表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/52

嫉妬

 休み時間に、廊下でキャー!という悲鳴があちこちで聞こえ始めた。そう、今日は久々に母さんが寝坊して、海斗の弁当を俺が持って来たのだ。

「キャー!キャー!」

我が教室も、すごい悲鳴。思わず耳に指を突っ込みたくなる。実際突っ込んでいる男子もいた。教室に現れた海斗に、俺は弁当を持って近づいた。すると、栗田が走り寄ってきた。

「岳斗、今日こそ紹介してくれよ!」

嬉しそうな顔をした栗田がいた。ここでか・・・ちょっと心配だ。海斗には早く去ってもらった方がいいと思うのだが。しかし、ここまで先延ばしにしていた俺も悪いし、仕方ない。

「あー、海斗、こちら、友達の栗田。」

俺は弁当を手渡した後、そう言って栗田を指さした。海斗が栗田を見る。栗田は、

「こんにちはっす。栗田です。よろしくっす。」

と言って頭を下げた。面白い。なるほど、女子や護くんのようなガチなファンとは違うな。そこへ、笠原と金子も駆けつけて来た。

「ちわっす、金子と言います。よろしくっす。」

金子も同じように頭を下げた。笠原は、

「海斗さん、ちはっす。俺たち岳斗のマブダチっす。」

と言った。海斗は三人を見渡して、にこっと笑った。

「へえ、岳斗の友達か。よろしくな。」

海斗がそう言うと、三人はそろって

「はい!」

と返事をした。そして海斗が教室を去ろうとした時、クラスの女子のほとんどがダーッと詰めかけて来た。

「私、岳斗くんの友達の〇〇です!」

とそれぞれが叫ぶ。海斗も無視できないようで、立ち止まったけれど、このままだともみくちゃになる。

「あーちょっと、もうやめてくれ!頼むから、ここまで!」

俺は海斗と女子たちの間に入って両手を広げた。

「海斗、行って!」

俺が首だけ振り返ってそう言うと、海斗は俺の首に腕を回した。つまり、バックハグしたのだ。片手には弁当を持っているけれど。

「サンキュ、またな。」

海斗は俺の耳に口を付けてそう囁くと、腕を放して去って行った。バックハグを見て一瞬静まり返った女子たちは、海斗が俺の耳に口を付けたところで

「キャーー!」

と、ひと際激しく悲鳴を上げた。俺は耳が・・・多分真っ赤。あ、穴があったら入りたい。久々に。

 席に戻ると、栗田たちが俺を見てニヤニヤしていた。

「なんだよ。」

俺がふくれっ面をして問うと、

「いやー、海斗さんかっこいいなあ。そして、お前は愛されてるなあ。」

笠原がそう言ってうんうんと頷いた。他の二人も笑っている。俺は何も言えなかった。愛されてる、よな。少し嬉しかったりする。そんなの、前から分かっていたはずなのに。


 だが、やはり心穏やかではいられないのだった。また、目撃してしまったのだ。前園さんと海斗が話しているところを。教室の移動をしている時、体育館の入口で二人が話しているのを見てしまった。大勢一緒にいたのではなく、二人で話していたのだ。

 嫌だ。こんな風に心が乱れるのは嫌だ。一体どうしたというのだ、俺は。何がそんなに嫌なのだ?それは・・・海斗に恋人ができるという事実が、嫌なのだ。どうして?自分だって、かつて彼女を一瞬作った事があったし、ずっと思っていたではないか、海斗にも決まった人が出来れば、俺の恋愛も上手くいくのにって。海斗に彼女ができればいいのにって。それなのに、実際に出来たと思ったら、なんだこのどす黒い感情は。胸の痛みは。

 海斗、嫌だよ、誰かに取られたくないよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ