外伝 最終章 皇位奪還【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】決着の時
皇宮の崩壊時に帆船に助けられたヴィルヘルム達。
探知機で逃げたクロフォード公爵にかけた浮遊石の粉を探知機で追いかけた先に行きついたのは砂漠だった。
砂漠に待ち受けるのは?
上皇王と浚われたファビエンヌ達を追いかけ、助けられた帆船は雲が勢いよく流れる空を悠々と駆けていた。
「探知機の追跡ははこの付近を指して停止し
ている。気をつけて!」
フランシスは目線をやや探知機に落としながら強張った声で伝えた。
最後の決着の地になるのは間違い。
ヴィルヘルムは緊張の糸が張りつめて呼吸が浅くなる。待ちに待った決着の時は近い。
「了解」
「了解」
「了解」
帆船は探査機の示した地点でゆっくりと停止する。
「着地するぞ」
フランシスが青空に向け叫ぶ。
帆が畳まれて巨大な浮遊石が落とされていくと同時に、船は砂丘へと静かに腰を降ろし地上へ着地した。
巨大な船はまるで水面に浮かぶ小舟の様に静止している。
ロープが降ろされて皆砂漠へ降り立った。
ガサッ!
ザッザッ…!
ザッザッザッ…!
ガサガサ!ザッザッザッ!
「気をつけて砂で足元が安定していない」
フランシスがまず一歩を踏み出し伝える。
「了解」
「了解」
「了解」
「了解」
探査機と方位磁石を手にフランシスが先頭に一歩ずつ足を進めていく。
「かなり近くだな」
呟くようにフランシスがぼそりと呟く。
「クロフォード公爵か?上皇王か?
もしくはにニ人?
いやここは最大同盟国グーリューク王国の
国境だ。
それに援軍も来ている可能性が高いな!」
リライディナが独り言のように呟いたその言葉はもっともすぎて皆ハッとする。
そうだ追跡は順調に行き過ぎていてある意味怖いくらいだった。
グーリューク王国はフェレ皇国と同じく軍事王国でそうそう簡単に倒せない軍隊だ。
「ああ。
厳しい戦いになるな」
ヴィルヘルムは自分に言い聞かせるように言葉を吐く。
「ひとまずディアナの事は任せたよリラ!」
少し前なら僕はリラを守る事を中心に考えていた。
でも彼女は違うんだ。
守られるだけでは守れない事を。
二人で守るには彼女を信頼して初めて守れるんだ。
そう思っての言葉だった。
「任せてくれヴィル!」
リライディナの笑顔が眩しかった。
それだけで満足。
そんな一瞬だった。
見渡す限りの砂丘。
強い日差し本当に、こんな所に上皇達がいるのかと疑いたくなるほどの荒涼とした光景だ。
しかし視線を少しあげてやれば、なんとそこは崖が城壁の様に連なり永遠に続いている。
その頂上には青々と木々が生い茂っていて、動物の鳴き声も空に木霊していた。
生と死の。
まったく正反対な世界がそこに存在していた。
「えっ??」
圧倒的な存在感が支配した場所であるここはこの星の境界線であるような。
まさにエルディア大陸の創世記に出てくる景色にヴィルヘムは息を呑んだ。
「あっ!!」
ヴォルが叫び、砂丘の先を指差す。
「あれ??
あそこに人が……」
アレキサンドルが叫ぶ。
砂丘の先に一つの影がわかった。
そう。
じっと目を凝らすと人が倒れている。
動かない。
「あっ!!」
次の瞬間ディアナが突然必死の形相で走り出す。
息を切らせながら。
風が舞い砂埃が立つ。
「ディアナ!!」
リライディナが慌てて追いかける。
「早く行こう!」
ヴィルヘルムの言葉で全員が駆け出した。
砂を勢い跳ねる。
ディアナは息がきれるのも、小さな足は今にも砂に取られようとしている。
しかしそんな事はお構いなしでまっしぐらにその横たわった人の傍に駈け寄る。
「お母様!!」
ディアナが叫ぶ。
うつぶせに倒れているのは女性。
所々破れた汚れたドレスは濃い群青色の皇宮の侍女の衣装だ。
その女性の元に駈け寄り、小さな手で上半身を起こしては力いっぱい抱きしめた。
「お母様~~~~~!!
お母様!!」
久しぶりの母の温もりがディアナの心臓を揺さぶりかける。
いままで耐えていた母への慕情は胸の奥からこみ上げて、決壊したダムの水が濁流の様に一気に流れてくる。
とめどもなく流れる涙は止まる事を知らないようだった。
「WAAAA~~~~~~~~~~WAAAAAA~~~~」
乾いた空にディアナの鳴き声が亀裂の様に響いた。
皆その光景にどう声をどうしたらいいのかただ立ち尽くして見守るしかなかった。
ヴィルヘルムが声をかけようと一歩歩みを進めた時だった。
PI〜〜〜〜〜〜〜〜PI~P〜〜〜〜〜〜〜PI~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
突然の機械音が鳴り響く。
「ディアナ!
ディアナ!!離れろ!!
そいつは違う!!
離れろ!!」
フランシスの声が空を切り裂く。
「えっ??」
遅かった。
振り向こうとしたディアナはぐっと身体が後ろに引かれる。
人の懐に入った感覚が襲う。
ぴたりと寄せられた身体は母のものとは対照的で氷の様に冷たかった。
喉物に冷たく固い鋭い剣先が突き立てられているがわかった。
「あぁ~~探知機か?
もしかしてクロフォード公爵に浮遊石の粉
でも投げつけた?
あぁ~~もう少しだったのになぁ~。
残念~ 」
その瞳に狂気さを宿して、今にもディアナの喉を切り裂かんばかりに言い放つ。
「ファビエンヌではなく。
上皇王だな。
もう観念するんだ。
フェレの皇都とその領地の全ては革命連合
軍が掌握した。
大臣や官僚、フェレの貴族達は全員無条件
降伏したよ。
君主として堂々と最後を……」
ヴィルヘルムは興奮させないように静かに諭す様に言葉を選んで伝えた。
「ふっ。
なんで私が……?。
まだ私の運がなくなったと確定するには無理がないかい?
この子を死なせたくはないだろう?
もし私に危害を加え様ものならこの子をここで殺すよ。
この子は不義の子だ。
いやそうでなくてもなんの躊躇もなくね。
やるよ。
だってお前達が私を殺すより、この場でこの瞬間この子の首を狩る方が何倍にも確実で早いからな。
何今は私の負けかもしれないけれど。
これからはわからないだろ?
未来は誰にもわからないしね。
さあ~後ろに下がれ。そしてそのに武器を置いて行くのだ。
この子を殺されたくなかったらね」
ニヤニヤ笑いながら狂気の笑顔の奥に人知れぬ邪悪で悪魔な独裁者の姿を見せつける。
ヴィルヘルムはディアナの危機に寒気と激しい苛立ちが起こる。
怒りで爆発しそうになる。
しかしそれこそ最後絶対。
迷うことなくこの女は喉を切り裂くだろう。
子供などと躊躇せずに。
額から汗がすっと流れる。
「……皆…いう通りにしよう」
そう言いながらやや後ろに下がる。
そして観念したかのようにゆっくりと前に武器を静かに置いた。
どこかに隙がないかしっかりと上皇王を凝視し視線を外さない様に後ろへ後ろへと下がる。
皆も同じように武器を置き、息を殺す様にゆっくりゆっくりと後ずさりしながらも上皇王に視線を外さない。
ディアナの全身から血が落ちる感覚が襲う。
僅かに触れる刃から傷を作り、たらりと血の雫が垂れる。
悲痛で真っ青になりながらも歪んだ後悔の
表情で皆を見ている。
恐怖からではない自分の浅はかな行動で、迷惑をかけているのを派手で感じているからだ。
「ご…御免…ごめんなさ…い…。
私はいいの!
上皇王を!倒して!!」
涙で皆の姿が見えない。
あのオアシスで会いスパイとして潜り込んだのに。
私の為に一緒に…。
後悔の波が幾重にもディアナを襲う。
「ふっ!
そうだそうだ。
素晴らしい仲間意識だね。
そうだ。
面白い話をしてやろう。
あの龍だが。
あれはクロフォード公爵さ。
私の為に龍の揺り籠に飛び込んで生贄として龍に。
まあ途中で消えてしまった。
私を逃がしてくれたことは感謝するが。
最後の詰めが甘いのは昔からだね。
ああ~~。
この後の事を教えてやるよ。
私の背後にある砂丘の後ろに隣国の同盟国の国境警備兵が集団で待機している。
彼らと共にここを脱出して軍を整えてフェレへ帰ってくるよ。
その時まで君達の命を助けてやろう。
寛大な支配者だろう。
ハハッ~~~」
満足そうに得意げに皮肉まじりのその声が空にが響き渡る。
まるで悪魔の笑い声の様に不気味に。
囚われたディアナをどうやって助けるのか?
危機一髪のヴィルヘルム達はどうする?




