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※二話連投しております※
初見の方ご注意くださいませ。
醜聞といものは社交界の格好の餌なのでございます。
あっという間に無いこと無いこと面白おかしく脚色されたお話が翌日には城下の民にまで知れ渡っておりました。
(最早誰の話かもわかんないよね、ウケるww)
笑い事ではないのですよまったく。
ワタクシは頬に手を添え溜息を禁じ得ません。
昨晩、早々に卒業パーティから離脱したワタクシは怒り心頭で突入してきたお父様を宥めるのに一苦労だったのですから。
+ + +
「これはどういう事だろうか、陛下?」
ワタクシを強く抱きしめたまま、お父様が来駕された陛下に厳しい声を向けました。
「~~~あんのバカ息子ぉぉぉ!!!!!!」
対する陛下は遠吠えするように唸り頭を抱えておられます。陛下のお気持ちは察しますが、この構図おかしくありません?
「申し訳ありません陛下、ワタクシの不手際ですわ。……ですがここまで衆目を集めてしまった以上、ワタクシの胸の内に収めればすむはずだった領域を越えてしまいました」
「何がお前の所為なものか!!! そも、呆れるほど大量の不貞の証拠もあるというのに今まで我慢を強いられた我らこそ責める権利があるだろう!!!!!」
ワタクシのお父様は血気盛んな隣国からこの国を護る国境の辺境伯でございます。故にユスフェベル家は代々武力に特化しており、お父様もとても大柄で力強く逞しく、筋骨隆々で強面な今代の大将軍なのです。
だからお父様、力を……腕の力を緩めて下さいまし、娘は昇天しそうです。
「もう我慢の限界だっっ!!!! そちらがその様な態度で来るなら古の約定など知った事かっっっ!!!!!! こ の 話 は 無 か っ た 事 に さ せ て も ら う っっっっ !!!!!!!!」
ワタクシのお父様は――以下略――……お父様、抱擁されたままの大喝で娘は耳が壊れてしまいそうです。
「……確かに、そう言われても仕方の無い振舞いを愚息は続けてきた。身から出た錆だ。踏ん切りをつける良い機会であろう」
「まさか陛下、吹けば飛ぶような謝罪一つで済ませるおつもりか?」
鼻息も荒くお父様が陛下を問い詰めますが、あの……お父様……本当に息が………
(ああもう! 抵抗すればいいじゃんっ!)
アタシの声が薄れた意識を切り裂きました。すると勝手にワタクシの手が動き、お父様の丸太のような腕を何度も叩くではないですか!
「お父様、タップ! タップっ!!!」
「たっぷ?」
聴き慣れない言葉を訝しんだお父様が漸く腕を緩めてくれました! 助かりました~~
「愚息は王籍を剥奪、その後件の令嬢共々階級高位者への不敬罪で斬首が妥当だと思うがどうだろうか?」
うえええぇぇ!? 陛下、淡々と仰ってますけど貴方の実子を簡単に斬首とか言わないで下さいまし!!?
(ま~、この国の法的に妥当な処置じゃないの?)
そんな!? 殺さずの精神はどこへ置いて来たのですかアタシ!!
(ゆ~ても今アタシはあんただからねぇ)
「……娘への醜聞はどうなさる?」
嗚呼、お父様も第三王子を処す事は決定なのですね!!? こんなに狼狽えているのってワタクシだけなの!!??
……どうしたらこの場を治められるかしら?
確かにワタクシはあのクズ野郎と添い遂げなくて良いのなら嬉しいですし、これまで散々呑まされた煮え湯のお返しもしたいです。ですが、矯正や注意する努力もせず放置していたワタクシたちにだって責任はあるのですから、彼らにだけ罪を負わせるのは如何でしょう?
と言うか、
消 さ れ て 終 わ り な ん て ワ タ ク シ の 気 持 ち は ど う す る お つ も り ? (綺麗な笑顔)
(やっと本音を出したねワタクシw)
「陛下、お父様、至らないワタクシの意見も聞いていただけませんか?」
スッと背筋を伸ばして改まったワタクシの気配にお二人も真摯な視線を下さいました。
「此度の件、事態の収束まで含めてワタクシに一任して下さらないでしょうか?」
グッと腹の奥に力を入れて渾身の淑女の笑みで提案します。「ヒィッ! オルガッ!!?」お父様?何故慄きながらお母様のお名前を溢したのかしら? そんなに震えて、今日は冷えますものね。あら大変! 陛下の顔色もよろしくないわ!?
ワタクシは備え付けのベルでお茶の入れ替えを指示しながら陛下のご様子を窺います。
「陛下? 大丈夫ですか?」
「ヒッ! ……コホン、も、もも問題ないとも。其方の好きに取り計らうが良い。王家は甘んじて粛々と受け入れよう」
心配したら内容も聞かずに許可が下りたんですけれど何でしょう解せませんわ。
(ククク、いいじゃん! オッケー貰ったんだからさ♪)
それもそうですわね。
さ、お父様いつまで震えているのですか? 早馬飛ばしてお母様に相談申し上げないと! さっさとお家へ帰りますよ!
善は急げでワタクシはお父様の首根っこを引っ張って帰路へ着きました。
「……流石オリエガーナの娘………」
嵐の様に去った親子に置いて行かれた陛下の呟きをワタクシが知る由もなく。
「彼の地の母娘が事を起こす前に愚息の籍を消しておかなければ……宰相を余の執務室へ召還しろ! それとザンブルグ男爵も急ぎ呼び出せ! 但し極内密にだ!!」
要らぬ火の粉を避けるため、根回しという名の事前準備に蒼白の王様は動き出したのでした。
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