第四話:経験した事のない事ばかり
「上手いよ、レーテ」
「ありがとうございます、ソレットさま」
私達兄妹はソレットさまご姉弟と合流し、護衛も見付けられた。
私とジャジーラさまは、レベル不明。ソレットさまは、冒険者ランクB相当。兄様はC相当。小兄様はB相当。
これなら、三人か四人組みパーティー一つ。レベルはそこまで高くなくても、西部を巡れるだろうという事になったの。
そして、護衛依頼を出し、三日で女性二人と男性一人のBランク冒険者に依頼をお願いする事ができたの。
何組か面談して、この方たちに決めたのですって。
決めると言えば、どちらも同じ家格と仮定して、和気藹々とした仲間として旅をする事も決まったの。
見聞を広めるためのグランドツアーであって、家としての繋がりを作るための旅ではないからですって。
んー、気楽で良いわ。
ソレットさま始め、兄様たちも護衛の方たちも、皆何かしらお料理ができるの。
逆に私とジャジーラさまは、お料理はできないわ。普通の貴族子女は、そんなものだよ。これが普通だからね?
ソレットさまたちがお料理できるのは、学校で料理も教わるからよ。
兎や鳥といった、小動物の解体。それと、卵焼きや串焼きくらいらしいのだけれど。これができるか出来ないかで、何かあった時の生存確率が全く違うからなんですって。
今は私がお料理に興味を示したので、ソレットさまが目玉焼きを教えて下さっているの。
「殻を割るのも、一度で出来ないものなんですね」
「どんなことでも、練習する事が殆どだろう? やった事がないのなら、簡単そうに見える事でも練習が必要なのは普通だ」
「そうですよね! 焼き加減は、成功するようにしますね!」
ジャジーラさまは、私の手元を興味深そうにご覧になっていらっしゃるのだけど。やってみたいとは仰られない。
「そろそろ良いのかしら?」
「スキレットを揺すって、くっついていなければ。固焼き卵が好きなら、裏返して更に焼くんだ」
揺する? 兄様達は他の料理をなさっていて、参考にはならなさそう。
スキレットを揺する?
「こうするんだよ」
スキレットの取手を持った私の手の上に、ソレットさまの大きな手が重なる。そしてスキレットを揺すり、卵が動くようになっている事を教えて下さった。
「わ! 動く! 固焼きにするには……」
「こうするんだ」
ソレットさまの手が私の手を包んだまま、スキレットを操る。すると、卵が綺麗に空中で裏返り、スキレットに落ちて収まった。
「わあ! 凄い! とろとろだったのに、こんな風にくるって裏返るんですね!」
後ろを振り仰げば、ソレットさまにしては良い笑顔で笑っていらっしゃる。余り自然に笑う方ではないから、ちょっと驚いちゃった。
「あ、ベーコン……」
何だか気恥ずかしくって、隣のコンロで調理しているベーコンの方へ向き直る。
「水分が飛んだな。後は好みのカリカリ具合になるまで、このまま弱火に掛けていたら出来上がる」
まだ近くから響いてくる、落ち着いた低い声。
どうしてかしら? どこも悪くないし、何より、さっきまで何ともなかったのに……。凄くドキドキする……
初めてのお料理。ソレットさまが教えて下さって、初めて作れたのに……
ドキドキが治まらなくって、この日の朝ご飯は、あまり食べられなかったわ。
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