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小さな希望

「えぇ....こんなのって...」


 俺は目からこぼれ出す涙を止める方法を知らなかった。

受付嬢はこちらに同情するような視線を向けてくるが、何も言わない。

 無言の時間が過ぎる。

 突如、誰かが俺の肩を叩いた。


「少年、俺が慰めてやるよ」


 横を見るとそこにはおっさんいた。

手でテーブルに座るように示してくる。

 俺はゆっくりとテーブルまで歩いて椅子に座った。


「残念だったな。お前、どこかアテはあるのか?」


 顔を覗き込んで話しかけてくる。

そんなのあるわけないじゃん。

 俺はその問いに首を振ることで答える。


「どうしても、冒険者なりたいか?」


真剣な目で見つめてくる。


「ちょっとレオンさん⁉︎」


受付嬢が慌てて止めようとする。しかし止まらない。


「幸いなことにお前にはまだチャンスはあるぜ」


俺は、俺は。冒険者にならないと...。村での暮らしはもう嫌だ...。


「俺は!冒険者になりたいです!」


 おっさんは大きく頷いた。受付嬢はもう諦めたのか不機嫌そうな視線をこちらに投げかけてくるだけで、何も言わない。


「どうやったら俺は冒険者になれるんですか?」


そう問いかけるとおっさんは、ニヤリと笑い、


「需要だよ」


と簡潔に答えた。

頭の中が?で支配される。

 おっさんは続ける。


「簡単なことさ。お前しか持ってない資質が欲しい奴がいる。そいつに助けてもらえばいい」


「その人って誰ですか?」


そう聞いた瞬間、入り口が勢いよく開かれる。


「ちょっとミーア!見つかった?」


入ってきたのは黒いローブを着た黒髪の少女だった。

ミーアと呼ばれ反応した人物、受付嬢が答える。


「そんなすぐ見つかるはずないでしょ」


「早くしなさいよね!」


気性が荒いのかよく分からないが、物凄いうるさい人だな。そんな風に事の端末を見届けていると。


「おい、少年。行け」


「え?なんで俺?」


椅子から立たされて、背中を押される。

ちょうど受付嬢と少女の間に挟まるような位置関係。

非常に気まずい。


「なによ、アンタ」


不躾な目で見つめてくる。


「お、俺はどうですか?」


あの少女が何を必要としてるからはよく分からないが、あのおっさんの言うことを信じるならこれが最適解だろう。


「....ステータスカードを見せなさい」


ジト目をしながら見つめてくる。


「すいませんステータスカードは持ってないです」


と答えるとみるみる顔が赤くなっていき、


「な、なんなの?意味わかんない!ミーアこいつ追い出して!話になんない!」


やばい。非常にまずい。


「その子。冒険者登録の基準満たしてないだけで呪術スキル持ってますよ」


 意外なところから助け舟が来る。俺は驚きで言葉が出ない。てか必要なスキルって呪術スキルだったのか。レアなのかな?


「本当?嘘ついてたら許さないわよ。てか基準満たしてないって、能力値かぁ。はぁ、着いてきなさい」


 少女はくるりと反転し冒険者ギルドから出る。

 俺は遅れないように走ってその背中を追いかけた。

これから何が起こるかはよく分からないが、第一関門はきっと突破できただろう。


「時間ある?」


こちらを見ずに聞いてくる。


「はい。時間は余るほどあります」


機嫌を損ねて捨てられたりしたら詰むから粗相がないようにしないと。


「王都出身じゃないでしょ。泊まるアテある?」


王都出身じゃないことを見抜かれる。まあ、みすぼらしい格好してるから分かるか。


「全然ないです」


「そう」


短く言葉を返して、以後、口を開くことはなかった。



 歩き始めて5分、大きい道具屋の前に着く。

そのまま中に入っていくので追いかける。


「これからここに住まわせてもらいなさい」


中に入ると、齢60を迎えてそうなおじさんが俺を出迎えてくれた。


「ホーク。こいつのことしばらくの間泊めさせなさい」


しかしこの返答は意外なものだった。


「え?嫌なんじゃが」


 まだまだ俺の苦難は続くらしい。

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