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外伝 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】婚約一年目の二人 離宮での皇帝一家Ⅱ

無事に婚約者の家族に迎え入れられたリライディナは?

悩み事を抱えながら女子会へ

その日から新しい家族としてリライディナは大切に優しく向かい入れられた。

リライディナは多少言葉使いに注意しながらも自分らしさは見せてはヴィルの家族として過ごしている。


皇后エリーザベトはその日女性だけの。

つまり、自分と嫁フロンヌ、そして孫のアイシャ、そして息子の婚約者リライディナを「湖の辺にある東屋で女子会をしよう」と誘った。


リライディナは皇后に好印象なのだから断る理由もなく、どちらかといえば嬉しくてウキウキして部屋を出た。

女子会だから、乳母子のマーシャが同伴した。

女子会といっても見えないレベルの警護はつく。

ヴォルポルトもギャバンも湖畔の見回りを皇宮警察と近衛兵は東屋の周辺の守備についているので安心だ。


まさに初夏の日差しを避けながら、真っ青な空を湖面が映し込んで天と地が青色に溶け合う。


「綺麗~~海みたいよね」

アイシャが反射的に湖畔に向けて猛ダッシュした。

日差しのシャワーを受けて、小さなダイヤモンドを隠し持っていたかのようにキラキラと光る海かと思うほどの湖。

でもリライディナは海を知らない。

絵本の挿絵と地理の授業で見た絵くらいの知識だった。

でもきっとこんな感じだろうと想像するに十分な広い大きな湖で向こう岸はまったく見えない。

遠くに緑豊かな山々が波打つように聳え立っていた。


「では舟に乗りましょう」


皇后はそう言って、広い麦わら帽子を被り颯爽と世話役達を従え皆を桟橋に誘う。

二艘の小さな舟が横付けされていた。

三人乗りの小さなの舟ですでに漕ぎ手が緊張しながら待ち構えていた。


皇后とリライディナが、フロンヌと娘アイシャが同乗し、舟はゆっくりと岸を離れる。


ゆらゆらと揺れる舟に山々から流れていたかもしれない涼しい草の匂いのする風を運んできてくれる。


「気持ちいい」


リライディナは初めて乗る舟遊びにすぐに夢中になった。

皇后は好奇心の多い、感情をすぐに表情に出すこの皇女に更なる好感を持った。


歯に着せぬ素直さが特に気に入っていたのだ。


湖面ではイスハファンの劇場の楽師や歌手も舟で現れ、即席の湖上のコンサートが開始された。

四人は音楽と歌を楽しみながら、あれこれと感想を離しながら笑い合いまた語り合った。


一時過ごした後、お腹か好き始めた頃を見計らい、岸に戻り東屋でランチを楽しんだ。

皇后がこの時待ってましたとばかりに話し始める。


「単刀直入に聞くわねリラ。

 ヴィルに何か言いづらい事がありますね」


リライディナの心臓をいきなり射抜く皇后の一言に、軽い雷に撃たれた衝撃を隠しきれない。

いやそもそも性格上隠せないだろうが。


言いづらいが、ここにいるのは女性2人。

しかも夫を持つヒキガエルひっくり返った経験者なのだ。


リライディナはしばらく下を向いて両手の握り拳をギュッと握り締めたかと思ったら、いきなり席を立って叫んだ。


「結婚して、子供を作るにはヒキガエルがひっくり返る格好にならないといけないんですか?」


皇后はリライディナの一言にまったく反応出来ないでいる。

そう何を言っているのか全く分からなかったからだ。


ただ傍でいるマーシャは真っ青な顔をしている。

このままだと自分が皇女に性教育していらぬ事を言ったと叱責だれるのは目に見えていたからだ。

解雇もあるかもしれない………。ドンドン身体中からどれだけ出るんだというくらい脂汗がでてきてしかたない。

ただただ下を向いて事が過ぎるのディア神に祈っていた。


丁度皇后の反対側にいたフロンヌがはっとしてクスクス笑い始めた。


それは本当にクスクスでいかにもそうねと言わんばかりのリラの感性に対しての笑いだった。


「お義母様。

 それはきっと。

 初夜の…その夜の営みの事を言っているのだと思います」


すると皇后のその綺麗に澄んだ瞳にぱっと光が射しては消えた後、その白い歯を見せながら笑い始めた。


「ははっははっっ…面白い表現ですね」


皇后は珍しく可笑しすぎてお腹を押えながら、しばらく笑いに堪えその優しい笑顔でリラに微笑んだ。


「そうね。

 恥ずかしいわね。

 そうよね。

 あんな格好」


そう言ってリライディナの頭をその柔らかい手で撫で始めながら優しく宥める様に言った。


「でも大丈夫よ。

 明るくない所で誰も見ていないし、あかりを灯さなければヴィルも貴方を見ずらいわ。

 確かに初めは痛いけれど。

 ヴィルに十分大切にするように、出来るだけ痛くないように、努力するように言っておくから心配はな

 いわ。

 とても悩んだでしょうね。

 でも大丈夫よリラ。

 それにヴィルも必ず感謝するでしょうから」

皇后の柔らかな腕がリライディナの懐を大切そうに包み込んではおでこにキスを落とした。


きゅんと懐かしいような、こそばががゆいような恥ずかしいようななんともいえない気持ちが生まれたけれどでもいやじゃない。


皇后がそう言っているのだから、大丈夫だとリライディナは素直に思う。


隣のフロンヌはまたもクスクス笑っている。

面白い義妹が出来たと楽しんでいるようだ。


マーシャはまだ安心はできないと、じ~~~と地面の白い石を凝視して一歩も動かない。

早く終わって~~~!!

そう祈りながら。


さて大人と少女が三人が納得した頃、まだ5歳のアイシャはこの女子会の後、父親のいる馬小屋を訪れていた。

女子会の開催中に父皇帝と共に軽い乗馬をし終え、小屋に愛馬を戻す途中だったからだ。


そこへ愛娘が駆け足でやってきた。

父親を見つけたアイシャは小さな両手をこれでもかといわんばかりに、花々の香りを含んだ風を抱え込んで父親に飛びついた。


「お父様!!!

 ねえ!お父様!!

 お母様の中にいる赤ちゃんは。

 お母様のがヒキガエルみたいにひっくり返って出

 来たの??」


「………?」


娘に謎の疑問を問われ、一瞬全く何のことかわからない。

顔中に疑問符がついたまま何と言おうかとまじまじの娘を見つめた後ひらめいた。



「…お母様に聞いてみてからお答えします」


なんとなくその場を誤魔化して、愛しい娘を抱き上げて離宮へ戻った。


その夜妻にその話をしたらフロンヌは真っ青になりながら、昼の経緯と顛末を夫に説明しては大笑いをした。


「確かにね。

 ヒキガエルのひっくり返った格好か。

 面白いね義妹君は」



その後家族の語り草となった「子作りヒキガエルひっくり返る」の事件の顛末である。






この後離宮を家族と共に帰還して、いよいよ帝都の宮殿へ向かう。


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