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序章 私が十人目の皇后に?

エルミエとセヴィエの子供である第一皇女エリザベートの物語



昨夜遅くまで妹とトランプ遊びをしていたエリザベート皇女は、父皇帝に呼び出され謁見の間で軽くお辞儀をしてスカートを上げ頭を下げていた。


皇帝は神妙な面持ちで娘エリザベートと対面していた。


可憐で美しく聡明で、好奇心は人一倍で見た目では完璧な皇女だ。

ある一点を除いては。  

眉間に皴を寄せてお辞儀をしている娘を見ていた。


眠さを我慢していたので、下を向いているのをいいことに大きな欠伸をして見た目では礼をつくしている様に見える。 


皇帝は息を一気に吐き出す様に話始める。


「フェレイデン帝国 第一皇女 エリザベート・ディア・フェレイデン

 ()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()した 」


「HAa????

いま今何言いました?

父上、いえ皇帝陛下???」


自分の耳を疑ったエリザベートは思わず皇帝に促される前に頭を上げた。


「んっ」


母皇后の咳払いはその行為に異議を唱える。


再び顔を下に向けた。


「頭をあげなさい。」


皇帝の少し怒りで声が震えていった。

皇帝が促すと、ぱっと顔をあげて間髪あけずに言った。


「父上。

 娘を殺す気ですか?

 あの性悪皇帝ですよ。

 無慈悲で残忍で私で確か八番目の皇后になれ

 と?」


皇女とも思えぬ早口が可憐な可愛らしい声が-10点残念な欠点だった。


皇帝はいつもの事だがせめて謁見の間ではやめてほしいとは思ったものの、皇女のこの欠点だけはどうしようもなかった。

そもそも乳母が早口で、ついた家庭教師も早口だった。それ以外は最優秀教師だったので大人になれば矯正できると目をつぶり採用したが、やはり-10点は治らなかった。


「エリザベート皇女 八人目ではない十人目だ」


「もっとたちが悪いじゃないですか!」


「よいか。不運なだけだ。


最初の皇后は嫁いだ日に感染症で死去

二人目は代理人の結婚式後に病気で死去

三人目は7日目で皇帝の狂った愛人に毒殺され死去

四人目は3か月後に精神的病で離婚

五人目は6か月後流産の後遺症で死去

六人目は一年後修道女になり離婚

七人目は四か月後庭園を散歩中拐われ行方不明

八人目は一年後皇太后に嫌われ離婚

九人目は三か月後に姦通罪で処刑」


「違いますわ。

 一人目と六、八、九人目はそうかもしれません。

ニ゙番目は皇帝に毒殺されて、三人目は顔が気にいらないからと愛人に殺害させ、四番目は皇帝にいじめらて、五人目は皇帝に暴行されて、六人目は顔が貧弱だからと修道女送り、七番目は皇帝にわざと拐わせて、九番目至っては濡れ衣の姦通罪で処刑されてますわよ」


甲高いエリザベートの声が謁見の間に響く。

普段は威厳を高める音響効果もこういう際には逆効果だった。


セヴィエ1世はさすがに説得力がないので頭を抱える。


「もう決まっている。

 嫁にいくのだ。

 歴代の皇后の件はただの偶然だ。

 長年の両国の関係改善が必要である。 

 それよりその話し方なんとかならないのか?

 とにかく国益である。

 御前も第一皇女なら。

 国のため安寧を願い。義務を果たすのだ。

 とにかくもう決定した案件だ。

 7日後に互いの代理人による結婚式が行われる。

 これは決定事項だ。 

 解散!!!」


そういうと両陛下さっさと謁見の間から退出してしまった。


あっという間に周りに人がいなくなった。

残ったのは皇女とこの場面を見守っていた皇女付きの召使と侍女達だけだった。



「嘘でしょ!!!

 なんで私が想定敵国の皇帝の十人目の皇后にならなきゃいけないの???

 なんで!!!!

 エルディア大陸一のフェレイデン帝国の至宝と言われている私が!!!

 なんで~~~~~!!!! 」


自室に戻ったエリザベートは突然の結婚命令になすすべもないどうするのかと頭を抱える。


下野に下るといっても所詮は究極の箱入り娘だ。

宮廷を逃げたしても生活出来ないのはわかっていた。

破談になるよう考えを巡らせる。


破談破談。

皇后に相応しくない者になるにはどうしたらいいのか?

貞操を捧げるか?

男狂いと噂に流すか? 

賭博に狂乱するか? 

贅沢三昧するか?


そんな考えを企んでいたら、背後から気に馴染んだ声が聞こえてきた。


「エリザベート」


母の皇后だ。


子供を五人目出産して尚美しく今も妊娠中で、他に公娼や愛人がいない珍しい夫婦中が良いと評判の皇后。

良妻賢母の母に皇帝は頭が上がらない。


エリザベートの隣に腰掛けて潤んだ瞳で我が子を見つめてそのしなやかな美しいライトゴールドの長い髪をかき上げた。


「貴方の不安な気持ちもよくわかります。

 婚姻は国家の重要案件なのです。

 何かと噂の絶えない皇帝の元に送るのはしのびない。

 ただ、この婚姻は国家の安寧を願う者には喜びでもあります。

 国境沿いに生きる民に争いの火種を絶つのは私達の責任で、今まで命をかけて守った者達への弔 

 いでもあるのです」


そう言った母の目は遠くの何か過去を振り返るように悲しく、懐かしい微笑みをたたえた。


エリザベートはすねたように顔を横にむけて不満そうにだまっている。


「エリザベート

 私達はあなたの幸せも願っています。

 けれど我が国の懸念事項である北部の国境附近での越境軍事行動が後を絶ちません。

 この状態でオルファン帝国と今以上関係悪化した場合、同盟でも組まれたらさらなる懸念が増え

 て犠牲になるのは国民です。

 わかるでしょ

 あなたは第一皇女なのです。もしこの婚姻を反故にした場合第二皇女に役回りが回るのですよ」


まだ五歳年下の妹は今12歳相手の皇帝は23歳年の差婚おままごと状態になるのは間違いない。早く跡継ぎのほしい皇帝は何をするかわからない。

ほとんど脅迫である。


さすがに皇帝の片腕と言われた母だけはある。

ぐうねも出ない。

つまり拒否権はないのだ。

思わずため息が漏れた。


「あなたはしっかりしているから。今までの皇后達のような目には合わないわ。

 いえさせるものですか」


そう言って額にキスをして愛おしそうに子供を見ている。

わかっている母は私を愛しているし、この結婚に心配をしているのだと。


しかめっつらは相変わらずだが、母にしばらく考える時間をほしいと懇願し静かに皇后は去ってゆく。


一人プライベートエリアの私室で思案にくれる。

でも嫌と諦めの往復をするだけで答えは出ない。

まんじりともせず一週間という期間はぁっとゆうまに過ぎ去った。

勿論考えなどはまとまってなどいない。

今日は礼拝堂で代理結婚式が行われている。


本人は不在で、新郎新婦とも各帝国の指定人により両国で挙式を遂行していた。


その日エリザベートは一人フェレイデンの歴史書を読んでいる。

歴代皇后の伝記だ。

初代皇后から母皇后までの伝記が書かれていた。


初代皇后は商人の妻から帝国の母になった。

二代目皇帝を支えた軍部で女将軍として戦った皇后。

三代目の皇帝に愛されない悲劇の皇后は慈愛に慈善活動に勤しみ国民から愛された。

四代目は娼婦から皇后にのし上がった。

五代目の人質になり自害した皇后の話

前代皇后は財務に明るく皇帝を財政面から支えた。

特異なフェレイデンの皇后たちの物語はエリザベートを刺激した。

不幸な結婚も幸せな結婚も自分次第なのかもしれないと。


そんなふうに感じ取り、ようやく自分の意思で文化も違うオルファンへ嫁ぐと心に決めたのである。




序章 終了
















全てはこの日のために

皇后の愛と復讐それは……の外伝始動


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