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外伝 最終章 皇位奪還【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】二人の母

龍に姿を変えたクロフォード公爵は力尽き霧の様に消えた。

上皇王とファビエンヌの生死は?行方は?


突然床を踏んでいた足元がガタガタと音を立てて崩れたかと思ったら。

床の石はすざまじい勢いで亀裂を起こし、あっという間に身体が宙に浮いた。


と思ったら内臓が浮き上がった気持ち悪さと、すぐに内臓が一気に下がってくる感覚の後に身体はすざまじい速度で落下していった。


ドン!

バキバキッ!!


バサバサッ!

ドンドン!


バキバキバキバキ!


バサバサバサバサッ!!

空を切り裂く爆音が響き渡った。


何かにあたって身体は強い衝撃を受けたと同時に頭を打撲。

そのまま気を失った。



どのくらい経ったか。

辺りは黄昏に霧が立ち込める淡い茜色の空を僅かに照らしていた。


ようやくぼんやりとした意識が徐々に戻ってくる。

瞳がパチリと開く。

立ち込める霧と舞い散る埃が視界を遮っていた。

手にカサッと何かに触れる。

すぐそばには折れた木の枝と葉が手に触れたのだ。


「助か…った?…?

 こ…こは?……」


ファビエンヌは死を覚悟していた。

だから今生があるのが少し奇妙で戸惑ってしまう。

助かった事実に頭は混乱して気持ちが追っつかないからだ。


身体は落下した衝撃から大木の枝に当たった事で衝撃をやわらげたようで助かった。

打撲の痛みに襲われていたが、それよりも気になっている事があってそれをあまり感じない。

誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡す。



「誰を探している?」

突然背後からよく聞いた声が聞こえた。


反射的に振り返る。


瞳が映し出した人物はファビエンヌを見下ろしている。

上皇王だ。


彼女も髪は埃と砂で乱れ、所々ドレスは破れ擦りむいて傷と打撲のせいで普段の威厳は微塵もない。

不服そうな顔つきでおもむろに荒れた手で髪をかき上げる。


「陛下」

口から言葉が漏れる。


「生きていたのが意外か?」


皮肉めいた口元がにやりと緩む。


ファビエンヌは思わず首を横に向けた。

対等に接した事がなかったし、何と言ったらいいか変わらなかったからだ。


「レオポルドのやつ。

 もう少し耐えていたらこんな目に遭わず

 にすんだのに。

 まぁ血が薄すぎるから仕方ないか」


恋人の献身の姿を見て尚平然と言う。

上皇王を信じられないとばかりに目を見開き初めて軽蔑の眼差しを向けた。


「あの龍はレオポルドだ。

 フェレ皇国始祖は龍の揺り籠を提供する代わりに目覚めさせた時に強力な兵器となる

 契約をかわした。

 その起爆剤が皇家の血だ。

 生贄を捧げ龍は目覚める。

 正当な血筋の者であれば龍は暴れまくり、エルディア大陸を焼き尽くしただろう。

 私が死ぬときは全ての世界が終わらなくては。

 しかし奴の血は薄すぎた。

 まぁいちかばちか。

 だったがな。  

 やはり力尽きた。

 なんとか私を救い出したがそれまでだった。

 やはり使えない奴だ。」


ファビエンヌはぞんざいなその台詞に言葉が出てこず呆然と上皇王を見た。


「なんて…」

彼が青白い光の中へ消えていったのをこの目で見てはいたが、まさか変わり果てた龍の姿になって自分達を救出したとは思いもおよばなかった。


「私があの男を愛しているとでも思ったか?

 くだらない。

 愛など利用する意外なんの価値もない」


「貴方様に愛する者がいなかったと言うのですか?」


「いるはずだとでも?」


「……。我が子を…我が子を愛さない親など

 いません」


「愛?我が子?

 これだから下下の者は。

 人にひれ伏すしかのうがないのだ。

 皇家に生まれた者は宿命を担っている。

 親子だからといって情に溺れては。

 皇家の者に生まれたのに、あんなに弱くては……。

 まぁもうこの世にはいない。

 譲位した後、病で逝った。

 公表はしなかった。

 世継ぎがいなくなれば継承に混乱が生じるだろう。

 皇子付きの者を全員殺害して隠蔽してやった。

 どこかから替え玉でも用意しようとしたら。

 奴らがやかまくして。

 この有り様だ。

 まぁ暫くの辛抱だがな」

 

この人は生きているべきなの?

人を我が子すら愛してはいないと言わんばかりのあの瞳が、それが真実だという事を語っている。

我が子を愛し守る事しか考えていないファビエンヌには理解出来ない言葉だけでなく、吐き気すら感じるほどの醜悪な言葉だ。


「可哀想な方……」


「フッ…おま…お前ら…揃って言うのだな。

 まぁだから死ぬ定めだろうな」

冷たい軽蔑を含む苦笑を浮かべた。


そんな上皇王を呆れた表情も隠そうとはぜすに強い言葉を投げかける。


「私を殺しても貴方は救われない。

 フェレ皇国民とリライディナ殿下。

 そしてフェレイデン帝国連合が。

 新たな未来を。

 フェレ皇国民は立ち上がるわ」


「……ふっ…。

 くだらないわ。

 もう亡命ルートは決まっているし。

 援軍の要請もしている。

 今まで黙ってやった見返りに賄賂で受け取った宝石や金銀鉱物はあまるほど蓄えているから。

 全てを使ってでも。

 お前の娘も殺してやる。

 そして愚かな者達の屍の上にすべてを取り戻し君臨してやる」


「…出来ないわ。

 貴方には貴方には出来ない」


「出来ないだと?

 お前に何故わかるのだ?」


「貴方は私の娘アンジェリを知らない。

 あの子は……。

 フェレの未来を担う子」


「くだらないな。

 実にくだらない。

 そうだ。

 冥土の土産に面白い話を聞かせてやろう。

 何故私が龍の揺り籠に飛び込まなかったか?

 簡単さ。

 ハッ…ハハァ

 私にはフェレ皇国皇家の血は一滴も流れていないのさ」



「……なぁ……?」

ファビエンヌの全身の血液が一気に足元へ落ちていく。

震えも止まらない。

それは驚きではない。

そんな重要で秘密を淡々と語る相手を生かす事はないと確信した。

間違いなく私を殺す気だ。

と思った瞬間ある思いは確信へと向かいファビアンヌを奮い立たせる。

上皇王はファビエンヌの様子に気がついていたが御構い無しで饒舌に話し始めた。



「私の母は先々代の皇王の第一皇妃。

 正妃だ。 

 母は色情魔の皇王に幼い頃から入宮しおもちゃのようにもて遊ばれて、精神がズタズタになる宮廷生活

 を送っていたのさ。

 そんな折に海外から訪問した貴公子がフェレ宮廷に現れた。

 宮廷の皇妃付きの外国人専用傭兵隊長として雇用された彼と接するうちにそういう関係になったん

 だと。

 母は私を産むとその後ろめたさと後宮の嫉妬と嫌がらせに精神が崩壊してね。

 泣くか。

 喚くか。

 徘徊しているか。

 物を壊すか。

 ……離宮で獣の様な生活を過ごしていたな。

 憐れすぎた。

 私は母が可哀そうになってね。

 ある夜見計らって母に猛毒を薬だと言って飲ませた。

 苦しくない薬さ。

 母の為さ。 

 それにまともじゃないはずなのに。

 時折私の出生の秘密を暴露しようとしていた。

 突然私に向かって当時の事を事細かに語ってね。

 その時私の出生の秘密を知ってしまったのだ。

 このままではいけないと行動した。

 その後皇王にでっち上げた証拠を叩きつけて彼の反乱を捏造した。

 皇王は恐怖心から暗殺の案をすぐに飛びついたさ。

 フェレの同盟国の援軍に従軍していたその外国人専用傭兵隊長を戦場で暗殺した。

 部下の話だと。

 暗殺団が来た瞬間悟った様に反抗もせずに刺殺されたそうだ。

 私の秘密は守られた。

 そして時を見て好機を狙って反乱分子と結託して皇位を奪って皇王を幽閉したんだ。」


「母親と父親を?

 悪魔だわ…!」


「ハッ!ハハア~~~!

 愉快だよ!!

 いい表現だ!

 そうさ。

 魂を売っても私は私の欲望を貪り続けるさぁ!!

 どうしてこんな秘密をお前に話したか?

 愚かだが馬鹿ではないお前も理解しているはずだ」


「………貴方に…わた…娘…て……」


震えながら短剣を持った手を後ろに組んで上皇王の傍へと進んでいく。

上皇王は無表情でファビエンヌの瞳をじっと見ている。


そして皮肉の微笑みを浴びせた後。


「だからそんなんだから………。

 御前をこのまま生かしたのには理由があるんだよ」


上皇王は大きく両手を広げてファビエンヌを抱きしめると袖先に隠し持った剣先を掌に隠し持っていた。


そのままファビエンヌの背に手を回し、一気に剣を突き立てた。


「詰めが甘いよ。

 ファビエンヌ!

 さようならファビエンヌのいや。

 マリアンネ」


クスクスと笑いながら。


しかしその瞬間に上皇王の背に激痛が襲った。


「………ウッ」

ファビエンヌの反対の手で隠し持っていた剣が上皇王の背に突き立てたのだ。


「絶対に許さない」


「それはこちらの台詞だ」


「ウッ!!」


「絶対に……」


「フッ…」


「……」



「グッ!!」


二人はもみ合う。

丘から一気に丘陵の上から下へと回転し落下していった。


「WAWaWaaaaaaa~~~~~」


「ん~~~~~~~~~~~~~~~~」


バサ!


ガタガタガタ!!


急斜面にあった石と共に丘陵の頂上から滑り落ちる様に二人は落下していった。

すざまじい速度で。



刺し合いになった上皇王とファビエンヌは?

次回最終回の話に。


今回は次回の構想執筆活動の為休載いたします。

更新は活動報告にてお知らせします。

ありがとうございました!

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