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元稀代の悪役王女ですが、二度目の人生では私を殺した5人の夫とは関わらずに生き残りたいと思います  作者: 景華


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32/44

一緒に、戦ってっ!!

「!! セイシス!?」

──鬼のような形相のセイシスが、真後ろに立っていた。


「やぁ、遅かったね、兄さん」


何でそんなにこやかでいられるのアルテス!?

鬼よ!?

目の前にいるのはただの凶悪な鬼よ!?


「あぁ……。どっかのトンデモ姫が俺に何も言わずに失踪したんでな。手あたり次第城内探してたら、遅くなった」

「ひぃぃいいいいいっ!!」

ぎろりとその鋭い眼光が私をとらえる。


「い……一応お父様たちには言って出た、わよ?」

「みたいだな。まぁ、俺が陛下にそれを聞いたのは、俺が城内探しつくした後だったがな」


怖い怖い怖い怖い!!!!

すんごい睨んでくるーーーーっ!!


「は、はは……。そ、それは……えーっと……朝からご苦労様……」

「おいアルテス、このトンデモ姫連れてくぞ」

「へ!? ちょ、ちょっと!?」


がっしりと腕をつかまれてセイシスに立ち上がらせられるのを見て、アルテスは苦笑いしてから「いいよ、話も終わったし、お二人ともごゆっくり~」と連行される私を見送った。


薄情者ぉぉおおおおお!!


***


バタンッ。

後ろ手に勢いよく閉められた自室の扉。

私の目の前には今、凶悪な顔をしたセイシスがただ私を見下ろしている。


ヤバい……ヤバいわ……。

二回目の人生、まさかのセイシスによって殺されるルートに突入した!?

一回目のリベンジの前に私、ここで殺られちゃうの!?


顔を引きつらせながらセイシスを見上げていると、セイシスははぁ、と深く息をついた。


「そんな殺人鬼見るような顔で見るなよ」

「へ?」


ふっとさっきまでの凶悪な顔を緩ませて、セイシスが私の頭にぽんっとその大きな手を乗せた。


「セイシス、怒ってるんじゃないの?」

「そりゃ怒ってるよ。いや、怒ってる、っていうか……心配、した、かな」

「心配?」


心配って顔には見えなかったんだけど……。

ていうか、心配であんな凶悪な顔になるのかしら……。


「そりゃお前、俺を置いて一人で男のところなんかに行くとか普通に心配するし、妬くに決まってるだろうが」


ふてくされたようにそう言ったセイシスに、ただただ茫然と目を瞬かせる。

今とんでもないワードが聞こえた気がするんだけど気のせい?


「……俺はお前を一番近くで見てきて、一番わかってるって自負してたし、自信があった。でも何か……お前を探すのに宰相に聞いたら、昨夜は遅くにレイゼルを呼んでたって言うし……。今朝は今朝で早くから抜け出してアルテスんとこ一人で行ってるし……。そりゃ妬くっての。俺が一番、お前の隣にいたのに、って」


「セイシス……」


何それ可愛い……!!

でも、レイゼルが来たことを知られていたのね……。さすがに誤解は解いておかないと、悪役ビッチ王女確定しちゃいそうだわ。


「ご、誤解しないでね!? レイゼルとは何でもないし、その……ただ相談に乗ってもらってただけだから!!」

「相談なら俺に……」

「だ、ダメ!! 絶対……!!」


はっ!! しまった、ついムキになっちゃった……!!


「そ、その……恋愛相談、だから……セイシスには無理でしょ?」

「暗に恋愛音痴だって決めつけてんじゃねぇぞ」

「うっ……」


そうよね、絶賛恋愛中だものね。

でもお願い今だけはそういうことにさせて!!


「と、とにかく!! プロの意見を聞きたかったのっ!!」

えぇいこうなったら力技でねじ伏せるっ!!


「あのなぁ……だからって……」

「私は!! ……私は……セイシスが、大切だわ」

「!!」


セイシスの両腕をつかんで、ただすがるように彼を見上げる。


「大切だから、言いたくないこともたくさんある。でも信じてほしいの。……私が、ちゃんと大切に思ってるってこと。私は……私は、セイシスを守りたいんだってこと」


セイシスが誰を好きでも関係ない。

今はただ、セイシスを守る。

そして自分も殺される運命を回避する。

それだけを考えたい。


それがきっと、今の私にできること、だから。


「リザ……。……はぁー……っ、それと恋愛相談とどう関係があるんだよ」

「うっ……」

「ま、言いたくないなら詳しくは聞かない。でもな、俺だって同じだからな?」

「え?」

「お前を、この手で守りたいんだよ、ずっと」

「っ……」


ずるいずるいずるい……!!

多分今私……顔、変だわ……。


「……セイシス」

「ん?」

「一緒に、戦ってくれる?」

「……あぁ。どこまでも付き合うよ」

「っ……ありがと……っ」


大丈夫。


この件が終わったら……私は──。


貴方を、解放してあげる──。






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