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外伝 最終章 皇位奪還 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】龍の目覚めⅢ

崩れる皇宮の中で絶対絶命のヴィルヘルム達は?


「ゥッヴッ……」


喉の奥で何かが蠢いているかのような不快感と息苦しい暗闇の中もがき苦しむ悪夢に犯されたような感覚に襲われた先にわずかな柔らかな光が差し込んだ気がした。



ジンジン

光と同時にヴィルヘルムの身体に鈍い痛みが襲ってくる。

その痛さと同時に自分には意識があり、命が助かったのだと実感出来た。


助かったのか?

えっ!

どうやって!?


次に感じたのは太陽の日差しと頬をつく潮風だった。


そして澄み切った青い空が瞳に飛び込んできた。


日差しで眩しいのは仰向けに倒れていたからだ。


え?えっ?


動こうと上半身を起こすと僅かにどこかしこに電流のような痛みが走る。


「いた!」


しかし激痛ほどではなく、身体の所々に打撲したような痛み。


頬や額から生ぬるいものの跡があるのを感じ手で拭うと、指にぬるりとした感触に途端に我に返る。

血だ。


「えっ?あの状態で助かったのか?」


困惑する頭にあの状況で落下したらまず命はないはずだ。

なのに!生きてる!!


「殿下!!」


聞き覚えのある声が青い空に木霊した。


その声へと顔を向けると慌てた様子のアレキサンドルが走ってくる。


「えっ!

 アレキサンドル?」


「どうして?」


顔を覗き込んだアレキサンドルは手にしたハンカチをヴィルヘルムの切れた額に押し当てる。

じんわり白のハンカチが赤く染まっていく。

挿絵(By みてみん)

「ギリギリでした。

 フランシスが手配した浮遊石を積んだこの

 帆船で皇宮へ空路で向かったんですが。

 丁度、宮の中心部分が崩れ始めていて。

 エメラディーヌ団員達がロープで殿下達を

 助けたんですよ。

 もう奇蹟でした!!

 殿下!!」


アレキサンドルは両手を広げてヴィルヘルムに抱きつく。


かすり傷、打撲しばらくは辛いだろうが、軽傷ですんだのは天の采配だろうとアレキサンドルは思う。


「リライディナは?」

はっとアレキサンドルは身体を離す。


「妃殿下も無事です。

 お疲れで今お休みになっています。 

 かすり傷だけで特に大きなけがはされてい

 ません」


「他の者は?

 フランシスは?

 ディアナは?」


「ディアナさんはだいぶん興奮していましたが。

 泣きつかれたようで今アンリエットが看護

 して落ち着いています」


「フランシスさんはほら隣に…」


ヴィルヘルムはまったく気がつかなかったがどうやら隣で寝ているのが彼らしい。

目をやると頭と腕や肩を包帯で巻かれて項垂れているフランシスが目に入った。


「あぁ~~。

 そうだよな」

あの衝撃であの飛ばされ方をしたのだ無事なはずはない。



「フランシス…大丈夫なのか?…」


「あぁ~骨折はしてるけど死にはしませんよ。

 彼も元海賊ですから修羅場は経験済ですからね」


半笑いでアレキサンドルは答える。


「なんですかその突き放す感じのコメントは!」


アレキサンドルの心配ないと言わんばかりの言葉にフランシスはたちまち拗ねてしまった。


「ああ~起きてました?」

アレクサンドルはしまったとばかりに苦笑いで答える。


「フランシス大丈夫?」

ヴィルヘルムは心配そうにフランシスの顔を覗き込んだ。


「痛み止めが効いているようなので。

 今の所は」


「あれからどうなった?

 上皇王は?

 あっ!

 ファビエンヌは?」

思い出し方の様にヴィルヘルムは聞いた。


「あぁ~龍と一緒に消えてしまいました。

 私はあの後最後に…見たんですが…。

 突然天空で龍が消滅して…上皇王とファビエンヌさんが飛ばされた様に見えて。

 その後はわかりません」

フランシスは最後に見た光景を話す。


「消滅?

 じゃあ!

 二人は?」


「あっ!

 大丈夫です。

 実はクロフォード公爵と交戦した時、少量の浮遊石の粉を振りつけたんです。

 ご存じかどうか存じませんが、浮遊石は悪用を防ぐ為にその微粒子に探査機に反応する成分を付着させ

 ています。

 今船はそこに向かっています。

 それより殿下。

 手当を。

 おい!」

アレクサンドルは近くの医師を呼びに行く。


「流石エメラディーヌ団幹部。

 やる事が違うね!」


「あまり甘やかさないでいただけますか殿下」


ヴィルヘルムは後方から女性には珍しい重低音な声画耳に飛び込んできたその方向へ首を傾ける。

太陽の逆光で、女性だとはわかるもののはっきり人物の顔が見えない。



「??誰?」

どんだけ頭を回転させても出てはこない。


「エメラディーヌ商団団長のエメラディーヌです。

 お見知りおきを殿下」 


「ああ~~叔母様のお目付け役の奥方?」


はっと思い出した。

確か叔母クリスティア商団のラインハルト卿の妻がその人物だと記憶の底から引っ張りだす。

雰囲気のある大人の女性。

30代後半だろうか?

まさに女海賊という名が相応しい貫禄があり知的でありながら意思の強さも感じる。


「ははっ…そうですね。

 奥方ね…」

エメラディーヌは失笑しながら答える。

随分と聞いていない敬称だ。


そもそも家に閉じこもって家庭を切り盛りするなどまったくない日常を送ってきた。

ラインハルトとは愛し合いはしているが、仕事のパートナーで、同等な関係。 

時折宮廷にも出仕し夜会や舞踏会も参加するが、奥方という意識はほぼ皆無な生活を送っている。


その笑いに自分が失言したのかとふと気になって恐る恐る尋ねた。


「なんか僕失言しましたか?」


「いえ…あまり言われ慣れていないので

 ね…奥方って…」


クスクスとエメラディーヌ゙は半笑いで止まらないようだ。


「そうですか…すみません」


意味もなく謝罪するヴィルヘルムは自分でも何故謝ったのか理解に苦しんでしまった。


「ああ~~そうだ。

 ディアナにも母上の行方がわかりそうだと

 伝えています。

 あの子一気にがぜんやる気が出て元気にな

 りましたよ」


アレクサンドルはヴィルヘルムを安心させるように伝える。


「よかった」

ヴィルヘルムは心底そう思った。

あの龍の揺り篭であんな別れ方をしたディアナが心配でならなかったからだ。


「でもこれからです」

アレクサンドルは自分に言い聞かせるようにも言った。


「ああ。あの上皇王が死んだとは思えないしな」


「ええ。

 探査機は移動を示しています。

 あの悪魔生きてますよ」


「これからが勝負だね」


「エメラディーヌ団も合流します。

 殿下の叔母様のおたっしで。

 甥を手助けしてほしいとおっしゃってね」

エメラディーヌは任せてと言わんばかりに得意げに伝える。


「叔母上様から?」


「ええ」


「本当に助かります」


「ええ。

 ただフェレ皇国再建の際にはエメラディーヌ商団を贔屓にしてくださいね。

 皇国御用達商団として」


「まあ賄賂不正なしで」


「…殿下しっかりされてますね」


「よく言われます」


「はっはっは…」


「エメラディーヌ商団全団員。

 命がけで参戦します!!」


「フランシス!

 身体は動かないかもしれないけど。

 頭で頼むよ!!」


「勿論。

 了解です」


強い潮風が聞き慣れた声を運んでくる。

「ヴィル!!」

リライディナの元気そうな声だ。


いきなり甲板に出てきたかと思ったら、あっという間にヴィルヘルムの胸に飛び込んだ!


「いっ……」

ヴィルヘルムは反射的にリライディナの身体を少し離す。


「ごめんなさい!ヴィル!」

嬉しいが痛みで悶絶するヴィルヘルム。


アレキサンドルは慌てて鎮痛剤をヴィルヘルムに手渡しそれを飲み干す。


「大丈夫。

 これくらい。

 リラは?」


「大丈夫だ。

 まだまだ戦える!」



何とか皇宮から助かったヴィルヘルムは更に上皇王達を追う事に!


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