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3話 賢者の石を量産しました

明日からまったりと更新します。

 アンジェラさんの妹さんの病気は治療したものの、まだ目を覚ましていません。

 体力が落ちているから、体が休みを欲しているのでしょう。


 衰えているのはアンジェラさんも同じで、一目見て栄養不足ということがわかります。

 私は保存食と水をアンジェラさんに渡して食べるように言いました。

 もちろん、妹さんの分も渡しました。

 ただ、妹さんはまだ寝ているので、起きたら食べさせるようにと言っておきました。


 その後、私は再び森へ向かいました。


 目的は一つ。

 太陽の花で、もっとたくさんの賢者の石を作ることでした。


 軽く村を散策しましたが、アンジェラさんの言うように他に人はいませんでした。

 ほぼほぼ廃村です。


 こんなところを開拓しろなんて、お父さんとお母さんも鬼ですね。

 ちょっと恨みますよ?


 でもでも、錬金術にできないことはありません!

 逆境であればあるほど燃えてくるというものです。


 とはいえ、ちょっとやそっとのテコ入れで村が回復するとは思えません。

 ガッツリと根っこの部分から治療しないといけません。


 そのために賢者の石が必要でした。

 一つではなくて、大量に。


 いくら錬金術師といえど、無から有を生み出すことはできません。

 素材が必要なのです。


 その点、賢者の石はとても便利です。

 賢者の石さえあれば、ほとんどのものは作成できますからね。


 とはいえ、家一軒をいきなりぽんっと生み出すことはできません。

 せいぜい、木の板一枚というところでしょうか?


 錬金術ならば、質量保存の法則を多少は無視できるのですが……

 大幅に無視することはできません。

 作成できるものの大きさも制限があるんですよね。

 現状、この小型錬金釜では、どんなに大きくても30センチメートルくらいのものが限界です。


 もっと大きな錬金釜があれば、さらに大きなものも調合できるのですが……

 ないものねだりをしても仕方ありません。

 今あるものでなんとかしていきましょう。


 ええ、なんとかしてみせますとも!


「よしっ、つきました!」


 二度目なので迷うことなく、太陽の花が咲いている場所にたどり着くことができました。

 あいかわらず、いっぱいの太陽の花が咲いています。

 軽く100は越えていますね。

 ひょっとしたら、1000に届くかもしれません。


「とりあえず、持ち運べるだけ作っておきましょうか」


 私は太陽の花を摘み、賢者の石の調合にとりかかりました。




――――――――――




「……どうしましょう? 作りすぎてしまいました」


 調子に乗って、賢者の石を50個ほど作成してしまいました。

 手の平サイズとはいえ、これだけあると持ち運びが大変です。


「んーっ!」


 なんとかリュックに全部押し込みました。

 ふう、やりました……!


「って、錬金釜と錬金棒はどうしましょう……?」


 もうリュックはいっぱいです。

 隙間もありません。


「手で運ぶしかなさそうですね……んぐぐぐっ!」


 錬金釜、けっこう重いんですよね……


 私は汗だくになりながら村に戻りました。


「あっ、ナイン!」


 村に戻ると、アンジェラさんが迎えてくれました。


「ただいま戻りました! ふぅううう……つ、疲れましたぁ」


 錬金釜とリュックを地面に下ろしました。


 なんだか、一生分の運動をしたような気がします。

 ものすごく鍛えられたような気がします。


 腹筋が割れたりしたらどうしましょう?

 女の子としては、それは勘弁してほしいのですが……


「大丈夫? 言ってくれればあたしも手伝ったのに……」

「いえいえ、心配無用ですよ。私もそれなりに鍛えていますからね。それに、アンジェラさんもまだ本調子ではないでしょう? ゆっくり休まないと、また風邪を引いてしまいますよ」

「……」


 アンジェラさんがじーっとこちらを見てきます。


「どうしたんですか?」

「あのさ……もしかして、ナインって女神さまとかなのかしら?」

「えっ!? なんですか、唐突に?」

「いえ、だって……あたしたち姉妹を助けてくれるし、食べ物をくれるし……女神さまのような存在みたいね、って」

「私なんかを女神さまと一緒にしたら、本物の女神さまが怒りますよ?」

「そんなことはないわよ。ナインなら新しい女神として歓迎されるんじゃない?」

「ちょ……よ、よしてくださいよ。そんなことを言われても……はぅ」

「あら、照れているの? ふふっ、ナインもかわいいところがあるのね」

「もう、からかわないでくださいね」


 ぷくーっと膨れる私。

 くすくすと笑うアンジェラさん。


 なんていうか……

 姉がいたらこんな感じなのかなあ、と思ってしまうのでした。


「あっ、そうそう! のんびりしている場合じゃありません。日が出ているうちにやっておかないといけませんね」

「なにをするの?」

「そろそろ調合薬がなくなりそうなんですよ」

「ちょーごーやく?」

「あっ、調合薬というのは、錬金術の際に必ず必要なものなんですよ。素材を分解して、一つにまとめて、新たに生成してくれるというもので……とにかく、調合薬がないと錬金することができません。なので、今のうちに作っておこうかと」


 小型錬金釜に賢者の石を投入。

 次いで、調合薬。


 ぐーるぐーる。


 ぼんっ。


「できました!」


 小さな小瓶が10個ほど。

 ふむふむ。

 賢者の石一つで作れる調合薬は10個ですか。

 覚えておいた方がよさそうですね。


「それが調合薬?」

「はい、そうですよ……って、ずっと見ていなくてもいいんですよ?」

「ううん。ナインさえよければ、見学させてくれない? あたしたちを助けてくれた錬金術には興味があるし……なにかあれば手伝えるかもしれないし」

「そういうことならわかりました」


 アンジェラさんに見守られながら、賢者の石を4つ使い、さらに調合薬を40個作り出した。

 計50個。

 これでしばらくは錬金に困ることはないでしょう。


「これ、置いておくスペースってありませんか? 私のリュックには入りきらないので……」

「ウチの棚を利用するといいわ」

「ありがとうございます」


 アンジェラさんと協力して調合薬を棚に運んだ。


 そうこうしているうちに陽が暮れてきました。

 ウチにおいで、と言われたので、アンジェラさんに甘えることにしました。


 壁や天井に穴が空いていましたが……

 それでも野宿よりはぜんぜんマシでした。


 その日は、私が錬金術で作った栄養たっぷりのパンを食べて……

 そのまま草が敷き詰められたベッドで、アンジェラさんと妹さんと一緒に寝ました。


 そして、翌朝。


「んっ」


 パチリと目が覚めました。

 見ると、アンジェラさんも妹さんもまだ寝ています。


 二人を起こさないように、私はそっと家を出ました。


 今日も晴れです。

 太陽がさんさんと輝いています。


 だからなのか、村の状況がよくわかりました。

 朽ちた廃屋が並び、田畑は枯れて、なにもかもが壊れていて……

 本当、ひどい有様です。


 なんとなくわかりました。

 お父さんとお母さんは、たぶん、私が諦めることを期待していたのでしょう。

 こんなところの開拓なんてできないと泣きついて……

 開拓をやめてもいいけれど、その代わりに錬金術もやめるように、という算段だったのでしょう。


 でも、残念でした。

 私はお父さんとお母さんの思い通りにはなりませんからね。


 ここを開拓しろというのなら、やってみせましょう!

 今はこんな有様ですが……

 見違えるような綺麗な村にしてみせましょう!


「よしっ、がんばりますよー!!!」


 大きな声を出して気合を入れて……

 その後、目が覚めたアンジェラさんに怒られてしまうのでした。

「おもしろい」「続きが気になる」等、思っていただけたら、

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とても喜びます。

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