表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/79

地獄

 呪術の修行って具体的に何をするのかと不思議に思っていた俺だったが、答えは直ぐに分かった。

....できれば知りたくなかったが。


「...これで15本目、今日のノルマまで...あと35本」


「ちょ、ちょっと、待って。死ぬ!間違いなくこれ死ぬ!やばい...やばいって」


 最初は良かった。ミレイさんにひたすら呪術を使い続けろ言われたので、ひたすら自分にパワーダウンを打っていた。

 MPが尽きたとき、地獄が始まった。

 普通MPが少なると目眩がしたり、具合が悪くなったりする。そして0になると気絶する。

俺も例に漏れず、MPが尽きて気絶したが変なものを飲まされて強制的に起こされた。

まずい。物凄くまずい。なんだこれ。

 聞いてみるとMP回復のポーションらしい。

確かに目眩とかはしなくなったが精神的にかなりキツい。

 俺はもうちょっと簡単な修行にしませんか、と交渉してみたが、ポーションを強制的に飲まされた。つまり交渉は決裂してしまった訳だ。

5本目くらいから体が拒否反応を起こして魔法を打てなくなったが、体を操られ強制的に撃たせ続けられた。


 日が沈む頃には俺の魂も地面の奥底に沈みそうになっていた。


「ミレイどうだった?呪術のレベル上がった?」


「...レベル3まで上がったわ。でもこれ以上は...」


 いつの間にか呪術のレベルが3まで上がっていたらしい。しかし今の俺にはそんな事を気にしている余裕はない。精神的に疲れてしまって立てない。

 ミレイさんは今の俺のステータスを紙に書いてくれる。


Lv.0


筋力 14

魔力 14

敏捷 13

物防 8

魔防 5

幸運 10


スキル

呪術lv.3 火魔法lv.2


 筋力の他に魔力も14になっている。敏捷に関しては走り込みの成果が出たらしく13に上がっている。


「流石ミレイね!ありがとう、次はギルが冒険者になってからまた来るわ!」


「...どういたしまして。...ギルは疲れてるだろうから...今日はゆっくりさせてあげて」


「言われなくてももう休ませるわよ。さあ行くわよ」


 師匠は俺の襟首を掴むとそのまま引きずっていく。

うわ、服が、ズボンが破れちゃう。


「し、師匠やめてください」


俺は無理矢理体を起こして歩き出すと師匠は手を離してくれた。


「なんか強そうな魔法使えるようになった?」


「えーと、カース・インディグネーションって魔法使えるようになりました」


「あー、あの自分のHPを犠牲にして相手のHPを減らす使えない魔法ね」


なんで分かるの?しかも評価が酷いし。


「師匠はもっと凄い魔法使えるんですか?」


師匠はローブを羽織っていたが、前ゴブリンに浴びせた蹴りから推測するに実は武闘派と見た。


「当たり前よ。どちらかというと魔法メインだわ!」


師匠、体術ができるのに本職魔法使いとか凄すぎる。


「着いたわよ。さあ、今日はもう休みなさい」


気付いたらもう道具屋の前まで来ていた。師匠に礼を言って、自分の部屋まで戻って眠りに入った。


 そして王都に来てから1ヶ月が経過した。

 今俺は黄昏の迷宮でゴブリンと戦っている。

師匠が言うにはもう少しでレベルアップするらしい。

 今日はまだ潜ってから1時間くらいしか経っていない。

 今日中にレベルアップ出来そうだな。

 一人でゴブリンを倒すのはもうそれ程大変じゃなくなってきた。

俺は慢心していた。

絶望のどん底に突き落とされたのはそれから1時間後であった。

 俺が53匹目のゴブリンと戦っているときだった。


「うわっ!」


地面に穴が開いていたらしく、ゴブリンと戦っていた俺は気づかずに落ちてしまった。

痛いなぁ。俺は尻をさすりながら立ち上がったときだった。

上から何かが落ちてくる。

咄嗟に前転して避ける。

そして落ちてきた物をみるとそれは振り下ろされた棍棒であることが分かった。


「トロール、なのか?なんで強い魔物がここに....」


 トロールは只々笑っているだけだった。

 トロールとは茶色の肌で腹がでている、身長が5mを超している化け物だ。

 中級冒険者が相手をするような魔物であって、俺が戦っていい魔物ではない。

 出口を探す。

無い。出口が無い。

 顔の血の気が引くのを感じる。

体が震えて、呼吸が荒くなる。

隙を見せたら殺される。

 しばらくの間、膠着状態が続いた。

最初に動いたのはトロールだった。

 巨体に見合わぬ速度で接近し、棍棒を横に振る。

俺はそれをバックステップで躱す。

危ねえ。これ当たったら余裕で死にそう。

魔法を詠唱する。


「パワーダウン!」


 手の平の光が敵...ではなく剣に当たる。

 魔法というものは厄介で、実力差がありすぎる相手に魔法を使っても効かないという特徴がある。

なので普通に敵に打つだけだったらきっとレジストされてしまうだろう。

しかし剣に魔法を付与して敵に斬りつけると、体内から直に魔法が伝わるので基本的にはレジストされない。師匠直伝だ。意外に役に立つもんだな。

 剣を構え直す。呼吸を整え、敵を見据える。

 死闘が始まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ