くのが相応しいでしょう」などと、酒の席で連呼する愚か者もいた。
決まってヴィルヘルムはそういう輩に皇室を侮辱した罪で必ず大神殿に告発していた。
皇族同士のトラブルを皇室に持ち込むとかえって悪化する大神殿は皇室と現在良好な関係を築いているので協力的だ。
大抵そういう人物は一族内で問題を起こしているか?
要注意人物としてマーカーされているので、一族救済する事なく、即大神殿直轄の救済院という名の施設に収監された。
表向きは施設管理というなの隔離施設に強制連行され永遠に戻ってこれない。
処刑されないだけよかったと思うべきだ。
僕だってかかる火の粉は払いのけるのが吉。
とヴィルヘルムは思う。
甥がいるので、皇統は問題ないし、あくまで僕は一番近いスペアなのだ。
その分楽しみたい。皇族という立場上自由には出来ないが皇太子になるよりも断然自由だ。
人生をおおかしたかった。
スペアで十分だと思うヴィルヘルムだ。
離宮に朝夕少し冷たい風が吹く頃、皇帝一家は帝都へと帰還する。
今回の旅路の帰りには皇子の婚約者も同伴すると知り、イスハファンの市民はいつもに増して熱狂的に皇帝一家を見送った。
以前は片道十日ほどかかった道のりだったが、豊かになったオルファンはすざましい勢いででインフラが整備された。
陸路の道路が整備され、現在は最短距離で三日に縮小されている。
点在する宿泊先は各領主達の館で、この時ばかりは名誉といわんばかりに盛大なもてなしを受ける。
皇帝曰く
「彼らは地方の新興貴族だが、侮ってはいけない。
彼らは宮廷には出入り出来る身分にないが、軍備
や警備など地方自治は彼らの腕にかかっている所
がまだあるのだ。
中央ばかりに目をやりすぎると不満は外壁から崩
れていくから」
と言っては、どこに行っても領主達のもてなしに満面の笑顔を見せ、少しオーバーなくらいのリアクションを取っては彼らを満足させていた。
僕にはとても出来ないな。
ヴィルは次男に生まれた性に満足していた。
地位とは責任を伴うのを父を見て知っていたからだ。
そしてようやく帝都に到着する。
次回宮殿で皇子の婚約者のお披露目会が行われる。




