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戦闘

 ダンジョンというのは前触れなく現れる物だと読んだ書物に書いてあった。

 王都のダンジョンも例外ではなく、西通りの民家に縦10m横5mの巨大な門が現れた時はパニックになったそうだ。

 門に触れるだけでダンジョンに入ってしまうのですぐに厳重体制を敷いて討伐隊を組んだ。

しかし思ったよりも深く攻略が困難と把握した国は利用する方法で話を進めた。

こうした経歴をもっているのが黄昏の迷宮である。


 俺は今、本来なら入れないその迷宮へと足を踏み入れている。

 通路は広く、壁は変な材質だ。明かりは壁にかけられた松明しかなく、天井は暗くて見えない。

 師匠は淀みなく歩いている。その後ろを着いていく。

少し歩いた後、急に止まる。

手で静かにとジェスチャーして前を指差す。

そこにはゴブリンがいた。

背が低く、緑色の汚い肌で棍棒を持っている。


「...あそこにいるわ。ギル、魔法で奇襲しなさい。やり方はわかるでしょ?魔法なら倒せるはず」


「え?...あ、はい」


無理だろ。魔法の使い方はわかるけど使ったことはない。しかも魔物なんて倒したことがない。

目線で訴えかけるが無視される。

スパルタかよ。

気持ちを落ち着けて、手を前に突き出しファイアーボールの魔法を唱える。

まあ、唱えると言っても魔法名を言うだけで発動するが。


「ファイアーボール!」


手の平から小さな火の玉が勢いよく飛び出す。

飛び出した球がゴブリンの頭にヒットする。

そしてゴブリンが死ぬ.....いや、死ななかった。

え?俺はフリーズする。

こちらを向いたゴブリンは敵意に満ちた眼差しをこちらに向ける。

そして、こっちに近づいてきた。

動けない。近づいてくる死の気配に威圧されてしまって俺は呼吸すらも忘れてしまったかのように身動き1つ取れなかった。


「やっぱり噂は本当だったわね」


 突如、風が吹く。

師匠が飛び出しゴブリンを思い切り蹴り上げる。

蹴られたゴブリンは5mくらい吹き飛ぶ。


「これを使いなさい!」


 ローブの中から剣を取り出してこちらに投げてくる。

どこに隠してたのかは甚だ疑問だったが、俺はとりあえずゴブリンに向き合う。

幸い剣は村で何度か振ったことはあるので慣れている。

ゴブリンはもう既に起き上がっていてこちらに近づいてくる。

深呼吸する。

少し緊張しているがもう先ほどのように取り乱したりはしない。

 姿勢を低くして近づく。

鍔迫り合いは避ける方向で行こう。

敵との距離僅か1m。

先に仕掛けてきたのはゴブリンだった。

棍棒をこちらに向けて思い切り振ってくる。

俺はそれを大きく避ける。

そしてその勢いで思い切り、剣を叩きつける!


「グギャァ!」


体を斬られたゴブリンはもともと弱っていたこともあって死んでしまった。

死体が地面に吸われていく。

俺が不思議そうに見ていると、師匠が解説してくれる。


「魔素が濃すぎて死体は形を保つことができないの」


 魔素とは魔法を使う為に必要なものだ。

空気中にもたくさんあるがダンジョンではその10倍はあるらしい。

 魔素がたくさんあればある程魔法の強さが増す。

時には暴走という形で現れることもあるが今の俺には関係は無いだろう。



ゴブリンが溶けた後の地面には黒い石が落ちていた。


「魔石よ。あげるわ」


 魔石とはダンジョン産の魔物が死んだ後に落とす物だ。

使い方は様々らしいが冒険者にとっては金策になるらしい。


「あと80体を1ヵ月くらいかけて倒すわ。そしたらきっとレベルアップして条件を満たせるはず」


「筋トレとかした方が早いんじゃないですか?」


疑問に思ったことを口に出す。普通に考えるとたかが3日くらいで1上昇したことを考えるとレベルアップより遥かに早いと思うのだが。


「人間の限界、よ」


意味深な言葉を呟いて以後しばらくの間口を開くことはなかった。

 そこからは黙々とゴブリンと戦う時間が過ぎていった。

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