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第十二章 新しきオルファン帝国

エリザベートとルードヴィヒの愛の物語完結です。


エリザベートは汗だくで必死に痛みと戦っている。

ルードヴィヒはいてもたまらず、皇后の寝室の前に陣取り落ち着きのない様子でウロウロと動き回っている。

まだ生まれるまで時間がある事を知らせてもどうしてもじっとしておわれず、また執務もする気になれない。


「皇后様 まだ力んではいけません」

産婆の声が中から聞こえる。


「いっ!!!いった~~~~~!!」


こういう時に人なりはでるものだ。

かまっていられない。痛いのだ!!!


エリザベートに何度もしかも段々強くなり傷みが襲い掛かる。


「くわぁ~~~~~わあぁぁぁ~~~~~」


何度も叫び声が聞こえて、ルードヴィヒは気が気ではない。


横で皇帝の女官長が皇帝に出産についてはと説明しているが、話が入ってこない。


最後の雄たけびの後、赤ん坊の泣き声が木霊する。


閉じられた扉がようやく開けられた。


寝台には汗だくになり、瀕死の様なエリザベートが寝ていた。


「君を失うかと思ったよ。」


朦朧とする意識の中で自分の叫び声を思い出して恥ずかしくなる。


ルードヴィヒはエリザベートに優しくキスをして、産婆から丸々と肥えた赤子を預かる。


「未来の光 皇子殿下でおいでです」


性別はどちらでもいいが。

その子を見てルードヴィヒは涙を流さずにはおれなかった。


「なんて可愛らしいんでしょう 陛下」

エルザベートが思わず顔を見て嬉しそうに微笑む。


「エリザベート!!!この子は……」


「陛下?」


「……大公殿下の肖像画にそっくりだ……」


皇太后が隠し持っていたペンダントにはめ込まれた大公の肖像画を手にしていった。

つまりルードヴィヒは大公の子供だったのだ。


一つの重荷を降ろせた皇帝は自分の皇位継承権が不当なものである事実よりも大公の子だという事実に十分満足していた。


大公もまた皇族であったのだ。

何の障害になろう。


皮肉にも皇太后の復讐の様に思えるエリザベートは因縁の恐ろしさにぞっとする。


ルードヴィヒが生まれたての我が子を抱きしめ生まれたての生きようとしている体温を感じる。

柔らかくてぷにゅぷにゅして自分を信頼して身体を預けている。


子供が憎いなどありえなかった。

この子の為なら命も投げ出す覚悟が生まれてくる。


「ありがとうエリザベート。 ありがとう ありがとう」


我が子の頬にその頬を付けながら涙を流す。


エリザベートは幸せを満喫していた。


「一つ聞いてよいですか陛下」


「ん?」


「陛下は何故フェレとの同盟を解消してフェレイデンについたのですか?」


「前皇帝に対抗したかった。憎かった。そう憎かった」


エリザベートはルードヴィヒを抱きしめる。

今となっては血が繋がらない事実はわかったが当時は父と認識していただろう。

父母を憎しみで満たしてしまう子のそれはひどすぎる。


「これから前皇帝の治世よりもさらに発展させましょう。国民が幸せと思えるように」


ルードヴィヒは大きく頷いてエリザベートを抱きしめた。


腕に愛する人を二人抱きしめてルードヴィヒは幸せだった。


もう発作は起こらない。

母は不幸だった。

大神殿で定期的に祈りが行なわれる。


ルードヴィヒは出来るだけ親子三人の時間を大切して過ごした。


毎日の様に夫に「愛している」と言いながら。


皇帝は正式に亡き大公の無実を調査させその汚名を返上した。

自身が大公の子供である事を公表した。

皆すでに善政を納めていた皇帝に何の不服があろうかと皇族、臣下、国民も受け入れる。

オルファン帝国に新しい皇朝大公の姓を取り

デョルアヌン朝オルファン帝国と正式に名乗った。


オルファン帝国はフェレイデンとの貿易で栄え国民は税を少額納めるだけですんだ。

フェレイデン同様に読み書きと計算を行う教育省が新設され義務教育がしかれた。

平民も実力次第で貴族に取り立てられ、孝を尽くして更に国は発展する。


残忍皇帝、悪魔の皇帝と噂されたルードヴィヒ三世は善政をしき他国にも外交を積極的に展開したので、自国の王女や皇女を嫁がせなかった皇帝や国王は後悔しきりであった。

フェレイデンの皇后がオルファンに幸せをもたらしたとエリザベートは人民に敬愛され「慈愛の皇后」と後世に名を残した。


その後皇子一人と皇女を四人産み育てた。

勿論ルードヴィヒに毎日「愛している」と繰り返し囁きながら。



追記:


フェレイデンの宮殿にエリザベートの皇子出産の朗報がもたらした。


「あの子が幸せになってよかったわ」


静かに女官長に告げた。


「皇后陛下の諜報活動の賜物です。

 オルファン帝国に女官として情報員を置くなどさすがでございます」


にっこり笑う皇后。


「元々噂は信じていませんでした。 

 ただ何かある事はわかったので後方からエリザベートの安全を最優先していました。

 何事もなく良かったわ

 ところでその者の手紙だと、あの子の早口が矯正されたそうよ。益々めでたいわね」


どこまでも抜かりない皇后だった。

これでオルフェン帝国のお話は完結しました。

かなりのダークな物語ですが、最後はハッピーエンドにしました。

完結しますが、是非最後までご愛読をお願いします。

ご愛顧ありがとうございます。

ブックマークありがとうございます。励みになります。


本編完結済

以降番外編や外伝を追加するかもしれません。

その際はご愛読いただけると嬉しいです。

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