16話 今日も明日も開拓です
「はい、完成しましたよ」
「おー」
なんと、そこには立派な木の家が!
ミリアちゃんが家なら建てられるということなのでお願いしてみたんですけど……
まさか、ここまで立派な家を建ててくれるなんて。
おしゃれなログハウスという感じで、とても綺麗です。
レオンとハルの手伝いがあったとはいえ、これをミリアちゃんが一人で……しかも一晩で建てたなんて信じられないですね。
「私たちエルフは森に住む種族なので、木を使って家を作るなんて当たり前のことなんですよ。家がないと大変ですからね。建築技術にも長けていて、数日で作ることができます。今回は、れ、レオンさんとハルさんの助けもあったので、半日で終わりました」
ちょっとビクビクとしながら、ミリアちゃんがレオンとハルを見ました。
怖がる必要なんてないんですけどね。
レオンもハルも魔物ですが、どちらもかわいいです。
ふさふさでもふもふですし。
というわけで、引っ越しです。
ボロボロの家から、ミリアちゃんが建てた立派な木の家へ。
とはいえ、大して荷物なんてありません。
錬金術の道具。
あと服と保存食くらいでしょうか?
アンジェラさんとシンシアちゃんに至っては、なにもないという始末。
引っ越しは10分で終わりました。
その日は開拓はなしで……
新居完成&ミリアちゃんの歓迎会ということで、ちょっとしたパーティーが開かれました。
パーティーといっても、パンと肉のいつものごはんに、錬金術で作ったお酒を混ぜただけなんですけどね。
「ねえ、ナイン」
ほどよくお酒を飲んで、ほんのりと頬を染めたアンジェラさんがこちらを見ます。
「ありがとうね」
「え? どうしたんですか、急に」
私、なにもしていませんよ?
「ううん、たくさんのことをしてくれたわ。私とシンシアの病気を治してくれたし、服を作ってくれたし、食べ物も作ってくれた。ナインがいなかったら、あたしたち、とっくに死んでいたと思う」
「あー……それは」
否定できないことなので、ついつい言葉を濁してしまいます。
そんな私を見て、アンジェラさんはくすりと笑います。
「とにかく……あらためてありがとう、って言いたかったの」
「ナインお姉ちゃん、ありがとう!」
姉妹揃ってお礼を言われてしまいます。
えっと……これは……
突然言われると、照れますね。
落ち着かない気分になります。
「わ、私はこの村の責任者ですからね。きちんとお二人の世話をしないといけませんから……えっと、だから……気にしないでくださいね?」
「ふふっ、ナインは照れ屋なのね」
「あーもうっ、そういうことを言うのは禁止です!」
「……」
見ると、ミリアちゃんがぽかんとしていました。
「どうしたんですか?」
「いえ……あれだけの力を持つすさまじい錬金術師なのに、ひどく人間くさい人だなあ、と思いまして」
褒められているのかどうか微妙なところですね。
「でも……ナインさんと一緒にいると、退屈はしなさそうですね」
それもまた、褒められているのかどうかわからない感じです。
その日は、夜遅くまでパーティーが開かれて……
レオンもハルも一緒に、みんなで仲良くくっついて寝ました。
そして、翌日……
昼過ぎに起きました。
たっぷりと寝たせいか、ちょっと頭が重いです。
あまり寝すぎると体によくないんですよね。
でも、たまにはそういう贅沢な時間の使い方をしてもいいと思います。
「うーん……ちょっとずつ形になってきたでしょうか?」
村を見て回りました。
村の中央に大木。
そして、レオンとハルの家。
そこから少し離れたところに、新しくできた私たちの家。
もうちょっと離れたところにトイレ。
「……やっぱり、まだまだ全然ですね」
少しずつ廃村からは脱却できていますが、それでも、まだまだ色々なものが足りません。
もっとたくさんの家が欲しいですし、畑も欲しいです。
畑があれば野菜や果物が採れますからね。
あと、生活必需品というわけではないですが、娯楽が欲しいですね。
生きていく上で、適度な娯楽は必要です。
心にゆとりを持たないといけません。
あとは……うん。
考えるのが大変なくらい、色々なものがありますね。
辺境開拓、大変です。
でも、諦めるなんて選択肢はありません。
父さんと母さんの思い通りになるのがイヤという理由もありますが……
アンジェラさんとシンシアちゃんのために。
それと、レオンとハル、ミリアちゃんのために。
この村を都会よりも住みやすいところに変えてみせますよ!
「さあ、今日もがんばりますよーっ!」
私は錬金釜を手に、気合を入れるのでした。
今日も明日も……
笑顔でがんばっていきましょう!
えいえい、おーっ!!!