外伝【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】 婚約一年目の二人 リライディナの見解
リライディナが優れた剣士だと知ったヴィルヘルムは自分の至らなさからショックで寝込んでしまう。
リライディナは責任を感じて手紙を書いた。
ヴィルヘルムはそれを読んでラブレターをもらった気持ちでいた。
一方リライディナは?
黄昏時のオレンジ色の日差しがガラス窓に射し込む居間でリライディナはヴォルポルトと二人ソファーで寛ぎ、乳母のファナは椅子に座り編み物をしている。
その隣でウトウトしているのは乳母子のマーシャだ。
「姫様。
あの皇子様は完全に姫様にほの字ですなぁ」
ヴォルポルトはすっぽり収まったソファーに身体を預け、これみよがしにニタニタ笑いながら楽しそうにリライディナをからかった。
実際楽しい。
高貴な皇子が自分の一番弟子と言っていい可愛い皇女にほぼ首ったけだ。
とヴォルポルトは思っている。
若い頃地方で持て余す力を発揮できず悶々と飯を食うだけの目的で緊張感のない貴人の護衛役を嫌々やっていた。
そんなある日リライディナの祖父に出会った。
なんとなくヴォルポルトを気に入った祖父はすぐにヴォルポルトの雇用主に交渉し彼を手に入れた。
そしてフェレ皇国の皇室に入る娘の護衛につけたのだ。
初めはまた貴人の護衛かとうんざりしたが、そんな失望はすぐに希望に変わった。
フェレ皇国に嫁ぐと決まった姫がヴォルポルトに懐いたからだ。
純粋な姫君が自分に懐くという思ってもなかった。
まだ少女と言ってもいいくらいの幼さの残る姫を守ろうとそのままフェレ皇国へ同行したのだった。
姫は輿入れしすぐに懐妊、皇女を出産するも懐妊しない他の側妃の嫉妬を買った。
出産の身体の疲労と側妃達の嫌がらせに精神的なストレスでそのまま寝込んでしまい、ついには死去してしまったのだ。
ヴォルポルトの嘆きは深かった。
しかし残された小さな生まれたばかりの命だけは守ると肩時に離れず護衛し、時に肩車をして父親役を買って出て、又自分で身を守れるように幼い時から木刀を持たせて剣の鍛錬を欠かさせなかった。
リライディナは護衛という主従関係以上の深い絆で結ばれている。
「ほの字?
ほの字ってなんだ?」
リライディナはヴォルポルトが何を言ってるか見当もつかない。
ぽかんとふあふあした何を言っているんだと口を尖らせてヴォルポルトをガン見している。
「ですから皇子様が姫様を好きだ!
って事ですよ」
ヴォルポルトは何故言っている意味がわからないのか?
何故かリライディナに伝わらないのか。
少しイラッとしながら怒るような口調で畳みかけた。
「もう姫様!
そういうの天然過ぎるぞ!!」
リライディナはそんな無礼なヴォルポルトに怒るかと思いきや、そんな事かと言わんばかりにふきだし
て笑った。
「ハァッ!
私もヴィルを好きだよ。
何いってんの?
当たり前じゃないか!
夫になるんだから」
隣で聞いていたギャバンはヴォルポルトがお互い顔を合わせ唖然として言葉を失っている。
かなり重症だ。
思いっ切り深い溜息をついた後、二人とも鈍器で殴られた様な頭痛に襲われた。
どうしたらいいのか?
この姫様に?
「………んっ。
ヴォルポルト。
そもそもそのほの字って言い方が古臭いんですよ」
そこへ助け船とばかりリライディナの乳母ファナが咳払いをする。
「皇女様。
旦那様が好きというのはとても良い事です。
でもその好きはヴォルが好き、ギャバンが好き、マーシャが好き、私が好き、剣が好き。
そういう好きではないのですよ」
「えっ?
一緒じゃないか。
何が違う?」
リライディアは激しく動揺した。
皆好き。
なのに違う??
「もっと大切で自分よりも大切で。
誰よりも大切な方という意味です」
ファナがまるで生徒に言うようにリライディアを嗜める。
「ふ~~~ん。
ちょっとよくわかんないな」
リライディナは腕を組んでしまいには手を顎に乗せて考えてしまった。
「姫様そんな事じゃ。
初夜を迎えられませんよ」
かかさず乳母子のマーシャが両腕を腰に当てて、ぷくっとふくれっつらでリライディナに説教し始める。
「えっ?初夜?」
「そうですよ。
姫様はいずれ皇子様のお子を出産されるんでしょ。
大好きな方の御子でないと!!」
「ああ。そうだな。
まあ。いずれな」
「いずれ!?
悠長な~~」
「まあ…マーシャ。
ヴィルとはそのうちにキスをして子供が生まれるだろうから。
心配はいらない!」
「姫様!!」
「皇女様?」
「姫様!」
「姫様!!」
そこにいた全員が呆気にとられて思わず叫んでしまった。
しばらくリライディナ周辺はざわついてこの問題にどう対応したらいいか議論が盛んになったのは無理からぬことだった。
ヴォルポルトにちゃかされたリライディナ。
ヴィルヘルムがリライディナに恋していると言われるが。
リライディナは恋の意味がよくわからない?
次回コメ要素炸裂します。




