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外伝 最終章 皇位奪還【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】決着の時Ⅳ

遂に最終決戦に勝利したヴォルへルム達は上皇王を捕らえファビエンヌの捜索にする事に。

「上皇王が倒れていた場所の近くのようだ

 が…。

 あの崖の上から落ちたと考えるのが妥当だ

 な」

ヴォルはそう言って指を指した場所それは上皇王を発見した所から崖の所が怪しいと足早に崖に近づいた。


ファビエンヌどうか生きていてくれ!

ヴィルヘルムは当時まだ幼くて顔を覚えていない。

その時の記憶を断片的でしか覚えていないが。


彼女と絵本を読んだり、絵を描いたりした時のその少女のはにかんだ様な様子はなんとなく記憶に残っていた。


一人家族と離れた寂しい日々の中での陽だまりの様なあの日を。無事にとそれだけをひたすら願った。


しばらく歩くとそのには崖の行き止まりで城塞の様に花崗岩の高い壁が行く手を阻む。

その崖の頂上に視線を向けながら生きていてくれ!そう願う。


ヴィルヘルムの汗額から汗が一筋流れ、ごくりと喉元が鳴る。


少し目線を挙げると一本の歪な松の木が生えている。

その幹と大きな枝の間に女性の身体がぶら下がっているのが見える。


「お母様!!」

崖に不自然に植わった松にぶら下がっていたファビエンヌを発見した。


太い枝に辛うじて腰で止まって風に煽られながら今にも落下しそうになっている。

その姿は打ち捨てられた人形の様でディアナの血の気が引いてくる。


服は破れたり汚れて風にヒラヒラ揺れてポタリポタリと血が滴り落ちてきている。

一刻の猶予もないがわかる。

服装は侍女のものではなく、最高品のいかにも君主の物に相応しいものだった。

それはつまりどこかのタイミングで二人は服を入れ替えたという事実だった。


そう上皇王はファビエンヌにまたしても身代わりをさせようとしたのだ。

ヴィルヘルムは怒りで頭がどうにかなりそうだった。

何故そんな事が平気で出来るのか信じられなかった。


「俺が助けよう」


ヴォルはそう告げると、ロープをその松に投げかけると強く結び、それを自分の腰に縛り付けた。


「やぁ~~~~~」

崖を蹴り上げて大きな足の裏をゴツゴツした岩にしっかりとつけて崖を登り出す。


見る見るうちに機械にでも吊られているかのように、まるでそのは大地がといわんばかりに軽快に昇る姿は圧巻だ。

あっという間に女性を肩に乗せて下へと戻ってくる。


ヴィルヘルムの瞳にヴォルの肩から血が滴り落ちてくるのがわかり血の気が引く。

かなりの重症で一刻の猶予もない。


「早く医師を!!」

リライディナが叫ぶ。


「了解」

フランシスが帆船へと戻って医師を連れてくる為に走り去る。


「お母様!!」


間違いなく懐かしい母の姿に安堵の涙が溢れ出す。

強く強く抱きしめるも身体は冷たくディアナの焦りと不安は益々つのる。


「お母様!

 目を目を覚まして!!

 お母様!!」


愛しい娘の声にも重症のファビエンヌはまったく動かない。

ヴィルヘルムが手を鼻にあてると小さな浅い呼吸が感じられた。

ウエスト部分は鮮血がべっとりとついて、そのから出血している。

布を当てて止血を試みるもその出血はかなりのものだ。

自分の服を裂いて傷口に巻いて止血するがドンドンその真っ赤な血であっというまに布は赤く染まっていく。


「お母様!!おかあさ…目を目を開けて!!」

涙がファビエンヌの頬にぽたりぽたりと滴り落ちる。

その時少し頬が、瞼が動いたようにディアナには思えた。


「お母様アンジェリです!

 お母様目を目を覚まして!!

 お母様!!」


その声に反応するファビエンヌ。


何度も瞼を動かしてようやくその瞳を開けるとぼんやりと自分の娘の顔が現れると、瞳がぱっと開き愛しい我が子の存在に気づいて柔らかで温かい眼差しが瞳に宿る。


「お母様!」

ディアナが母の懐に飛び込んだ。

弱いけれど母の心臓の音が聞こえ少しほっとする。


「お母様~~」


そのディアナの頭を震える手で愛おしそうに撫でると子供の体温がぐっと自分に伝わり涙が自然と流れてくる。


「あぁ~~愛しい子。私のアンジェリ。

 無事だったのね」


弱弱しいかすれた声にディアナは母の瞳をじっと見つめる。

自分に向けられた無償の愛。


「うっう……おかあささ…ま…」


「アンジェリ…愛しい……子。

 貴方の…幸せだけを願っているわ。

 …貴方の………お父様…フェレ=ディエンブルグ大公……王配殿下…の…

 私が恋をしたばかりに…あの人を…貴方を…でも愛したの…」


「えっ??」


「ごめんなさいね。

 上皇王の王配でいらした。

 私は異国で一人ぼっち…。

 辛かった。

 そして何度も命の危険に………晒され精神を保つのも難しかった……。

 そんな時に貴方のお父様に…出会った。

 恋をした。

 結ばれた。

 でも……。

 上皇王は許さな……。

 そうよね……。

 私が妊娠した後、お父様は私を逃がした。

 そして上皇王の前で……自殺した。

 私達の行方を……探らせないため。

 そして自分に全ての罪を抱えて。

 御免なさいね」


「お母様。

 ………お母様とお父様は愛し合ったのね」


「ごめんなさい。

 ヴィルヘルム殿下。

 リライディナ妃殿下。

 いえ陛下。

 ………この子の命を守るため。

 そして……あの離宮での日々は孤独な私にとって夢の様な…

 幸せな時でした」


「…驚いたけど。

 気にしないで…それより………早く良くなろう。

 アンジェリの為に。」


「ゲッポ~~~ゲッ!!」

ファビエンヌの口から真っ黒な鮮血を吹きだす。


「お母様!!」


その時に医師を連れたフランシスが戻ってきた。


医師はすぐにファビエンヌの脈を取り、傷口を確認し内臓のあちこちを少し触る。

明らかに血だまりがそこかしこにわかり、脈もドンドンと弱くなっていく。


医師は首を左右に振ると静かに立ち小さな声で伝えた。


「もう手の施しようがございません。

 静かにこのまま臨終を迎えされてあげてください。

 移動すると身体の負担が大きいです」


「お母様!!」

母の頬を自分の頬に重ねて何度も何度も摺り寄せる。


「ファビエンヌ。

 あんまり話さないほうがいい」

ヴィルヘルムはそういうので精いっぱいだった。


「殿下。

 どうか…この子を…よろし…」


「勿論だとも。

 立派な幸せな人生を送れるように。

 出来る事はなんでもするよ」


「ありが……ごさ…。

 愛して………いるわ。

 私の娘…。

 どうか…フェレの明日に……。

 お父様が……出来なかった………未来

 を……。おとう…願っ……。

 担う………人になる……の…。」


最後は聞き取れずぷつっと糸が切れるように二度と言葉は紡がなかったそう逝っていまったのだ

苦しみの表情は微塵も感じられず柔らかな微笑みを湛えながら。


「おかあ…お母様~~~~~」


慟哭が渦を巻いてアンジェリに襲いかかる。

悲痛な叫び声が空に木霊する。

その場にいる全員が涙を流し、この不幸だが信念の元に生きた一人の女性の旅立ちを見送る。


リライディナがアンジェリを後ろから抱きしめて優しく囁く。


「お母様を綺麗にしてあげよう。

 そしてフェレ皇都に戻ったら、お父上と一緒に並んで埋葬しよう。

 やっと出会えたお二人だから。君のこれからを見ていてくれるよ。

 だから。

 今は泣くといい。

 偉かったね今まで。

 これからも傍にいる」


「ディア……いやアンジェリ・ディア・フェレ=ディエンブルグ。

 僕達に力を貸して。

 母上の望みを……。

 一緒に……フェレ未来を。」


ヴィルヘルムは何とか言葉を絞り出してアンジェリの背中を大きな手で優しく撫でるのだった。


二人の精一杯の労りだった。

その温かさはアンジェリに伝わってなんとか絶望から抜け出そうとしていた。

アンジェリは母の亡がらを抱きしめながら、涙で言葉にならないだけど何度も何度も頷いた。

その姿にリライディナもつられるように涙に頬を濡らしていた。


次回遂に最終回前編

マリアンネをヴィルヘルム達はどう制裁するのか?

フェレの未来は?

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