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元日

 お正月も、坂上は仕事だった。なので、俺は例年通り、城崎の家族と共に初詣に行き、親戚の家を回った。父さんの運転する車に乗り、後部座席に海斗と二人で乗る。バックミラー越しに見られている気がして、あまりくっついて座るのは気が引けた。

 こうしていると、一年前と何も変わらないように思えた。親戚には俺が引っ越した事も、海斗との関係が変わった事も、もちろん話していない。いつも通り新年の挨拶をして、お年玉をもらった。親戚の家を回った後、車に乗っていると海斗が眠った。海斗はだいたいいつも無理をしているので、車に乗るとすぐに眠ってしまう。今日はここまで眠らなかったのが珍しいくらいだった。

 海斗ははじめ、シートに上向きに寝ていたが、車が揺れて俺の肩に頭が乗った。バックミラーから見られると思ったが、出来ればこのままにしておきたいと思い、とっさに俺も眠った振りをした。俺も海斗の方に頭を寄りかからせた。目を閉じていると、眠っているのか眠っていないのか、自分でも分からないような不思議な感覚に陥った。

「寝ちゃったわね。」

母さんが話しているのが何となく聞こえた。

「出来ればずっと、こうしていたかったのになあ。」

父さんが言う。更に、

「何を間違ってしまったんだろうな。」

とも言った。

「間違えたわけではないわ。うちで引き取る前から、あの二人は魅かれ合っていたもの。もし岳斗を引き取らなかったとしても、いずれこうなる運命だったのよ。」

母さんが言った。

 運命、か。母親同士が親友だった事、その母親同士が出会ったのも、運命のなせる業なのか。目を閉じて考えていると、海斗の手がだらんと落ちてきて、俺の手に当たった。そうしたら、そのまま俺の手を握るではないか。こいつ、起きてるな。だが、俺もそのまま眠っている振りをしていた。

 俺の家の前まで送ってもらって、三人に別れを告げた。アパートの灯りが点いていた。俺はお土産におせち料理をもらって、家の中に入った。殺風景な部屋。小さいテレビを見ながら、坂上が酒を飲んでいた。おせち料理をちゃぶ台に乗せると、

「お、有難い。」

と言って、坂上が手づかみで一つつまんで口に入れる。

 泣くな、俺。俺は、端っこの壁に寄りかかって、スマホを眺めた。


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