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I am Aegis / Origin 最終章  作者: アジフライ
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第42話【氷炎の英雄】

前回、 エルとアルガノークの戦いが遂に始まり、 エルは守りたいという意志を胸に戦いを繰り広げる……

『ハハハッ! まるで攻撃ができないようだが? 小娘……』

「グッ……! 」

エルはアルガノークの激しい攻撃に苦戦していた。

……駄目だ……速過ぎて私じゃ追い付けない……でも……アルガノークも私の防御を破れていない……きっとまだ完全に力を取り戻していないんだ……

『こうしている内にも小娘……この世界は我が一族が侵略を開始しているのだぞ? 』

「……」

アルガノークの言う通り、 既にこの国では闇の一族たちが次々と復活を果たし、 ありとあらゆる街を攻撃していたのだ。

しかし……

『……む……? 何故そう冷静でいられる……? 』

エルは全く焦る様子は無かったのだ。

その理由は……

…………

クレーダの街にて……

「うおぉぉぉ! ! 」

「オラオラオラァ! ! 」

ルーミとフェミルは街に押し寄せる闇の一族たちを次々となぎ倒していく。

街にいたベテラン冒険者達とフェミルの海賊団も一緒だった。

「まさか本当に旦那の予想が当たるとはな……流石だぜ! 」

「でも倒しても倒してもキリがない……お願いエルちゃん……早く……」

…………

クーラン・デルダ帝国、 キュレーラの街にて……

「せいッ! ! 」

『ドゴォォォォォッ! ! ! 』

ウーラを始めた国の攻撃部隊が闇の一族たちの侵攻を防いでいた。

そこには天星騎士団の騎士達も混じっている。

「まさかシュラスの言う通り、 本当に攻撃が来るとは……これ程普段から武装している国で良かったと思える日は無いだろうな……」

…………

トルムティアの街にて……

「フンッ! ! ! 」

『ズバァァァァァッ! ! ! 』

キューサスが率いる天星騎士団が同じく街を守っていた。

「……アルガノークの軍勢がここまで……シュラス殿の協力が無ければ今頃……」

…………

シュラスの作戦、 それは各地の防衛を配備し、 闇の軍勢の侵攻の阻止……

この三つの街だけではない……世界中の国々の兵士や冒険者達が手を取り、 闇の一族たちの侵攻を阻止していたのだ。

そして……

『そういえば……この街を破壊したというのに一向に『絶望』が集まらない……まさか! ? 』

『絶望』の感情が集まらず、 力が増さない事に不信感を覚えたアルガノークはようやく気付く。

「そう……あなたが私に気を取られている隙に街の人達の避難をさせておいたの! 」

『なっ……しかし……どうやって……! 』

「無限の魔女……カルミスさんの大魔法だ! 」

そう、 実は数分前……

アルガノークが街を破壊する寸前……

「……全く……面倒な役を請け負ってしまったものね……! 」

カルミスは予め結界を張っておいた安全地帯に巨大な転移魔法を形成していた。

そして……

『ッ! ! ! ! ! 』

街が爆発する直前、 街の住人全員を結界の中へ瞬間移動させたのだ。

『くっ……小賢しい人間どもめ……! ! 』

全てに気が付いたアルガノークはエルの腹を蹴り、 突き飛ばした。

『もうお遊びは終わりだ! 全力を持って貴様を屠ってくれる! 』

そう言うとアルガノークは禍々しいオーラを身に纏い、 エルに剣を突き立てた。

するとエルの体を防御していた氷は砕け散り、 エルの胸に突き刺さった。

「ぐっ! ? 氷が……! 」

胸を貫かれたエルは血を吐く。

『この剣の錆となるがいい……愚かな小娘よ! 』

一気に瀕死に追い込まれるエル、 ぼんやりとする意識の中、 彼女は今までの旅を思い出す。

それは必ずしも幸せなモノばかりではなかった……しかし……それと同時にある想いが芽生える……

この世界は全てが幸福に満たされている訳ではない……でも……そこにどんな『絶望』があっても……そこを救える『希望』が必ずある……以前の私みたいに……何もできずにただ守られているだけじゃ嫌……そうだ……もう……私は……




恐れるだけの私じゃない! ! !




次の瞬間、 エルから氷と炎のオーラが爆風のように放たれ、 アルガノークを吹き飛ばした。

エルの胸の傷は氷で塞がれ、 完全治癒していた。

『馬鹿な……このような神気を人間如きが……! ? 一体何が貴様をそこまで……』

剣の力で死なないエルにアルガノーグは驚く。

「……ルーミちゃんが教えてくれた……私はどう在ればいいのかを……」

エルが一歩一歩足を踏み出す度に足元が凍り、 火の粉が舞い上がる。

「……シュラスさんが導いてくれた……私が何者になりたかったのかを……」

火の粉が巻き上がると同時にエルのローブが取れる。

風で揺らめく髪は炎の如く……その間から見える青い片目は氷の如く……

それは正に、 『炎氷の英雄』……エルは遂に炎と氷の力をモノにしたのだ。

誰が欠けても駄目だった……今の私を作ってくれたのは……今まで出会ってきた人達だ……どんな形であれ……その一人一人が私を導いてくれた……

エルは片手に炎に包まれた氷の剣を創る……

『小娘が……英雄にでもなったつもりか! 』

至近距離まで近付いてきたエルにアルガノーグは剣を振りかざす。

エルは氷の剣で受け止める。

「……つもりじゃない……私は英雄なんだ……」

するとアルガノーグの剣は氷に包まれていく。

驚いたアルガノーグは剣を手放し、 空高く飛び上がった。

同時にエルも空を飛び、 アルガノーグを追う。

『己は英雄だと? 笑わせる! 勝者こそ英雄なのだ! 確かにお前は強い、 だがその程度の剣では我が体を滅ぼせぬぞ! 』

そう言うとアルガノーグは両手を構え、 再び黒い玉を作り始めた。

今度の黒い玉は今までに無い程強力な力を放っており、 周囲だけではなく大陸全体を蒸発させる程のエネルギー量だった。

エルは空かさず剣をアルガノーグに突き刺そうとする。

しかしアルガノーグの周囲には見えない壁が形成されており、 阻まれる。

『やはりな! 所詮人間よ! 弱者が英雄などなれるはずが―――』

次の瞬間、 エルの氷の剣を阻んでいた見えない壁が突然消滅した。

そして……

『ッ! ? 』

黒い玉と共にアルガノーグの体を貫いたのだ。

「うぉぉぉぉぉぉぉ! ! ! 」

『馬鹿な! 何故我が体が! 』

理解できず困惑するアルガノーグにエルは言う。

「英雄は……勝つ者の事ではない……力を持つ者の事でもない……誰かを守りたい……誰かを救いたい……そう思える『心』が、 人を英雄にするんだ! ! ! 」

『何を馬鹿な事を……! こんな剣、 溶かしてくれる! 』

そう叫ぶとアルガノーグは氷の剣を鷲掴みにし、 黒い炎で溶かそうとする。

しかし氷の剣は全く溶けない……それどころか掴みかかったアルガノーグの手を纏っていた炎で包み始めたのだ。

その炎は腕全体に広がり、 やがてアルガノーグの体全身に燃え広がった。

『ぐぁぁぁぁぁ! ! 熱い、 何なのだこの炎は! ! 何故こんな力が! 』

「……例えその英雄は弱くても……誰かを守りたいと思う意志が強ければ、 誰かがその英雄に力を与えてくれる! 私に力をくれたのは……」




「この世界の皆だぁぁぁぁぁ! ! ! 」




エルがそう叫ぶと同時に炎の威力は増し、 やがて青く変色する。

次の瞬間

『バキィィィィン……! ! 』

炎は一斉に氷へと変わり、 共にアルガノーグの体を氷へと変えてしまった。

そして氷の塊はエルが持っていた氷の剣と共に落下し、 地面に激突して粉砕してしまった。

アルガノークは完全に消滅したのだ。

「……や……った……」

アルガノークを倒したエルは一気に疲れが出たのか、 地面へと落下してしまった。

しかし……

「……」

風の様に走ってきたシュラスがエルの体を受け止めた。

「シュラス……さん……」

「エル……よくやったな……」

そう言われるとエルは眠ってしまった。

遠い意識の中……

エルは夢を見た……


「……ここは」


そこは美しい夜空が広がる空間……


辺りは鏡のような氷が地面を埋め尽くしており、 火の粉のような美しい粉末が空から降り注いでいる……


……綺麗……ここって一体……


しばらく辺りを見渡していると……


『お目覚めのようですね……氷炎の英雄よ……』


エルの目の前に二人の子供が現れた……


二人の顔は光に包まれておりよく見えず、 氷と炎のオーラを纏っている事しか分からなかった……


もしかして……あの本に描かれていた……


「神……霊……様? 」


『ようやく私達を受け入れてくれた……』


『そして見事この世界の邪悪を断ち切ってくれました……』


『……ありがとう……エル・メルフィーラ……』


「どうして私の名前を……」


そう聞くと子供たちはクスクスと笑う……


『私達はずっとあなたと一緒にいましたよ……』


『あなたがどんなに私達を嫌っていたのか……痛い程見て、 聞いて、 感じていました……本当にごめんなさい……』


そうか……ずっと……私の中に……


「見守って……下さってたんですね……」


そう言うエルに子供たちは何となく微笑んでいるように見えた……


そしてエルと子供たちはしばらくその空間を歩き始めた……


「凄く綺麗な場所ですね……」


エルがそう言うと子供たちは言った……


『ここはあなたの『心』を模った空間です……』


『今のあなたの『心』は……氷の如く透き通り……炎の如く熱い意志を持っている……ここはそれを象徴したところなのです……』


これが……私の『心』……


エルは改めてその景色を眺める……


……今の私がこうで在ることが出来たのは……皆がいてくれたお陰……


そう思うとエルは胸が温かくなるように感じた……


するとエルの体は透け始めた……


『……どうやら体の目覚めが近いようですね……私達に会う事はもう無いでしょう……でも……もう大丈夫……』


『あなたはもう…迷う事は無くなった……』


『これからは……あなたの信じるモノを信じて下さい……』


「……はい……ありがとうございます……神霊様……」


『行きなさい……氷炎の英雄よ……』


『この世界の『希望』となりし者よ……』


そしてエルは謎の空間から消えた……




『……あぁ……この世の『全て』よ……』


『どうかあの子の魂に……溢れんばかりの『希望』を……』


『そして……どうかあの子の『運命』(みち)をお守りください……』




『シュラス様……』




エルがいなくなった空間で子供たちは、 空を見上げながらそんな事を呟いた……

続く……


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