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14話 目撃者

 こんにちは。

 エルフのミリアです。


 エルフというのは、人間よりも長命で、森と共に生きる種族のことです。

 耳が尖っていて、女性の方が多いことが特徴でしょうか?


 森の中で自給自足をしているので、サバイバル技術に優れています。

 食べられるもの、食べられないものを見分けることができます。


 あと、得意の弓で獲物を狩ったり……

 魔法を使い、天敵を追い払ったり……


 それと建築も得意です。

 森の中に家を作るわけなので……

 自然とそういう技術が発達して、代々、子に受け継がれてきました。

 私も両親から技術を教わりました。


 エルフ、意外となんでもできるんですよ?

 万能種族ですね。


 そんな私ですが……

 死の森という物騒なところを根城にしていました。


 エルフは100歳……つまり、大人になると独り立ちをしなければいけないという掟があります。

 新しい場所を開拓して……

 そこを新しい根城にして、新しい領土を切り開く。

 そのようにして、エルフは世界各地で繁栄してきました。


 最初は手頃な近くの森にしようと思っていたのですが……

 そこは他のエルフにとられてしまいました。


 一度決められた縄張りは覆すことはできません。

 横取りなんてできませんし、殺して奪うなんてもっての他。

 そんなことをしたら一族から追放されるだけではなくて、命を狙われてしまいます。


 なので、他の場所を探す必要がありました。

 しかし、めぼしいところは全て他のエルフが占拠していて……


 仕方なく死の森を根城にすることにしました。

 魔物たくさん。

 自然にできた死のトラップがたくさん。

 死亡率90%と言われている魔境です。


 こんなところを根城にするエルフは、さすがに他にはいないらしく、私は無事に根城を得ることができました。

 しかし、安全を確保したかと言われると、それはそれで悩ましいところです。


 なにせ、毎日、生と死の間をさまよっていますからね。


 自分よりもはるかにレベルが上の魔物に、一晩中追いかけ回されたり。

 巨大食虫植物に捕まり、消化されそうになったり。

 底なし沼に飲み込まれそうになったり。


 毎日がそんな感じなので、安らぐことができません……


 失敗したかもしれません。

 もっと遠くに移動してでも、安全な場所を選ぶべきでした。


 そんな私ですが……


 つい先日、とんでもない光景を目撃しました。

 人間の年齢で、15歳くらいの女の子でした。


 鼻歌を歌いながら森を散歩していました。

 武器を持っていません。

 自殺願望者なのでしょうか?

 この森を素手で歩くなんて、それ以外に考えられません。


 案の定、女の子は魔物と遭遇しました。

 ここまでですね。

 ご愁傷様です。


 かわいそうですが、女の子を助ける義理も義務もありません。

 私は女の子が魔物に食べられるのを黙って見て……


 いえ。


 女の子は食べられませんでした。

 それどころか、よくわかない、爆発する道具を使い、魔物を一撃で粉砕していました。


 唖然としました。


 この死の森に住まう魔物は、どの個体も非常に強力な存在です。

 一体を倒すのに、私たちエルフが10人がかりで立ち向かわないといけません。

 人間で換算したら30人ほどでしょうか?


 そんな魔物を……女の子はあっさりと蹴散らしていました。

 それが奇跡や偶然でないことを示すように、何度も何度も……


 何者なのでしょうか……?


 その日から、私は女の子を密かに観察していました。

 そして……何度、卒倒しそうになったことか。


 女の子はトルネードウルフを手懐けて……

 さらに、よくわからない方法で森を切り開き、一瞬で水路を作り上げました。


 その時の爆発はすさまじいもので……

 遠くに潜んでいた私も、衝撃波で吹き飛ばされてしまいそうになりました。


 恐ろしい子。


 あれは、きっと人間ではありません。

 人間以外のナニカです。

 悪魔とか言われたら、素直に信じてしまいそうです。


 女の子は一人ではなくて、どうやら二人の人間と暮らしているみたいでした。

 そちらは普通の人間でした。

 見ているだけで身体が震えてしまうような、そんな危機感は感じませんでした。


 日々、観察を続けて……

 ある日、聞こえてくる会話の断片から、私は女の子の目的を知りました。


 一口サイズにカット……

 真っ二つ……

 おいしくいただく……


 もしかして……女の子は私のことに気がついている!?

 そして、私のことを料理して食べようとしている!?


 考えてみれば、あれほどの力を持つ女の子が、私ごときの監視に気がついていないはずはなくて……

 私は泳がされていたのでしょう。

 いつでもお前なんて殺せる、というメッセージだったのかもしれません。


 しかし、私はそれに気づきませんでした。

 変わらず、ずっと女の子の監視を続けました。


 そのことが癇に障ったのかもしれません。

 ついに、我慢の限界に達したのでしょう。

 相手が蚊だとしても、ずっとまとわりつかれるとうっとうしいですよね?

 それと同じです。


 女の子は私を殺す気になったのでしょう。

 そして、おいしくいただいてしまうつもりなのでしょう。


 お、恐ろしい……!


 ですが、タダでやられるつもりはありません!

 これでも、誇り高きエルフ族の一員……一矢報いてやります!」


「ミリア……いきますっ!」

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