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ずっとずっと真っ暗な闇の中、右も左も上も下もわからなかった。

足がちゃんと地面についているのか、それとも浮いているのか。

そもそも地面というものがあるのか。

それすらもわからない。本当に何もない空間。

ずっとずっと、ここでさまよい続けるのかと思っていたけれど、ふとした拍子になぜか光に包まれてあっという間に体が重くなって自分は今、優しい空間にいるのだと気が付いた。

どこだろう。

ただただ、白い。

「薫!?」

誰だろう。

知らない人が私を見ていた。

薫。それはなんだろう。

目の前にいるこの人は誰なんだろう。

何一つ、私の中で答えが見つからない。

頑張って答えを探そうとしても、全部真っ白。何もない。

知らないのだ。

「誰」

そういうと目の前にいる彼は頬を濡らした。

この現象は知っている。

この人は今、泣いているのだ。

「なんで、泣いてるんですか?」

頬を伝う涙をそっと拭うとただ、ごめんとだけつぶやき始めた。

何に対してのごめん、なんだろう。

私、何かしたのかな。

それとも彼が何かしたのかな。

でも私はそれを知らない。

だから謝られても困る…

どうしよう、そう思っていた時だった。

扉が開いて男の人が入ってきた。

「目を覚まされたんですね。早速なんですけど検査しますね」

そういうと車いすに移動させられていろんな部屋に連れて行かされた。

レントゲンを撮ったり簡単な記憶のチェックをしたり。

お医者さんに目覚める前のことを覚えていますか?と聞かれて何も答えられなかった。

何一つとして私は覚えていなかったのだ。

物の名前は何となく、憶えているのに。

どうして。どうしてこんなことになってしまったのだろう。

目覚める前の私は何をしていたのだろう。

考えても考えても靄が消えなくて、何一つわからなかった。

検査が終わって部屋に戻ると女の人がいた。

この人も私の知らない人だ。

さっきのお医者さんと一緒に出ていくと目覚めたときから一緒にいる彼と二人きりになった。

彼はなにも言わず、ずっと座って自分の手元ばかり見ていた。

声をかけようか迷ったけれど、聞きたいことは山ほどあったから声をかけた。

「ねぇ」

そういうと驚かせてしまったようで肩が跳ねていた。

「ど、どうしたの?」

なにをそんなに怯えてるんだろう。

そう思いながら思っていることを口にした。

「君、誰??」

「あ、えっと…俺は…」

難しいことを聞いてしまったんだろうか。

ずっと考え込んで答えが返ってこなかった。

「俺は…」

ずっとそればかり。

どうしたのかと思って顔を覗き込んでも、真剣に考えこんでいるようで私の事は見えてなさそうだった。

「俺は君の、恋人だよ…っ」

詰まりながらそう告げるとボロボロと泣き出した。

「こい、びと…って、なんでまた泣いてるの?」

聞いてはいけないことだったのだろうか。

そんなに悲しいことだったのだろうか。

どうしていいかわからずにだた黙り込むしかなかった。

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