詮索
「覚悟してね」
そう言って机にあったカップで桜木亮太の頭を殴った。
それは気絶させるにはきっと弱すぎる痛みだと思われる。
けれど彼は気を失った。
「刺激が強すぎたかな?」
けれどそれは好都合だった。
桜木亮太が気絶している間に部屋中をくまなく探して回った。
今までの私も知らない何かがあるかもしれない。そう思ったのだ。
本棚は少年漫画ばかりで特に変わったものはなさそうだ。
念の為本を取って奥を見たりもしたが問題なかった。
タンスは勿論洋服や下着ばかりのようだ。
引き出しも開けようと手をかけた。全部で三段。
なんだか嫌な予感がしなくもない…
小さく深呼吸をしてまず一段目を開けた。
そこには小物やアクセサリーなどが入っていた。別に怪しいものもなさそうだった。
次に二段目。そこには文具やハンカチなど日常でよく使いそうなものが入っていた。
最後の三段目。そこにはノートがたくさん入っていた。
一冊手に取ってパラパラとページをめくっても特に何も書かれてはいない。
ノートのストックをここに入れているのだろうか?
そう思いながら先程手に取った一番上のノートを戻し、一番下にあったノートを手に取った。
一ページ目を見るとそこにはやはり、文字が書いていた。
なんとなくではあるがそんな予感はしてあった。
だからそこまで驚きはしなかった。
その内容を見るまでは。
ひとまずそのノートは置いておいて、下から何冊目まで文字が書かれてあるのかを確認した。
ノートは全て合わせて七冊あったが、五冊は文字が書かれていた。
全て、私に関してのモノらしい。
今すぐにでも確認してやりたいが桜木亮太が起きてしまえば厄介だ。
そう思ってまずは問題の押し入れを確認することにした。
ここに来てすぐの時も一応見たが、それは一瞬だった。
それに押し入れは私の腰辺りのところに仕切りがあり二段になっている造りだった。
その下にあった段ボールが少し気になっていたのだ。
桜木亮太に一度視線を移すが一向に起きそうにはない。
そう判断し、詮索を続けた。
押し入れを開ければやはりひどい数の写真が壁に貼り付けにされていた。
何度見ても気持ちのいいものではないだろうなと思いながら、下に置かれた段ボールを引きずり出す。
全部で三つ。大きさもそこそこあるがそこまで重くはない。
一体何が入っているのだろうかと不思議に思いながらそれを開けると思わず「ひっ」と小さく声が漏れてしまった。
「やっぱりストーカーね」
嫌悪からか恐怖からか…私は震える手をそっと握りしめた。
段ボールの中には大量の袋。
その中には私の毛髪、触れた彼の所有物、口紅を写したセロハンテープ等色々入っていた。
全て袋の外に日付と場所が書かれていた。
気持ち悪すぎる。目を逸らしたくなるがグッとこらえて私はまたカメラにおさめた。
まさかと思って残り二つの段ボールも開けたがまさかだった。
そしてもう一つ。どうして彼が持っているのかわからないが、とんでもないものが目に映った。
それは、私の首を絞めたロープだった。
私自身に記憶はない。けれど、そう記載されているのだ。彼自身の手で。
警察が回収しなかったのだろうか。そんな疑問が頭に浮かんだがそれどころではない。
とりあえずこれだけは絶対に見逃すわけにはいかなかった。
二つとも写真を撮り、ロープは私のカバンにしまった。
そして他にも見て回ったが特に何もなさそうだったため探すことはやめた。
もうここには用はない。私は先程軽く見たノート五冊もカバンにしまって桜木亮太の家を出た。
それから一度家に戻り、私の日記をカバンに入れ、再度家を出た。
家で読むには危なすぎる。桜木亮太の部屋を荒らした痕跡は消してあるけれど気付かないとは限らない。
それに目が覚めて真っ先に私の部屋に来るだろう。
そう予想したのだ。だから私はなるべく遠くの駅の近くにある漫画喫茶に行った。
そこでこのノートの中身を見ようと思ったのだ。
自身のノートを持ち去ったのは桜木亮太に盗まれるのを防ぐため。
そして何より、明日の私が困らないために。
今日は恐らく家には帰れないだろうと思ったのだ。
「まさかこんな大事だなんて…」
一体過去の私は何をしでかしてこんな事になってしまったのか…
それを今の私が知る由もないが…
「やれることは全部やるだけ。だよね」
短く息を吐き、私はノートを再度開いた。




