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一人目の婚約者候補カイン


「リザ王女。あなたにお会いしたかった。ずっと」

 藍色の瞳がうっとりと私を見つめる。


 一回目の婚約者候補面談は、美食の国であるノルン王国のカイン・デレイアン・ノルン第二王子。

 私の2つ上で御年20歳。

 金色の髪がさらりと揺れて、爽やかな印象を受ける。


「初めまして(じゃないけど)、カイン王子。お忙しいところ、わざわざ我が国にまで来てくださってありがとうございます」

 いつもの完璧フェイスで微笑めば、カイン王子の頬が真っ赤に染まる。

 おぉ、うぶだ。

 こんなうぶな王子様を私は手玉に取っていたというのか。

 くっ、この悪役王女め。


 だけど今世の私は違う。

 この縁談をまとめるわけにはいかないのよ。


「だけど、少しだけ待ってくださるかしら。実は公務が山積みで……。この書類の確認だけさせてくださる?」

 必殺!! 【仕事してるからあんたは後回しよ作戦】!!


 背後で控えるセイシスからものすごい深いため息が聞こえた。

 うるさいわね、セイシス。

 これも婚約回避、いえ、私の殺害回避のためよ!!


 婚約者候補がはるばる隣国からやってきたというのに仕事をし始める女。

 失礼だし嫌でしょ?

 きっとむこうから断ってくれるはず。

 そう思っていたのに──。


「はい、良いですよ。リザ王女は美しいだけでなく聡明で、お若いのにしっかりと仕事をこなされる素晴らしい方ですね」


 褒められたぁぁあああああ!?


 くっ……手強いわねカイン……。

 まぁいいわ。ちょうど貿易関係で書類が積んでたし、お言葉に甘えて書類確認をさせてもらおう。


 ふむ……穀物の豊作問題かぁ。

 今年は雨もしっかり降って気候もいい日が続いたし、東のタントの町の名産である穀物が大豊作だったのよね。

 だけどどこもある程度豊作だから、他の町に卸すわけにはいかないのよね。

 となれば、この穀物は処分するほかない。


 保存食として国庫に入れても余るほどだものね……。


「処分するにはもったいないわよねぇ……」

「処分、ですか?」


 思わずこぼした言葉にカイン王子が反応した。


「え? あぁごめんなさい。実はタントで穀物が歴史的大豊作で……。だけどほかの町もある程度豊作状態だから、余った穀物をどうするかって問題があって……」


 もったいない、のよねぇ。

 処分しちゃうのは。

 だけど持っていたとしてもいずれは腐らせて処分することになってしまう。

 その処分をするというのも国費が使われるのだから、こんなところで大切な税金を大量に使いたくはない。


「穀物、ですか……。タントといえば我が国との国境沿いの町。であれば、もしよろしければ、我が国に売っていただけませんか?」

「え?」


 ノルンに、売る?


「知っての通り、我が国は美食の国。ですが、冬の寒さが厳しい北の町では毎年穀物が不作でして……。毎年国庫から援助しているのですが、それも限りがある。安定して供給いただける穀物があれば、我々も助かります」

「!!」


 そうか。ノルンの最北の町ノルジックは、ここよりももっと高い場所にある町。

 年中気温が低く、特に冬は極寒の地となるノルジックで穀物は育ちにくい。

 ノルンと隣り合った国境沿いのタントであれば、輸送費もほぼかかることなくノルンに送ることができる。


 これは……乗らない手はないわね。

 だけどそれを材料に縁談を進める、なんてことは……。


「ふふ、安心してください。このお話と婚約の話は別です。私たちの国にとっても利になる事ですし、受けてくだされば助かるのは圧倒的にうちの方なのですから」

 私の思いを察したかのようにカイン王子がにっこりと笑った。


 じゃ……邪気がないさわやかな笑顔……!!

 けがれた心が洗われるようだわ……!!


「カイン王子、ありがとうございます。ではそのお話、ありがたくお受けさせてくださいますかしら?」

「はい。どうぞよろしくお願いします」


 うぁっ、まぶしい……!!

 一回目の私、よくこんな純粋無垢で真面目そうな方を夫の一人なんかにしたわね……。鬼畜め……!!


「そうと決まれば、善は急げ!! 早速貿易についてのお話をさせてくださいまし!!」

「え、えぇ、もちろんです」

「これからは良い貿易パートナーとして、よろしくお願いしますね!!」

「え? あ、え、は、はい、こちらこそ?」


 この機を逃してなるものか。

 こうして私はこの後時間いっぱいまで貿易について話を詰め、見事取引を成立させ、カイン王子は国に帰っていったのだった。


 カイン王子、貿易パートナールート成立っ!!


いかがでしたでしょうか(*^^*)?

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