4話 服を作りました
生活に必要なものは、衣食住の3つです。
食はなんとかなりました。
賢者の石を使い、栄養たっぷりのパンをたくさん作りました。
ついでに、甘いジュースも作りました。
これで一週間は問題ないはずです。
本当なら自給自足が好ましいのですが……
今はまだそんな余裕がないので、錬金術に頼ることにします。
錬金術、万能です!
続けて、住。
壁や天井に穴が空いているし、ベッドは草を敷き詰めただけだし、早急になんとかしたいところなのですが……
いかんせん、材料は用意できても、家を修理する技術を持った人がいません。
うかつでした。
どうにかして、職人を確保しないといけませんね。
街から呼べば来てくれるでしょうか?
とりあえず、今後の課題として残しておいて、今は保留です。
最後に、衣。
これは今、一番大切なことでした。
アンジェラさんたちの服はぼろぼろでしたし……
なんというか、その……はいていませんでした!
そう……パンツを!
あ、別にそういう趣味じゃないですよ?
姉妹そろってそういう趣味とか、とんでもないですね。
ドキドキ。
って、私がドキドキしてどうするんですか。
話が逸れました。
アンジェラさんたちは着るものにも困っているらしく、パンツも替えがない状態ということ。
なので、数日に一度は川で洗い、干さないといけないため、はいてない日が出てくるということでした。
これはいけません。
同じ女の子として、見過ごせるものではありません。
というわけで、まずは衣をなんとかすることにしました。
そのことをアンジェラさんに話すと……
「そんなことを言われても……あたし、裁縫とかできないわよ?」
困った顔をされました。
「ナインはできるの?」
「いいえ、私もできませんよ」
今まで錬金術のことばかり勉強してきましたからね。
裁縫なんてからきしですよ。
えへんっ。
……いばることじゃありませんね。
女の子としてどうかと思いますし、反省。
「そこは私に考えがあるので大丈夫です。まずは、パンツを作りましょう」
賢者の石を錬金釜に入れました。
そして、ぐーるぐーる。
ぼんっ。
「はい、パンツですよ」
飾りもなにもないシンプルなパンツですが、ないよりはマシです。
あと、今のものはかなりボロボロになっていたので、これにはきかえてもらいましょう。
「……ナインみたいな美少女から笑顔でパンツを渡されるって、なんか変な気分ね」
「えっ、なんですか、急に。いきなり褒めないでくださいよ」
「なんか10枚くらいあるんだけど……」
「替えが必要じゃないですか。あと、これは妹さんの分です」
新しく作った小さめのパンツを渡した。
「うん、ありがとう」
アンジェラさんはにっこりと笑い、さっそくパンツを足に通して……
「わわわっ」
「どうしたの?」
「い、いえ。なんでもありません」
同性とはいえ、着替えを見るのはなんだかドキドキします。
ついつい視線を逸らしてしまう私でした。
「あ……なんか、すごくはき心地がいいかも。温かいし柔らかいし……これ、本当に錬金術で作ったの?」
「その光景を見ていたじゃないですか」
賢者の石を使った、おそらく、世界で一番贅沢なパンツなので、はき心地は抜群だと思います。
「シンシア、おいでー」
「はーい」
アンジェラさんに呼ばれて、妹さんが出てきました。
シンシア・フィスレス。
10歳。
育ち盛りの元気で明るい女の子。
私にもすぐに懐いてくれて、とてもかわいい子です。
妹にするならシンシアちゃんみたいな子がいいですね。
ベスト・オブ・シスターです。
「どうしたの、お姉ちゃん? 今、野草のスープを作っていたんだけど?」
シンシアちゃんはすっかり元気になりました。
料理が得意らしく、あちらこちらから野草などをとってきて、独自の料理を作り上げるというスキルを持っています。
今朝も野草のスープをいただきましたが、とてもおいしかったです。
サバイバル能力に長けているので、とても頼りになる存在です。
……8歳の子を頼りにする15歳というのは、いかがな構図かと思いますが、そこは見逃していただけると幸いです。
「ナインがパンツを作ってくれたから、はいておきなさい」
「ホント!? ありがとう、ナインお姉ちゃん!」
シンシアちゃんが目をキラキラと輝かせて、ぎゅうっと抱きついてきました。
かわいい。
すごくかわいいです。
この子は天使でしょうか?
なんだか昇天してしまいそうです。
「わー、すごく温かいし、ふかふかしているね!」
パンツをはいたシンシアちゃんは、にこにこ笑顔になりました。
その笑顔を見ていると、パンツを作った甲斐があるというものです。
……パンツを作った甲斐があるって、なかなかのパワーワードですね。
自分で言っておいて恥ずかしくなりました。
「さてさて。次は服を作りましょう」
「でも、どうするの? 確か、30センチメートル以上のものは作れないんでしょう?」
「ふっふっふ。そこはこの、天才美少女錬金術師、ナインちゃんにお任せあれ……ですよ!」
「期待しているわ、天才美少女錬金術師ちゃん」
「わーい、ナインお姉ちゃんは天才美少女錬金術師ー!」
「すいません、やっぱり恥ずかしいので、その呼び名はやめてください……」
伏してお願いする私でした。
「一気に服を作ることはできませんが、パーツ単位で作ることは問題ありません」
錬金釜でぐーるぐーる。
10くらいに分けた服のパーツができあがりました。
あとは、針と糸で各パーツを縫い合わせるだけです。
さすがに、これくらいなら私でもなんとかなります。
「というわけで、完成です!」
アンジェラさんとシンシアちゃんの服が完成しました。
さっそく二人に着てもらいます。
あっ、着替えは家の中でしましたよ?
なんか、私が変な趣味に目覚めそうだったので、家の中で着替えてくださいとお願いしました。
「ど、どうかしら?」
アンジェラさんはレースブラウスとフレアスカート。
ちょっと照れているところがかわいらしくて、いいポイントになっています。
「すごくよく似合っていますよ」
「ほ、本当? からかったりしていない?」
「そんなことしませんよ。すごくいいと思います」
「そっか……ありがと、ナイン」
「ねえねえ、ナインお姉ちゃん。私はどうかな?」
シンシアちゃんはワンピース。
元気なイメージがぴたりと合っていて、こちらもよく似合っています。
「すごくかわいいですよ」
「ホント!? やった、ナインお姉ちゃんにかわいいって言われちゃった、えへへ♪」
無邪気に喜ぶシンシアちゃんはかわいいです。
やはり天使でしょうか?
「ありがとね、ナイン」
「ありがとー、ナインお姉ちゃん!」
こうして服はなんとかなりました。
ただ、着替えのためにさらに数着を作ることになり……
慣れない針仕事をして、指を血だらけにしてしまうのはまた別の話です。
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