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13話 水路を作りました

 辺境開拓を始めてしばらく経ちました。


 今のところ、開拓は順調です。

 衣食住はそこそこのレベルで確保。

 粘着シートのおかげで、狩りも順調。

 シンシアちゃんのサバイバル技術のおかげで、野草の採取にも成功。


 それなりに順調に進んでいたのですが……

 ここにきて大きな問題が発生しました。


「……に、においます……」


 自分の腕をそっと鼻にあてて……すんすん。


「おうふっ」


 なんていうか……すっぱい匂いがしました。

 すっぱい匂いがする女の子……いかがなものかと思います。


 思えば、この村に来てから一度もお風呂に入っていません。

 ピンチです。

 年頃の乙女として大ピンチです。


 お風呂はさすがに無理なので……

 せめて水浴びをしたいです!

 しかし、川まで歩いて数キロ……帰り道を歩く途中で汗をかいてしまい、意味がなくなってしまいます。


「というわけで……水路を作ることにしました」

「どういうわけ?」

「おーっ!」


 アンジェラさんは小首を傾げて、シンシアちゃんはにこにこです。

 とりあえず同意しておこう、という感じなのでしょうか。


「水浴びをしたいと思いませんか?」

「それは……ええ、そうね。したいわ。でも、川は遠いから、なかなか……」

「そこで……森の中にある湖から水を引いてくる水路を作ろうと思います! そうすれば、いつでもどこでも水浴びし放題です!」

「そんなことができるの?」

「ええ、もちろんですっ。錬金術に不可能はありませんからね」


 さっそく小型錬金釜を用意して、賢者の石をセット。


 ぐーるぐーる。


 ぼんっ!


「完成ですっ! 二種類の爆弾です!」

「爆弾を使って穴を掘って、それで水路を作るっていうのはなんとなくわかるんだけど……二種類っていうのは?」

「あれこれと口で説明するよりも、実際に見てもらった方が早いですね。ついてきてください」


 アンジェラさんを伴い、村の端へ。

 歩いて三分。

 ほどよい広場にたどり着きました。


「ここならよさそうですね」

「どうするのかしら?」

「こうするんです。ぽいっ、とな」

「えっ!?」


 私は一つ目の爆弾を点火して放り投げました。

 そして、耳を塞いでしゃがみます。


 どかーんっ!!!


 爆発。

 煙が収まると、広場に多く広い穴ができていました。

 深さは1メートルくらい。

 縦横20メートルくらい。

 そんな広く浅い穴です。


「とまあ、今の特製爆弾を使うことで、こうして一瞬で水を貯めておく場所ができるというわけです。今の特製爆弾は破壊力、衝撃の方向性をコントロールしたものです。通常は破壊力や衝撃は四方八方、全方方域に飛び散りますが、この爆弾は水平360度にのみ散るように改良されていて……」

「ナイン……お願いだから、爆弾を点火する前はカウントダウンをしてちょうだい……」


 意気揚々と説明する私ですが、振り返ると、衝撃波で伸びているアンジェラさんの姿が!


「あああああっ!? ご、ごめんなさいっ!!!」




――――――――――




「もう一つの爆弾はどうするの?」

「こちらは、水路を引くための爆弾ですね。威力を縦方向に絞っています」


 村から湖に続く道を歩いて……

 途中、爆弾を並べていきます。

 100メートルごとに一つ。

 計50個の爆弾を設置しました。


 こちらは遠隔起爆型です。


「まずは一つ……どかーんといきます」


 スイッチオン。

 ゴォンッ! と爆弾が炸裂しました。

 その衝撃波縦方向にのみ働きました。

 巨人が剣を振り下ろしたように、まっすぐに伸びた亀裂が地面に刻み込まれます。


「念のために一つだけを起動しましたが……うん、成功ですね。あとは、連続で爆破して……っと」


 残り全ての爆弾を炸裂させました。

 今度は事前に合図を送っていたので、アンジェラさんが衝撃波で倒れるというようなことはありませんでした。


 計49の爆弾が炸裂して……

 それらの爆破跡が一つに繋がり、道となります。


 高低差を考えて爆破したので、湖の水が爆弾でできた水路に流れ込み……

 そのまま村の貯水池までたどりつきました。


「よし、完成です!」

「……」

「これでお手軽に水浴びができますね……って、アンジェラさん? どうしたんですか?」

「いえ……普通、水路を作ろうと思ったら、何十人もの人を集めて何ヶ月も工事をしないといけないのに……それなのに、たったの半日で済ませてしまうなんて……ナインはでたらめね」

「私がすごいわけじゃありませんよ? 錬金術がすごいんです」

「ナインと一緒にいると、あたしの常識が崩壊しそう」

「もっと心に余裕を持たないといけませんよ?」


 これくらいで驚いていたら、たぶん、この先大変なことになりますからね。

 私、これからもこの調子で開拓をするつもりですから。


「さあ、水浴びですよ、水浴び! 私、先にいきますねっ


 私はその場で服を脱いで、笑顔で貯水池に飛び込みました。

 冷たくてとても気持ちいいです。

 水浴び、最高!


 ……ただ、着替えを用意するのを忘れてしまい、後々で苦労することになるのでした。

 もっとよく考えて行動しなさいと、アンジェラさんに呆れられてしまうのでした。

 まる。

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