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I am Aegis / Origin 最終章  作者: アジフライ
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第45話【後悔】(前編)

エルがアルガノークを倒して三日が経つ……

シュラスは……

「……シュラスさん……今日も部屋から出てこないね……」

「もう二日も部屋に籠りっぱなしだよ……大丈夫なのかな? 」

宴が終ってからと言うものの、 シュラスはずっと自宅の部屋に籠ったままになってしまっていた……

シュラスさん……もしかして『影』が……

エルはシュラスの事を案じていた……

一方、 ジーラは……

「……もうすぐだな……『奴』が現れるのは……」

「そうですね……『全て』が崩壊しないよう、 僕達は善処しましょう……」

トルムティアの酒場でヴィアレと話をしていた。

「……にしても『心』か……言われてみりゃ……俺も『心』が存在する理由なんて考えた事が無かったなぁ……何であるんだろうな……『心』なんて……」

酒を飲みながらジーラ呟く。

「それは僕らでも専門外ですからね……『心』の全てを理解しているのは……この世でフィーラ様ただ一人なのですから……」

「はぁ……シュラスでも理解できない事を考えたって仕方ねぇか……俺達はただ準備して待つだけだな……」

そう言うとジーラはテーブルに代金を置き、 先に席を立つ。

「……ジーラ様……変わりましたね……人間に初めて自分の過去を話したからですか? 」

「……端っから人間なんか興味ねぇよ……ただ……シュラスがあそこまで人間に溶け込むから……気になっただけだ……」

ヴィアレに背を向けたままジーラはそう言うとその場から姿を消した。

カルミスの大図書館にて……

カルミスは暗い部屋の中で光の玉を凝視していた。

「……これは……! 」

カルミスは光の玉の中で何かを見たかのように驚いた。

「……そう……まだ……終わらないのね……」

そう呟きながらカルミスは少し悲しげな表情を浮かべる。

『……やはり……抑えられないか……』


暗い意識の中、 シュラスの声が響く……


『あぁ……済まないフィーラ……間に合わなかった……』


次の瞬間……


『ビシッ……パリィィン! ! ! 』


シュラスの首飾りが砕け散った。


「……アァァァァァァァア‶ァ‶ァ‶ァ‶ァ‶ァ‶ァ‶ァ‶! ! ! ! ! 」


部屋の中からシュラスの声が響き渡る。

「え……何! ? 」

「シュラスさん! ? 」

声に気付いたエルとルーミは部屋に入る。

そこにいたのは……

「シュラス……さん……? 」

「何……あれ……」

黒いオーラに包まれたシュラス……否、 影だった……

顔も見えない程に黒いオーラに包まれ、 そこから不気味に光る眼が見える……

背中からは翼のようなものが生えており、 来ていた服が黒いオーラと同化して死神の装束に見える……

そしてシュラスは首を不気味に動かし、 二人の方を向く。

それは正しく……エルが『あの時』見た怪物だった……

次の瞬間……

『ニゲ……ロ……二人とも……! 』

シュラスがそう言った瞬間、 影が今まで見たことが無い程の速さでエルとルーミの方へ突進してきた。

館の壁は一瞬で破壊され、 エルとルーミは外へ放り出された。

幸いにも二人は直撃は免れたものの、 エルはあばらを折ってしまった。

ルーミはエルを抱きかかえる。

「エルちゃん! 大丈夫! ? 」

「う……どこか……折れたかも……」

ルーミは受け身を取っていたため負傷は免れていた。

すると衝撃に気付いたフェミルが壊された壁から顔を除かせる。

「な、 何だ! ? エル姉さん! 姉貴! どうしたんだ! 」

「フェミル! 天星騎士団を呼んで! この街の皆をできるだけ避難させて! 」

「お、 おう! 」

状況を何となく察したフェミルは急いで館を飛び出した。

『……あぁ……時が来たようだ……さぁ、 あの時果たせなかった意志を……ここで……! 』

上空に舞い上がった影はそう言うと両手を広げる。

すると一瞬にして空が暗くなり、 空間に亀裂が発生しだした。

…………

神の世……

そこは万物を司る神々が暮らす場所……そこでも異常事態が起きていた……

「王よ! 今すぐ避難を! ここにいては危険です! 」

天使の兵士達が絶対神達に避難を促す。

しかし

「どこへ逃げると言うのだ……逃げ場など無い……」

「シュラス様の力はここのみならず……『この世』……それどころか『概念』にまで影響が出始めている……」

「我らは出来るだけ、 各世界に大きな被害が出ぬよう……善処するのみ……例えこの命が尽きようと……」

絶対神達はこの世に存在する世界に被害を出すまいと、 力を尽くしていた。

カルスターラの人間は異常な事態に逃げ惑う……

カルスターラだけではない……世界中の人間達が異常事態を感じていた……その世界に入っている亀裂はそこに留まらず……『宇宙空間』、 『時空間』、 果てには『マルチバース』にまで広がり始める……

すると……

「……させませんよ……『この世の理』よ……」




「収束したまえ……」




星空の広がる謎の空間でヴィアレはそう呟くと同時にヴェルゾアの星の周囲が何かに包まれた。

……この世界の『概念』と外の『概念』を切り離し、 これ以上の『概念』への干渉を完全に断ち切った……でもこれだけじゃ駄目だ……ジーラ様、 どうか早めにお願いします……

…………

『……ヴィアレか……この力……無駄な事を……』

ヴィアレの干渉に気付いた影はすぐさま切り離された『概念』に干渉しようとする。

すると……

「させっかよ……! 」

突然影の横にジーラが現れ、 爪を立てて引っ掻くように攻撃を仕掛けた。

次の瞬間、 ジーラが手を振った方向に向かって衝撃波が発生した。

その衝撃波は世界の半分にまで飛んで行き、 進行方向にあったもの全てを吹き飛ばした。

「……チッ……手加減すんじゃなかったな……無駄な破壊をしちまった……」

ジーラの目の前には無傷で佇む影がいた。

『その力……まだ全力ではないが……覚えているぞ……『悪なるモノ』か……』

「ッ! ! ! 」

すかさずジーラは攻撃を仕掛ける。

しかし……

『ヒュンッ……』

「……は……? 」

ジーラの視点が突然落ちる。

ジーラは首を斬られたのだ……というより……首から下が無くなっていたのだ。

(クソッ……何をされた……『事象』への干渉か……? )

するとジーラは一瞬で体を復元した。

『……何故俺の邪魔をする……お前に俺を止める義理なんて……』

「義理なんざ要らねぇんだよ! ! ! お前が暴れりゃ俺らが消えちまうから抵抗してんだよ! ! ! 」

そう言いながらジーラは影に攻撃を続ける。

その度にジーラの体は消されかけ、 突き飛ばされ、 貫かれた。

ジーラの体は血みどろになっていた……しかし止まる気配がしない……攻撃される度により強靭となった肉体を使って特攻し、 フュースの破壊の力で影の体を破壊しようとする……

「ガァァァァァァァ! ! ! 」

『……獣は恐れを教えなければ駄目か……どれ……場所を変えよう……』

そう言うと影は一瞬でジーラの背後に回り、 体に触れる。

すると場所は一瞬で変わり、 何もない星に出た。

「……いい度胸だ……! 」

『さぁ、 本気でやってみろ……』

影がそう言った瞬間、 辺りが真っ白になる。

ジーラが拳を放ったのだ。

その衝撃波は音すらも消し、 一瞬にしてその星を蒸発させた。

それどころか周囲の空間にも裂け目を作り、 全てを破壊した。

「……」

宇宙空間に放り出されたジーラは平然としている。

それは彼だけではなかった……

『……所詮はこんなものか……宇宙の一つや二つくらいは軽く消えると思っていたが……』

「んな事したらあの世界の連中まで消えちまうだろうが……そう簡単にテメェの挑発に乗って堪るかよ……」

『ほぅ、 少しは考える能があったか……』

「舐めんじゃねぇッ! ! ! 」

するとジーラは再び影に攻撃を仕掛ける。

次の瞬間……

「……ッ……」

影は手を使って無造作にジーラの胸を貫いた。

その手には真っ黒な心臓が握られており、 脈を打っていた。

「ガッ……ハッ……! ? 」

ジーラは血を吐き出す。

(バカな……俺に急所なんて概念は無ぇはず……)

困惑するジーラ、 しかし彼はすぐに納得する。

「……あぁ、 テメェはシュラスの生き写しだったな……こんな芸当もお手の物ってか……」

『興が冷めたのでな……さっさと消えろ……』

そう言うと影は心臓を握りつぶし、 ジーラを突き飛ばす。

突き飛ばされたジーラの体には黒い炎が広がり、 燃え尽きてしまった。

『……』

誰もいなくなった空間で影は何も言わず、 その場から姿を消す。

『さぁ……再開だ……』

再びヴェルゾアに戻った影は両手を構える。

『まずはヴィアレ……貴様を消さなくては……』

そう呟くと影は指を鳴らす。

…………

謎の空間にて……

「……ッ……! 」

ヴィアレは体の異変を感じる。

そして自分の手を見ると……

「これは……そうか……僕は……消えてしまうのか……」

灰のようにボロボロに崩れていた。

ヴィアレは影の力によって存在が完全に消されようとしていたのだ。

その『魂』すらも……『この世』に存在していたという『事実』も『時間』も……そして……この世の全ての者からの『記憶』からも……

「……あぁ……『この世』の『理』よ……どうか彼らを……お守りください……」

その言葉を最後にヴィアレは消えてしまった……

…………

『……さて……まだいるのだろう……』




『ジーラ……』




次の瞬間、 影の頭上からジーラが現れ、 共に地面へ落ちた。

「……おい……シュラス……いつまでもたもたしてやがる……! 」

影の体を踏みつけながらジーラは言う。

『……』




「守りてぇ奴がいんだろ! ! ! 目ぇ覚ましやがれ! ! ! 」




その光景をエルとルーミは見ていた。

この時、 ジーラが戦っている間にカルスターラの人々の避難はほぼ終わらせ、 エルとルーミは残っている者がいないか見回りをしていたのだ。

「……シュラスさん……あんな姿に……」

シュラスの姿を見てショックを受けるエル。

「エルちゃん、 早く離れた方がいいよ! 」

ルーミは慌ててその場から離れようとする。

……私にも何か……出来るはず……今までずっと一緒にいたんだもの……

「待って……」

そう言うとエルは何を思ったか、 影の前に歩み寄ってきた。

「お……おい……止めておけ……」

「……大丈夫です……きっと……聞こえるはず……」

『……』

するとエルは影の顔に手を触れる。

エルの手は火傷のように爛れ始める。

「……シュラスさん……聞こえますか……」

エルはシュラスに語り掛ける。

しかし……

『……お前は……』




『誰だ……』




「……ッ……! ? 」

次の瞬間、 影はエルの視界から消えた。

するとジーラは慌てた様子でエルを包み込むように守った。

そして……

『グシャッ! ! ! 』

「……あ……」

エルの顔に血しぶきが降りかかる。

「グ……ハァッ……! 」

ジーラが影の攻撃からエルを守ったのだ……

『……まさかお前が人を庇うとはな……だがこれでお前は終わりだ……肉体無き世で『全て』の終わりを待つといい……』

『この世』から力を授かったジーラには影の力への耐性が僅かながらあった。

しかしそれは完全ではなかった……

影はジーラから『肉体』の概念を消し去り、 『現実』への干渉も封じた。

すなわち、 ジーラは魂の状態から肉体を取り戻す事が出来なくなり、 影への攻撃が出来なくなってしまうのだ。

しかしジーラの中に恐怖や絶望は無かった……

「……テメェに二度も同じ思いなんざさせるかよ……シュラス……」

「ジーラ……さん……どう……し……て……」

動揺するエルにジーラは笑う。

「……何かよ……お前を妹と重ねっちまって……ほんっとバカだな俺は……」

するとジーラはエルの頭を撫でる。

その表情は何時になく優しく、 まるで妹を見る兄のようだった……

「……シュラスは今……お前らを守ろうと戦ってる……諦めず……声掛けろ……その内届くだろうからよ……」

そう言った瞬間、 影はジーラの心臓は潰し、 ジーラは消えてしまった。

何も無い空間で……ジーラは目を開ける……

『……あぁ……駄目だったな……クソ……』


ジーラは悔しそうな顔でその場で項垂れる。


『お兄ちゃん……』


そこに聞き覚えのある声が響く……


目の前にいたのは……


『……フュース……』


フュースだ……


『……済まねぇ……フュース……俺は……また救えなかった……』


そう言うジーラにフュースは歩み寄り、 抱き締める……


『そんなことないよ……お兄ちゃんは最後にあの子を守れたんだから……あの子はもう大丈夫……だから……行こう……』


そう言って手を差し出す彼女の手を握ろうとした時、 ジーラは動きを止める……


『……フュース……俺は……お前と一緒には行けない……』


『……お兄ちゃん……』


フュースが死んでから……ジーラの中ではある願いがあった……


……フュース……お前は俺と一緒にいちゃ駄目だ……俺は神々の上に立つ存在……同時に何があってもその力を手放す事が許されない存在になったって事だ……


俺は……憎悪にまみれ……無数の神の魂を喰らい……終いに……邪神や悪魔なんかよりも……汚れた存在になっちまった……


……フュース……お前にだけは俺と同じになって欲しくない……せめてお前だけは……この呪いから解放してやりたい……




だから……




過去の後悔を引きずっていた彼はフュースを引き離そうとする……


しかしフュースは微笑んでこう言った……


『……私は……お兄ちゃんと一緒の所に行きたい……』


『……! ……どうして……』


『……例え地獄でも……先の見えない深淵の中でも……私はお兄ちゃんと一緒がいい……だって……』


『私達は……『この世』でたった一つの『兄妹』なんだから……』


そう言われたジーラは涙を溢す。


『俺は……お前を喰った怪物だぞ……? 』


『私は私を丁寧に食べてくれた怪物さんの事……』




大好きだよ……




『……フュース……ッ』


フュースはどんなに時が経っても変わらなかった……邪悪となった兄の力に取り込まれながらも……彼女の『純粋な心』は……決して汚れる事が無かったのだ……


ジーラは家族を失ったあの時からもずっと家族を愛していた……彼の中にいた彼女はその愛を知っていた……


故に彼女もずっと愛していた……怪物となった兄を……失ってしまった父と母も……


フュースの言葉を聞いたジーラの姿は昔の青年の姿へと戻っていく。


……俺は……幸せ者だ……こんな俺を……未だに愛してくれる人が側にいてくれる……もっと幸福な運命へ進める選択肢があるのに……こんな俺を選んでくれる……妹がいて……


『行こう……お兄ちゃん……一緒に……』


『あぁ……』


そしてジーラとフュースは手を繋ぎ、 どこまでも続く暗闇の中へと消えていった……




フュース……ありがとう……

後編へ続く……


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