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最終章 皇位奪還【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】ファビエンヌの愛

革命連合軍が皇宮に侵入した頃上皇王とファビエンヌは脱出を試み後宮の奥深くに隠れていた。

そして我が子との再会は?

革命連合軍が皇宮に潜入しクロフォード公爵は戦闘そこそこにヴィルヘルム達の前から消えて。


「あぁ…陛下!

 どうかお願いです。

 私の命は差し上げます。

 けれども…あの子はあの子は…。

 どうかあの子だけは………」


ファビエンヌの全身は小刻みに震え、血走った瞳には涙まじりの悲痛な訴えかけは何時間も経っている。


上皇王の前で膝まずき金銀の刺繍のスカートの裾を握りながら、髪を振り乱し必死に懇願してくるファビエンヌ。

その姿を氷の視線を向け容赦なく鼻で笑う上皇王は軽蔑と呆れたといわんばかりの表情を崩さない。


そうしてゆっくりファビエンヌの顔を覗き込んで、さも厚かましいと言わんばかりにため息をつきながら乱暴に言い放った。


「厚かましい。

 本来は生まれるはずのない子供。

 忌まれてはいけない子供。

 忌子。

 不義の子。

 御前と亡き我が夫の。

 裏切りの証。

 あの男はおまえ達を逃がした後、覚悟した

 かのように私に報告し、お前たちの居場所

 も言わないまま。

 自らの命を絶った。

 どうせなら私が殺したかったが。

 本当に今思っても腹立たしい。

 お前を探すのにどれだけの時間と労力と金

 がいったか。

 まさかあの禁断の神地に隠すとは。

 なるほど見つからない訳だ。

 極秘に特殊任務専門近衛隊に始めて拉致出

 来たのだ。

 にも関わらず子供を取り逃がすなど。

 仕事が緩い奴らだった。

 当然全員抹殺したさぁ。

 その後子供を探してようやく見つけて。

 すぐに殺そうと思ったがな。

 帝国の皇族が入国したと報告があってな。

 この子供を利用してあの忌々しい皇族を始

末しようとしたが。

 あの子も使えない。

 まあいい。

 とにかく今は………この窮地をどう切り抜けよう」


「私が王配殿下をお慕いしなければ。

 私があの日死を選んでフェレに来なければ。

 私が悪いのです。

 あの子はどうかあの子には!」


何故何故そんな戻れない過去への後悔に溺れそうになる。

私はオルファン帝国の貴族の家に生まれた。

物心つく頃の記憶の荷は母はすぐに死去し無関心だった父は妻を入れ替える様継妻を迎えた。彼女にネグレクトされ、見かねた父がこっそりと乳母と数人の召使によって別宅で育てられた。

その父も別宅を訪問する事はなく家族の愛情を受けずに成長していく。

ある年父親は皇室との繋がりがほしいと病気療養中のヴィルヘルム皇子の遊び相手として私を推薦した。あの地方でそれなりの良家の貴族の子女となるとそうそうおらずすんなり許可された。

その日以来なんどとなくイスファハーンの皇室別宮を訪れた。

皇子はとても素直で優しくあの時期一番楽しい時間だった。

けれど皇子が去ってからは元の生活に戻り、十四歳のある日に父からフェレ皇国の貴族の養子に出されたわ。

許された同行者は乳母だけ。

険しい道中で車酔いしながらもようやく着いたフェレ皇宮はオルファン帝国とは違った。

毎日が緊張を強いられる暮らし一年後その乳母も体調を崩し死去。

私はは異国で一人っきりになってしまった。



フェレ皇国は旧体制の国家で皇王への忠誠と貴族達の牽制、皇族同士の牽制と政争はファビエンヌの仕えた第一皇女も同様で息の抜けない宮廷生活。

普段は変装し皇女の近くで他の召使とは隔離された孤独で精神的に追い詰められる日々。


しかも皇女は一ミリの失敗は許さず、良くて紹介状なしでの皇宮追放、投獄、拷問、刑罰、下手押したら殺されかねない宮使いだった。

それでもファビエンヌが殺されなかったのはその容貌が第一皇女にそっくりだったからだ。


そう影武者。

ファビエンヌは第一皇女の身代わりとしてあらゆる危険の場で命の危機を経験してきた。


そんな生き地獄の生活を強いられたある日に突然現れた主人の夫。

輝くほどの容貌になんといっても穏やかで優しくまるで太陽の陽だまりの様な存在だった。

下の者にも労りの言葉をかけ、召使として皇女に仕えたファビエンヌにも貴婦人並みに接してくれていた。


初めは憧れだけだった。


勿論思いなどかける事すら恐れ多かったし、もし第一皇女に知られたらいくら身代わりであってもファビエンヌの命はなかったろう。

挿絵(By みてみん)

そんなある日だ。

皇宮で開催された晩餐会の席で、一人の皇族と前第三妾妃と派閥による即位してまもない女皇王の暗殺事件が起る。

晩餐会に用意された食事に毒を入れられたのだ。

事前にその計画を知った女皇王は自分ではなく、身代わりにファビエンヌを座らせた。

ファビエンヌは毒入りの葡萄酒を飲みそのまま意識を失い、事実をしらない王配によって介抱されて事なきを得たのだ。


いままで代役で隣にいる時でさえ、怪しまれないかと出来るだけ会話も控え一定の距離を守って接してきた。


暗殺計画は未遂に終わり、女皇王はこの事件を皮切りに続々皇族を失脚か幽閉、処刑する事に成功する。

こうして全ての懸念の根を取り除いた。


事件の後離宮で療養中のファビエンヌに王配は度々面会する機会が増えていった。


二人の距離は自然と近くなり、王配は妻と接するうちに違和感を覚えてそれは月日が経つ毎におおきくなっていった。


ある決意を胸に妻の寝室を訪れては第一皇女しか知らない話をファビエンヌに話し始める。


それは前日王配に内大臣からの報告事項の一つであり極めて極秘案件だった。

オルファン帝国が同盟を離反してフェレイデン帝国につくという極めて重大秘密事項だった。


王配はその話を人気のない離宮の中庭で妻である上皇王つまりファビエンヌに告げた。


「連合軍から離脱しようとしていたオルファン帝国が和睦を申し出た」

と内容を変えて。


「えぇ。報告をうけました。

 大事にならずによかった」

当然まだ知らされていないファビエンヌは話を合わせてしまったのだ。


それは王配は目の前にいる人物が妻でないのを明確に悟った瞬間だった。


この事実をしばらく隠し、体調の戻ったファビエンヌが皇宮に帰り再び影武者として孤独な生活を送った後、月日は過ぎて夏の避暑シーズンが訪れる。


前日に王配は「夏の静養地で女皇王の暗殺が計画されている」という情報を意図的に流した。

案の定離宮にはファビエンヌが女皇王として訪れる。


幾たびかの夜だった。

王配は突如事実を告げた。


「君は皇王陛下ではないね」

私の瞳に映った真実を確信していると言わんばかりの彼の瞳。


「……どう……しかた…」

王配は私の震える小さな白い手を自分のそれに重ねて、悲しみに満ちた微笑みを湛え話始めた。


「私の名はフェルディナン・ディア・フェレ=ディエンブルグという。

 ここでは王配殿下としか呼ばれないが……。

 君と離宮で接するうちに皇王陛下とは違うものを感じて。

 皇宮に戻ってからオルファン帝国の離反の話をしたろう。

 あれは事実と違う。

 申し訳なかったけれど。

 私は君と本当の君と話なかった。

 だから……。許してほしい。

 もし出来るなら私達は多くの共通点がある。

 きっとお互いの支えになるはずだ」


私はまるで夢でも見ているかのようにぼ~とファルディナンを見ていた。

本当に夢のようだった。

嘘偽りの関係だと思ってはいても傍にいれるだけで嬉しくそして物悲しくもなった憧れの貴公子が自分と親しくなりたいと言ってくれているのだ。


小さく小さく何度も頭を下げて頷く。

柔らかな秋の夜の風が二人を優しく撫でる。

そして二人が会うたびに自分達の過去を二人は赤裸々に語りあった。


私は初めて王配の皇国内の立場と苦悩を知る。

当時の女皇王に直接攻撃出来ない皇族や反女皇王派は寵愛のない王配をターゲットにして、いやがらせや侮辱的行為と言動を隠そうとはしなかった。


その環境に甘んじて王配は不服も言わずに受け入れていたのだ。

何故なら王配は皇国内ではあくまで傍流の皇族に過ぎなかった。


しかもすでに権力とは程遠い地位にあり、結婚前は辺境の山脈の地を支配する小領主だった。

北部であるため税収は少なく、また痩せた地が民衆の生活を貧しいものにしていた。

そんな時に振って沸いた第一皇女との縁組だった。

定期的に入る皇室からの結婚の支度金と地位の維持費を得た代わりに得た力のない地位である王配に。


しかも女皇王は表では愛のある結婚という態度をとったものの、私生活では後継ぎを得る為しか夜の生活をしてこなかった。

つまり懐妊しやすい日にしか夜を共にしなかったのだ。


王配はひどく自尊心を傷つけられ、宮廷では非難と批判の的になり心身ともに疲れ果てていた。

そんな時に知った。自分以上に傷ついた女性と知り合ったのだ。


私もほとんど騙されたように売られ、殺される恐怖と皇王の虐待、そして何よりも隠れて生活しないといけない神経をすり減らす生活に疲れ切っていた。


2人は離宮で本当の夫婦の様に過ごした。

そして惹かれ合った必然的に燃え上がる想いは誰にも止める事も自分すら止める事など出来なかった。

それは必然のように肌を温め合う本当の夫婦となった。

お互いを慰め合う様に労わるように虐げられた生活の希望の炎は小さなそして危険な灯だ。


安らぎも終わりはやってくる。 


二人は皇宮に戻った。

私は二か月後に身体の不調を感じ始め、自分が妊娠したのを知った。

フェルディナはすぐに行動を起こす。


あらゆる手を尽くし皇宮から私を脱出させたのだ。


わざと皇宮で火災事故を起こし、混乱に生じて皇都の外れ神の地として知られ禁地と呼ばれ誰も侵入しない森に極秘の小さな屋敷を用意して隠したのだった。

そして愛する者達にも告げずにフェルディナは自ら命を絶ったのだった。


私は脱出した後心に誓った。

生まれてくる我が子の命は自分が守ると。

絶対に私が守る。

命を賭けて!


皇国でただ呼吸をしている生きているだけの人生だった。

あの日守らないといけない命である娘の誕生。

愛すべき人の生死もわからない。

二度と会えない。

けれど命に代えた我が子の為だけに生きた。


絶対にあの子を守る。

弱い受け入れるだけの人生に終わりを告げた瞬間、沸き立つ母性は限りを知らない。


命に賭けて!



「!!

 陛下!

 ……マリアンヌ!!

 すぐにお逃げくださいませ。

 皇宮が革命軍に占拠!皇宮内に革命軍侵

 入。

 ひとまず皇宮を脱出いたしましょう。

 連合軍に徴集し兵力を整え、皇宮を奪還するのです」



上皇王の寝室に何の前触れもなくクロフォード公爵が飛び込んで来た。


ファビエンヌの過去が明らかに。

次回はクロフォード公爵の愛。

盲目的で絶対的な愛に溺れ盲目的な愛に囚われて自滅する?



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